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初めての護衛依頼

護衛依頼の出発当日。


カノンたちは早朝から町の門に来ていた。


ここで商隊の馬車と合流して、簡単な護衛の打ち合わせをしてから出発するらしい。


護衛依頼について、簡単なことはアイリスが教えてくれたのだが、こういった依頼はある程度人数を集める必要があるので、複数のパーティが依頼を受けることが多いらしい。


カノンたちの場合も、カノンたちが依頼を受ける前か後で他の冒険者が依頼を受けている可能性もあるそうだ。


そういった場合、自分の得意な戦法や武器を簡単に説明して、簡単な陣形の確認などをするのが一般的らしい。


そして、その時にギルドカードに記されているクラスの情報が役に立つわけなのだが、カノン達三人に関しては全員が特殊クラスのためまったくあてにならない。


なので自分のクラスを説明してから、得意な戦闘スタイルを説明すればいいらしいのだが……。


「ハク、得意な戦闘スタイルって何だと思う?」


カノンにそう聞かれて少し考えた俺が出した結論は……。


『広域殲滅?』


「それ味方も巻き込んじゃう奴だよね!?」


そう言われても、一番得意なのは魔法の同時発動による範囲系の攻撃だ。


「カノンちゃんの場合は魔装や竜装を使った接近戦でいいと思うわよ?」


それを聞いていたアイリスが呆れたように言う。


「そうですね、それなら多分得意ですし…」


因みにリーゼの場合は刀を使った接近戦一択らしい。


魔法も使えないことはないが、刀を使う方が得意と言っていた。


そんな感じで雑談をしていると、三人の男たちが歩いてきた。


冒険者風の格好をした二十代くらいに見える若者だ。


「お?今回の護衛は女ばっかかよ」


カノンたちを見てそう呟く男たち。


前を歩いてくるリーダーと思わしき男は顔を引き締めているが、後ろにいる二人はリーゼとアイリスを見ている。


何かよからぬ事を企んでいるのではなかろうな?


「こら!やめろ!……アイリスさん、申し訳ありません!」


一番前を歩いていた男が二人をたしなめ、そのままアイリスに向かって頭を下げる。


そしてアイリスと言う名前を聞いた二人の顔が青ざめる。


「いいわよ別に、いつもの事だし」


びくびくとしている男に対して全く気にした様子のないアイリス。


そしてリーゼもあまり気にした様子はない。


そしてカノンはと言えば……。


「…………」


少しだけ不機嫌そうだった。


まあ爆発したりするほどではないので大丈夫だろうが……。


「アイリスさんも護衛依頼を?」


「えぇ、この子たちの教育がてらね」


そう言ってカノンたちを指さすアイリス。


「なるほど、そうでしたか…あ、失礼、俺はドムと言います、クラスは双剣士です。パーティ・魔狼の爪のリーダーをしています。この二人はメンバーのガイルとギルです」


そう言って二人を紹介する男改めドム。


「ガイルだ。魔剣士をしている…」


「ギルです。槍士です」


「ガイル!敬語を使え!相手はAランクだぞ!」


「いいわよそれくらい。その方がこっちもやりやすいし」


ガイルを怒鳴るドムをアイリスが制す。


「よろしくね。私はアイリス。知ってるかもしれないけど封印者(シーラー)。接近戦は任せてね。で、こっちの二人が…」


「リーゼです。クラスは巫女で刀を使います」


「えっと、カノンと言います。封印者(シーラー)で……接近戦が得意?です?」


何故に疑問形?


カノンたちが自己紹介をすると三人の顔が驚いたものに変わった。


「……アイリスさんが教育をされているので普通ではないとは思いましたが…二人とも特殊クラスですか…」


そう言ってカノンとリーゼを見るドム。


「だがよ、ドム、どうすんだ?前衛ばっかじゃねぇか!」


そういったガイルと、頷くギル。


いや、俺も同じことを思ったが……。



さっきの紹介を聞いただけなら、ここに居る全員が接近戦を得意とする冒険者になってしまう。


「大丈夫よ。私は魔法も使えるし、こっちのカノンちゃんも魔法は得意だから前衛後衛どっちでも出来るわ」


そう言ってカノンの背中を押すアイリス。


「そういやそっちのちっこい嬢ちゃんも封印者だって言ってたが…まだガキだろ?戦えるのか?」


そういったガイルに、カノンが不機嫌そうになる。


「冒険者ランクはDランクだけど、この町に来るまでにBランクの魔物を倒ししてたから強いわよ?」


Bランク?……あぁ、マンイーターか。


そういえば倒したな……。


アイリスのおこぼれみたいな感じだったとはいえ……。


「アイリスさんが言うのですから本当なのでしょうが…にわかには信じられませんね」


ドムがそう言ってカノンをまじまじと観察する様に見る。


まあ気持ちはわかるが……。


この世界では15歳で成人なのでリーゼはもう成人して一人前と扱われている。


しかしカノンはどう見てもまだ子供なので仕方ないのだろう。


「ならちっこい嬢ちゃんは後ろでのんびり待ってな。魔物が出ても俺たちで片づけっからよ」


そういうガイルと頷くギル。


もしかしてこいつら言葉は悪いが面倒見はいいのか?


しかしギルは最初の挨拶以外まったく喋らないな……。


セレンを超えた無口を見た気がするぞ……。




















その後魔物と出会った場合の動きや陣形の確認を行った。


結局アイリスとカノンが後衛で魔法による援護と、万が一前衛を抜かれた場合の迎撃役となった。


そして細かいことを打ち合わせていると、数台の馬車がカノンたちの目の前に停車した。


そして馬車から一人の男がおりてきた。


「皆さん、本日はよろしくお願いします。私は今回の商隊のリーダーのゴードンと申します」


降りてきてそのまま一礼した男、ゴードンはどうやら今回の商隊のリーダーらしい。


そしてゴードン以外に乗っているのは馬車の御者だけだ。


馬車は全部で5台。


御者は4人で先頭の馬車はゴードンが御者を務めているようだ。


ゴードンの挨拶に習って、カノン達も順番に挨拶をする。


そして最後にカノンが挨拶をし終えた所で、ゴードンは今回のルートを説明してくれた。


それによると、カノンとアイリスが抜けてきた森を迂回する様に進むルートを進むようで、所要日数は約10日ほど。


戦闘時の判断はそれぞれのパーティリーダーに任せるという事だった。


そんな話が終わり、いよいよカノンの初めての護衛依頼が始まった。








































カノンとリーゼは先頭の馬車の御者台に座っていた。


カノンが護衛依頼を受けるのが初めてと聞いたゴードンの好意によるものだ。


因みにドムたちは真ん中の馬車に乗っていて、常に誰かが外に出ている。


そしてアイリスは商隊の最後尾を歩いていた。


出発前に聞いた話ではドムたちは全員Dランクだそうだ。


ランクだけ見ればカノンと同じだが、能力は一般的なDランク冒険者なので気配察知もカノン達ほどうまくない。


なのでカノンとアイリスが前後を警戒することになったのだ。


カノンとリーゼが一緒なのは、ガイルがそう提案してくれたためだ。


気配察知はアイリスのお墨付きなので戦闘力よりは信用してもらえたらしく、気配察知を任せる代わりに戦闘時は守ってもらえるようにとの配置だ。


それを聞いたカノンは膨れていたが流石に文句は言わなかった。


まあいざとなればリーゼより先に特攻していく気もしなくもないが……。




「どうですか?御者台は?」


さっきから周りの景色を見ながら目を輝かせているカノンにゴードンが聞いてくる。


親戚の姪っ子を見ているおじさんのような、温かい目だ。


「はい!凄いです!」


カノンが興奮したように即答する。


そういえば馬車に乗るのは初めてだな。


村にいた時にはそんな機会もなかっただろうし。


「それはよかったです。所で……」


そこで言いにくそうに口をつぐんだゴードン。


「はい?どうしましたか?」


それを見て不思議そうに首を傾げるカノン。


やがてゴードンは意を決したようにカノンに聞いてきた。


「もしかして、聖女様ですか?」


「…………」


ゴードンの問いに、気まずそうに視線を逸らすカノン。


まさかここまで来てその呼び名を聞くとは思わなかった。


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