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対人戦の覚悟

カノンは盗賊に向けて走り出すのと同時に竜装を発動させた。


そして火傷のせいで上手く動けない盗賊相手に戦っているドムたちの横をすり抜け、そのまま一番被害の小さかった盗賊に向かっていく。


「な!このガキ…がっ!?」


カノンの接近に気が付いた盗賊がカノンに向かって剣を振り下ろすが、カノンはそれを走りながら避けるとその勢いのまま剣を横なぎに振った。


そして盗賊の胸辺りを切り裂いた。


「……っ!」


その時、カノンの体に一瞬だけ力が入ったのを感じた。


初めて人を切ったのだから無理もないか……。


いくら覚悟を決めていたとしても、実際にやるのとは違うだろう。


「な!ガキが!」


横にいた盗賊が慌ててカノンに向けて剣を振る。


普通なら避けられるだろうが、今の一瞬の硬直があるので避けられるか微妙だ。


……まぁ、そのフォローが俺の役目でもあるだろう。


ガキン!


盗賊の剣がカノンに当たる瞬間、カノンの体から剣が出てそれを受け止めた。



「!?ハク……」


『お前が危ない時は俺がフォローする。安心しろ!』


そう言って剣をスライムの触手に変えて、そのまま盗賊に向かって伸ばす。


そして触手の先に麻痺針を作って突き刺した。


「ぐぅ……」


麻痺針を突き刺された盗賊はその場に崩れ落ちた。


「ありがと」


『おう、でも無理はするなよ?』


俺がそういうと、カノンはわずかに頷いて近くにいた盗賊に向かっていく。


さっきの盗賊もまだ死んではいない。


やはり殺すのは抵抗があるらしい。


しかし斬ること自体には何とか耐えられるようになったようで、そのまま近くにいる盗賊を手あたり次第斬っていく。


「……すげぇな」


「……あぁ」


少し離れた所にいるガイルとギルがカノンを見て思わず呟く。


その驚きは何に対しての物だろうか?


カノンの戦い方か……その強さか……。


「お前ら何ボーっとしてる!嬢ちゃんにだけやらせるな!」


そんな二人にドムの叱咤が飛んだ。


それを聞いた二人ははっとすると、目の前にいる盗賊に向かう。


現在盗賊30人のうち約10人はさっきの魔法で地面を転げまわっているか、カノンたちに倒されて昏倒中。


残りの20人も、武器を構えてはいるが火傷を負っていたりして調子がいいとは言いにくい状態だ。


その20人のうち6人はカノン達と戦闘中。


ドムとガイルが2人ずつ相手をしていて、ギルとカノンが1人ずつ相手をしている。


ギルが1人なのはたった今一人倒したから。


カノンが1人なのは子供だからなめられているのか?


さっきの一撃を見ていれば普通の子供ではないと思うはずだが……。


いや、もしかすると普通に見えないから警戒されているのかもしれない。


もしくは魔法を警戒して距離を取りたいだけか……。


因みに戦っていない14人のうち7人が地面を転げまわっており、残りの7人は距離を取って警戒している。


……しかしほんと何で向かって来ないんだ?


向かって来ないにしてもカノン達を迂回してそのまま馬車を狙うことも出来るだろうに……。


何か目的でもあるのだろうか?


いやしかし盗賊だし、ただ単に連携が下手なだけとも考えられる。


一応他の奴にも聞いてみるか……。


とは言ってもカノンは戦闘中だから……ソルか……。


『こいつらの動きどう思う?』


ソルに念話を飛ばして聞いてみることにした。


『そうですね……。確かに戦っていない7人は不気味です。もし作戦だとすれば時間稼ぎの可能性もありますね』


少し間を開けてソルが答えてくれた。


しかし時間稼ぎか……。


『何かを待ってるのか?』


盗賊がこれで全員なら時間稼ぎをする意味はない。


全滅するまでの時間を稼ぐくらいなら、数人が逃げだせばいいのに誰も逃げてはいかなかった。


『気配察知ではこの近くに盗賊は隠れていませんし、普通ならただ連携が下手なだけの可能性も考えていいでしょう。しかし、ハクさんが先ほど変な気配を感じた以上、何かあると考えてもいいでしょう』


確かにソルの言う通りだ。


それにこのままこいつらの時間稼ぎに乗るのも不愉快だ。


『じゃあ俺も攻撃に参加して片づけるか……』


『いえ、アイリスが行きます。ハクさんはそのままカノンさんのフォローをしてください』


ソルの選択はまさかの最高戦力の出陣だった。


「……ハク、なんて?」


カノンには言ってなかったが、ソルと会話をしていたのは分かったらしい。


『アイリスが様子見してる奴らを片付けてくれるらしい』


「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」


あれ?


カノンにソルとの会話を説明した瞬間に周りにいた盗賊たちが吹き飛ばされた。


「……みたいだね…はぁ!」


「がぁ!!」


それを見て動きが止まったカノンと対峙していた盗賊は、その隙をつかれてカノンに吹き飛ばされた。


残るはドムたちと対峙している5人だけだ。


しかし、こんなあっさりと倒せるのなら最初からアイリス一人が行けばよかったのではないのだろうか?







































その後すぐにドムたちも自分と対峙していた盗賊を倒した。


これで目の前にいた奴らは全滅だ。


因みにカノンが倒した盗賊は重傷を負ってはいるが死んではいない。


やはり無意識で手加減をしていたらしい。


とは言っても手当てしないと間違いなく死んでしまうだろうが……。


しかしそれは逆に言えば、手加減するだけの余裕があるという事でもあるわけだ。


そう考えると、カノンの能力は飛躍的に伸びてるな。


いくら俺の影響で魔力も多いしスキルも強力な物があると言っても、13歳の子供の強さじゃない。


やはり元々才能はあったのだろう。


そこに本人の努力でここまで成長したのだろうな。


とは言っても、まだまだ対人戦には不安が残るが……。


っと、今はそんな事を考えている場合ではないだろうな。


さっきから気配察知を発動しているが、特に変な気配は感じない。


さっきの盗賊の動きは連携が下手なだけだったのだろうか?


『ソル、どう思う?』


『今現在は特に気配は感じませんね。時間稼ぎが失敗して諦めたか、最初から思い過ごしかのどちらかでしょう……』


ソルにしては珍しく歯切れが悪い。


『そうだな……。カノンとアイリスはどうだ?』


「私もとくには感じないけど……」


「そうね、でも油断はできないし、早めに移動した方がいいでしょうね」


確かにアイリスの言う通り、何かあるにしろ思い過ごしにしろ、さっさと移動した方が良いだろう。


移動さえすれば時間稼ぎの意味もなくなる。


『そうだな……』


ドオオオォォォン!!!


意見がまとまりかけていた時、突然地面が揺れた。


「な、なに!?」


カノンが動揺しているのが伝わってくる。


「……これは…」


アイリスに関しては、流石Aランクというべきだろうか、殆ど動揺していない。


もしかすると心当たりがあるのか?


『アイリス、心当たりがあるのか?……ん?』


アイリスに聞こうとしたとき、再び気配を感じた。








今回はさっきより距離が近いおかげか何となくわかった。


そして俺にだけ気配を感じ取れた理由も薄々理解できた。


もしかしてと思いリーゼの方を見てみると、険しい顔をしている。


『リーゼも感じたか?』


「うん、確かに普通の気配察知だけだと見つけるのは難しいかもしれないね」


「え?リーゼさんも?……私は何も感じないのに……」


何故かカノンが落ち込んでいる。


しかし今回ばかりは仕方ないだろう。


『リーゼも同じ意見だな?』


「うん、これは……」

















































「『竜の気配だ』ね」




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