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不可解な行動

アイリスがゴードンたちをたたき起こして、簡潔に状況を説明して相談した結果、とりあえず逃げることになった。


最悪の場合はカノンが空から状況を確認して俺が念話でソルと連絡を取ることも想定している。


そして、もしも逃げ切るのが難しいとなった場合は、出来るだけこちらに有利な場所を選んで迎撃する作戦で行くことになった。


普通、逃げられないとなった場合は降伏するのがベストと言われている。


降伏して積み荷を差し出せば、そのまま見逃してもらえるはずだ。


そうしないと降伏する意味がなくなり、毎回戦闘をしていたのでは盗賊側の被害も大きくなるからだ。


なのでこれは暗黙の了解と言った感じだ。


ただし、今回に限って言えば降伏はあまりいい手段とは言えない。


襲われる側に女性がいた場合、降伏してもほぼ確実に連れ去られてしまうからだ。


今回、女性と言えば、アイリスとリーゼとカノンだが、アイリスはAランク冒険者であり、態々戦って商隊を危険に晒すよりは逃げた方が良いという判断をしているだけで盗賊団ごときに負けるわけはないし、カノンは以前盗賊に襲われたことで盗賊に対して嫌悪感のようなものを持っている。


もし目の前に現れたら間違いなく殲滅に動くだろう。


そもそも俺も、カノンやリーゼを盗賊共に渡すつもりはない。


それならそのまま焼き払った方が楽だ。


そういった理由から、一応は逃げてみて、逃げられそうになかった場合は殲滅するという作戦になった訳だ。


更に、こちらはカノンとアイリスの気配察知で距離があっても向こうの居場所くらいは分かるので、追い付かれそうならこっちが有利な場所に誘導することも考えている。


幸いにもここはレセアールに近いので、アイリスはこの辺りの地形をある程度把握しており、戦いやすそうな場所も何か所か候補を上げてもらっている。


それに万が一不利な状況なら、俺とカノンが上空から火属性を使って火の雨を降らせてもいい。


いくら盗賊団の規模が大きくても、遣り様はいくらでもあるのだ。




















そんなわけで移動を始めたわけなのだが、どうやら盗賊側も俺たちが移動を始めたことに気が付いたようで移動速度が上がった。


『……このペースだと予想よりも早く接触しそうだな……』


「…確かに……ガイルさん!」


カノンは近くにいたガイルに声を掛けた。


因みにカノンは商隊の先頭の馬車の御者台に座っており、その横をガイルが歩いている。


リーゼはアイリスと一緒に最後尾を歩いている。


そしてドムとギルは中ほどの馬車の横を歩いている。


「あ?どうした嬢ちゃん?」


ここ数日でカノンに対する態度も随分柔らかくなった。


元々こっちを気遣ってくれていたわけだが、言葉そのものも変わってきたのだ。


「向こうの移動速度が上がりました。このままだと予定より早く会っちゃいます」


「まじかよ……よし、連絡してくるからそのまま監視してくれ!」


そう言ってガイルは後ろに走っていく。


まぁ、アイリスも同じように気配察知を使っているだろうから、向こうの動きには気が付いているはずだ。


とは言っても、そこからのこちら側の動きを勝手に決めるわけにも行かないので一応連絡役としてガイルに走ってもらったわけだ。


しかし何でこっちの位置を見失わないんだ?


こっちは気配察知を使って一方的に探せるが、それは相手の人数が多いからだ。


距離が縮まって人数も何となく分かるようになってきたが、向こうの人数は約30人ほどだ。


こちらの三倍近い人数いるので気配察知で有効範囲も伸びているわけであり、向こうからはこちらの気配がつかめるような距離ではないはずだ。


『なんか違和感があるな……』


「違和感?」


俺の言葉にカノンが首を傾げる。


『あぁ、向こうの動きがこっちの位置を完全に把握してるような感じだ。どうやってこっちの動きを探ってるのか分からない』


「ん~、気配察知のレベル?」


『いや、アイリスの気配察知でも範囲外だ。その可能性は低い』


「じゃあ他のスキル?」


『そうだとは思うんだけどな……』


いかんせん、スキルの種類は多い。


その中には似た効果を持っていて、相互互換のようなスキルもある。


そして、こういった場合に役に立つ探知系のスキルも種類は多そうだし、その中のどれかを使っているのはは推測できても、どれを使っているかまでは分からない。


スキルさえ分かれば対処法も考えることが出来るんだが……。


『このままだと戦闘は避けられないか……』


「ゴードンさん、多分戦闘になると思います」


俺の言葉を聞いたカノンが隣にいるゴードンに言う。


「……やはりそうですか。では手筈通りに行きましょう」


そういったゴードンの目には不安の色が浮かぶ。


商人にとって、盗賊は脅威でしかないだろう。


例え恨みがあったとしても自分たちではどうすることもできないのだから。


そんな事を考えていると、後ろからガイルが戻ってきた。


何故かリーゼと一緒だ。


「あれ?リーゼさん?」


カノンもリーゼがこちらに来たのは予想外だったらしく首を傾げる。


「カノンさん、この先に少し壁を背にできる場所があるからそこで迎え撃つって!」


アイリスからの伝言を伝えに来てくれたらしい。


しかしその場合はガイルに伝言してもらえばいいのでは?


「それとカノンさんはアイリスさんの所に行って!こっちは私がいるから!」


なるほど、アイリスがカノンを呼んでいるから人数調整でこちらに来たわけか。


「分かりました」


カノンは返事をすると御者台から飛び降りて、後ろに向かって走っていった。






















商隊の最後尾の馬車の荷台にアイリスは座っていた。


馬車の荷台の後ろ側を開けて、そこに後ろを向いて腰を下ろしている。


「アイリスさーん!」


「あ、来たわね」


カノンがアイリスの近くまで来ると、アイリスは荷台から降りてきた。


「カノンちゃんも気が付いてると思うんだけど、何でか盗賊の動きがよくなったのよ」


『あぁ、それは気が付いていたが……』


『そのせいで、このままでは予想よりも早く接触してしまいます。なので、この先の岩場を背にできる場所で迎え撃つことにします』


ソルが補足してくれた。


この話はさっきリーゼに聞いた通りだな。


「で、悪いんだけど、少し空飛んで様子を見てきてくれない?」


アイリスが申し訳なさそうに言う。


あぁ、アイリスでも気配遮断を使えば偵察は出来るだろうが、こちら側の最高戦力でもあるわけだから、おいそれとこの場を離れるわけにも行かないか。


それに、空からの偵察の方が全体図の把握がしやすいし、危険も少ない。


「はい、分かりました」


カノンは軽く返事をすると馬車から離れた所で立ち止まった。


「じゃあハク、行くよ!」


『おう!』


カノンは羽織っているマントを収納に仕舞い、竜装を発動する。


そしてそのまま上空に飛び上がった。

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