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盗賊団の気配

その後一時間ほど進んだところで、休憩することになった。


街道にはたまに道の脇に休憩できるスペースが設けられており、そこに馬車を止めて休憩するらしい。


そこには焚火をするスペースもあるので、カノンたちはここで昼食を作って食べていた。


「しかしなんだよあのオークの死体は……」


オークの肉にかじりつきながらガイルが呟く。


それにギルも頷いた。


「お前たち、肉を分けてもらって言う事か!」


そんな二人をドムが窘めるが、それを見ていたカノンは苦笑いしている。


「あはは……、近づいて斬っただけですよ…」


誤魔化す様にそういうカノンだが、普通は出来ることではないと思うんだが……。


「カノンさん?普通のDランク冒険者はオークの群を一瞬で倒したりできませんからね?」


そんなカノンに呆れたようにくぎを刺すリーゼ。


「まぁカノンちゃんだしね~」


アイリスが呟くが、カノンだからで完結させていいのか?


「しかし、封印者(シーラー)ってのはみんな強いのか?」


アイリスに向かって聞いたのはガイルだ。


「え?ん~、どうだろ~、私以外の封印者(シーラー)って殆どあったことないし……」


聞かれたアイリスは考え込むが、確かに封印者(シーラー)は数が少ないから平均値なんて分かるはずもないか……。


「しかしその歳でオークの群を軽く殲滅し、なおかつ収納スキルまで使える。将来が楽しみですね」


そう言って笑うのはゴードンだ。


「カノンさん、もしよければうちで働きませんか?報酬は奮発しますよ?」


いきなり勧誘が始まったぞ!?


「え?え~と…ごめんなさい……」


いきなり勧誘されたカノンは、即答していた。


しかし、よく考えてみたら収納スキルなんて商人にとっては喉から手が出るくらい欲しいスキルではあるよな。


時間経過は外と変わらないとはいえ、人ひとりを運ぶ労力でコンテナ馬車一杯分の荷物を運べる。


しかも割れ物なども気にしなくていい。


さらに言えば、馬車を使って運ぶより早く運べる。


いいこと尽くしだ。


さらに言えば、カノンのように実力も兼ねそろえていれば、護衛の必要もない。


欠点として、一人の能力に依存しているので万が一の時に代行手段を用意するのは難しい。


これが馬車なら代わりは比較的簡単に用意できる。


まぁ、それらの欠点を補って余りある利点があるのも事実だが……。


「そうですか、それは残念」


意外にもあっさり引き下がったゴードン。


どうやら半分は冗談だったみたいだ。


冗談の口調には聞こえなかった気がするのは置いておく。











































その後移動を再開してからというもの、不気味なほど魔物とは出会わなかった。


道中で何人かとすれ違ったが、盗賊の目撃情報なども出てこなかった。


そして、なぜか魔物自体の数も減っているらしいとのことだった。


そんなこんなでレセアールまで二日ほどの距離まで来た日の早朝の事だ。


カノンは最近日課になっているアイリスとの訓練を終え、朝食の準備をしていた。


その最中に、俺の気配察知に反応があった。


『……ん?』


「?どうしたの?」


俺が思わず漏らした声にカノンが首を傾げる。


『あぁ、遠くの方に人の気配がしてな……』


「人?旅人じゃないの?」


まぁ普通はそう考えるんだが……。


『反応がある場所が少しな……』


反応があるのはここから少し離れた山の中だ。


そしてそこは普通なら気配察知の範囲外のはずだ。


気配察知の範囲外でも気配が分かる場合はいくつかある。


例えば、相手の数が多い時だ。


群などの気配は個体よりも大きくなる。


なので相対的に遠くからでも察知できてしまう。


もう一つは純粋な強者の気配だ。


この場合は個体としての存在感の大きさによるものが大きいが、それでも普通よりも遠くから気配を感じ取れる。


ただし、強者の場合は気配遮断などの隠密系スキルを持っていることが多いので、結局普通の人とは大差がなくなる。


気配遮断は発動型スキルではあるが、習得しているだけで多少の影響は出るらしい。


因みにこれはここ数日でアイリスから教えてもらったことだ。


行きと違って時間はたっぷりとあるので色々と教えてもらっていたのだ。


『ハクさんの言う通り、少しおかしな気配ですね。街道でない場所でこれだけの数というのは……』


「確かにね、あんな場所に大勢で居るなんて……まるで盗賊みたいね」


ソルとアイリスも話に乗ってきた。


「……確かに少し変ですけど…冒険者とかではないんですか?」


カノンも気配察知を使ったようで、気配の場所には気が付いたようだ。


確かにカノンの疑問も当然だ。


山の中に大勢でいるだけで盗賊扱いはできないし、冒険者も山にはある程度の人数で入るだろう。


「でも今回は盗賊で間違いないと思うわよ?」


カノンの言葉を否定したのはアイリスだ。


『この気配のする場所には廃坑があったはずです。以前は鉄が採掘されていたそうですが、地盤が弱くて崩落するので立ち入り禁止になっているはずです』


ソルが補足してくれた。


「で、あそこの調査は最低でも10日前には通達されるし、そのころまだレセアールにいたけどそんな話は聞かなかったしね」


あぁ、Aランク冒険者ならそういった情報も入ってくるだろうからな。


『つまり立ち入れないはずの場所に大勢で居る…誰かに見つかるとまずい連中の住処って訳か』


「そういう事ね。まぁ、あれだけの人数がいるのならその内見つかってたでしょうけど……」


アイリスが少し呆れたように言う。


まぁ、気配を隠しているとはいいがたいしな……。


この距離で探知されている時点で色々と残念な連中だ……。


しかし問題もある。


『そいつら……こっちに向かってきてないか?』


気配察知が反応したのは少し前だ。


俺たちはその場から移動したわけでもないし、いきなり気配察知のレベルが上がった訳でもない。


つまり、向こうがこっちの気配察知が届く範囲に入ってきたということだ。


「そうなのよね~、人数も多そうだし、報告はしておいた方がよさそうね……。カノンちゃん、悪いけど、少し警戒しててくれる?」


「え?あ、はい」


カノンの返事を聞くと、アイリスは馬車の方に歩いて行った。


恐らく見張りをしているリーゼに伝えるためだろう。


ついでに他の連中もたたき起こされそうな気はするが……。


「ハク、どう?」


『やっぱりゆっくりと近づいてきてるな……。というか、あんな場所だしこっちは見つかってるんじゃないか?』


向こうは山の中腹から道を見渡せる上、標的の荷馬車を探すのは街道を見張っていればいい。


そして多少距離があろうと、目視さえできれば商隊の馬車が居ることは簡単に分かるだろう。


そう考えると、すでにこっちの存在はばれていると考えるのが自然だ。


ただし、こっちの規模まではばれていないだろう。


流石に気配察知を使って相手の人数を探るには距離がありすぎるし、そもそもこっちの人数は10人ちょい。


この程度の人数なら俺が感知したみたいな集団の気配もあまり気にしなくてもいいレベルのはずだ。


そして、こっちの規模がばれていないのならいくらでもやり様はある。


さて、流石に単独先行はしないが、作戦くらいはいくつか用意しておくか……。






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