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ちょっとした事故 ~これからよろしく~

少女とうまく同化できた俺は、そのまま高速再生を発動した。高速再生は俺自身にしか効果がないが、同化により少女にも影響を及ぼしているのだ。


そして少女の傷口は数分で塞がった。


(とりあえず治療は成功か…、後はうまく分離できれば……ん?)


同化を解除しようとして、俺は違和感に気が付いた。今回俺は体の一部を少女の傷口と同化させるイメージを持ったはずだ。しかし今俺は身動きが取れない状態になっている。


いや、そういうと語弊があるかもしれない。身動きが取れないというより、動かす体がないのかもしれない。


《条件を全て満たしました。ユニークスキル・世界の記憶(アカシックレコード)を習得します。世界の記憶(アカシックレコード)を習得したことにより、スキル・念話が解放されました》


いきなり何かが聞こえてきた。まるでゲームのナビゲーターの様だ。それにしてもとんでもない名前だな。アカシックレコードって言えば、過去から未来までのすべての情報が収められている、まさに世界の記憶そのものだった気がする。


とりあえず鑑定してみよう。


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種族・キメラドラゴン 名称・???

HP・721 MP・1013

状態・封印

スキル

鑑定Lv3・同化Lv3・捕食吸収・触手伸縮Lv6・自己再生Lv10・高速再生Lv1・収納Lv2・粘液Lv5・飛行Lv7・麻痺針Lv8・毒針Lv7・方向感覚Lv5・風属性Lv7・針生成Lv3・気配察知Lv4・毒耐性Lv3・身体強化Lv1・形状変化Lv1・威嚇Lv1・高速思考Lv1・念話・魔装(使用不可)

固有スキル

キメラLv2・スキルテイカー・スキルシェアLv1

ユニークスキル

世界の記憶(アカシックレコード)(詳細不明・ナビゲート機能のみ解放)

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うん。なんかすごいスキルを手に入れたのは分かったんだけど……、なんだこの状態・封印って!


----------

封印・何らかの方法によって、別の生物、もしくは物体に封印されている状態。封印するにはそれを封印するだけの容量のある器が必要。

封印者・カノン・???(被封印者)

封印形式・不明

封印場所・カノン

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なるほど、俺はこの少女の中に封印されたってことか。おそらく何らかの理由で、治療の為に同化した俺が取り込まれてしまったんだろう。


…………どうしよう。


流石にこのまま一生封印生活はなんか嫌だ。しかし、よくよく自分の状況を分析してみると、俺が封印されているのは少女の魔力がある場所なんじゃないか?自分の存在以外に微量の魔力を感じる。そういえばこの子の魔力は初期の俺より少なかったから、この魔力が少女の物とみて間違いはないだろう。


そしてなぜか魔力に対して器が大きすぎたのかもしれない。そこに俺が片足を突っ込んだもんだから、引き込まれたと考えれば納得はいく。


そして他にもなんか増えている。念話は何となく分かるが、固有スキルの方だ。


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スキルシェアLv1・自身のスキルを自身を封印しているものと共有できる。上限数は10。


キメラLv2・キメラの効果に加え、スキル・キメラを持つ者を封印した相手にステータスの譲渡が可能になる。また、封印者は封印された者の能力の一部を行使できるようになる。

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なんか封印されること前提のスキルな気がする。



「……………ぅぅ……」


そんなことをしていると、少女の意識が戻ったのが分かった。


因みに俺の聴覚は少女と共有しており、視覚に関しては少女の頭を起点として全方位を見ることが出来るようだ。しかも少女が眠っていても俺の視覚に影響はない。


『起きたか?』


俺はためしに念話で話しかけてみた。


「…うん…………………………、誰!?」


少女は慌てて起き上がると周りを見渡す。しかし、当然ながら誰もいない。


『あ~、すまん。お前の中だよ』


「私の…中?」


『そうだ。何があったか覚えているか?』


もしこの子が俺の同化まで覚えているなら話は早い。俺はそう思って聞いてみた。


「確か…サーベルボアに襲われて…竜を助けて…その竜が消えちゃって……」


少女が泣きそうになってきた。あれ?もしかして俺死んだことにされてる?


少女は周りを見渡して、俺がいないのを確認したのだろう。その声がさらに泣きそうなものに変わる。


「光になって死んじゃった……」


『いやいや勝手に殺すな!俺は生きてるよ!…多分…』


この状況で生きているとは断言できないかもしれない。途中で気づいた俺は自信がなくなっていった。


「えっ?もしかして…あの時の竜なの?」


少女が驚いたように聞いてきた。


『あぁ』


なので俺は、その時の状況を大まかに説明した。その前提として俺の種族とかも説明することになったし、他の世界の記憶があることもついでに言っておいた。もし後でばれておっさんが自分の中にずっといたと知ってはショックだろうから。


いや、いるだけでショックか…


因みにその後少女の事も少しだけ聞いた。






















「なるほどね~。キメラドラゴンってのは初めて聞いたけど、強そうだね~」


そんなことを言ってくれる少女、いや、カノン。


俺はそれを聞いて少し落ち込んだ。


『いや、キメラドラゴンの異名は【最弱のドラゴン】らしいよ』


「そうなの?さっきの様子からはそんなこと感じなかったけど?」


さっきというのは猪と戦った時の事かな?


『そりゃ……スライムとか倒して能力奪ったからな……でだ…』


「うん?」


いきなり俺の様子が変わっったことを不思議に思うカノン。俺はさすがに今の状況を説明しなければならないと思っていた。


『本当にすまん!』


俺は心の中で土下座した。自分の体が無いというのは何とも歯がゆい。


「ど、どうしたの?」


『さっきは説明しそびれたんだが……どうも俺はお前に封印されたらしい』


俺は勇気を出して言葉を紡いだ。一世一代の告白をした気持ちだ。


いや、前世でも告白なんてしたことないけどさ……。


「どういうこと?」


カノンが不思議そうに聞いてくる。あまり嫌悪感とかはなさそうでよかった。


『さっき…同化してから高速再生を使ったってことは説明しただろ?そのあと同化を解除しようとしたらできなかった。で、自分を鑑定したら封印されてた』


カノンはそれを聞くと少し不思議そうな顔をした。


「ん~、それって…魔力の量とか関係あるのかな?でも私魔力は少ないから余計無理な気がするけど…」


『魔力?いや…さすがにそれは関係ないと思うけど…でも俺が封印されてるのって魔力と同じ領域なんだよな……ん?』


俺はそう思いながら一応カノンを鑑定してみた。そしたらステータスが不思議なことになっていた。


鑑定結果の分からない、というより鑑定を使ったことを知らないカノンが首を傾げる。


この結果は説明しずらい。どうしようか悩んだが、そういえばスキルシェアを手に入れていたのを思い出した。検証がてら試してみるか。


とりあえず、スキルシェアと鑑定をリンクさせるイメージで…。


『今、俺の鑑定をお前も使えるようにしたから、よかったら見てみろ』


「ん?……………ん!?」


文字にすると同じなのに反応は大違いだった。多分前者がスキルを使おうとしたもの、後者が鑑定結果を見ての反応だろう。


因みに今のカノンのステータスはこうだ。


----------

種族・人間 名称・カノン 年齢・13

HP・124 MP・5(1013)

スキル

魔力操作Lv10・剣術Lv1・身体強化Lv1・料理Lv4・鑑定Lv3

固有スキル

???(詳細不明)

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スキルはさっきの鑑定以外変化がない。しかしMPに関しては、カッコ表示で俺の分が丸々反映されていたのだ。


「どういう…こと?」


『多分お前の魔力の容量自体は大きかったんだと思う。で、そこに俺が同化したからそのまま魔力として組み込まれて封印されたんじゃないかと…』


俺がそういうと、カノンは晴れ晴れした顔をしていた。


「そっか!私もこれで魔弱脱出だね!」


『その…いいのか?自分の中に得体のしれないものがいるのに?』


「全然気にしない。でももし貴方が嫌なら出て行ってもいいよ?」


カノンはそう言うが、最後は少しおびえていたように見えた。


『出て行きたくても無理だからな?それに…お前は俺の命の恩人だ。お前が望むならこのままでもいいし、俺の魔力を使ってくれても構わない』


これは俺の本心だ。カノンが命を懸けて助けてくれたからこそ、俺はいま生きている。


「ん~、それ言われると私も助けられたからな~。そうそう。あの時はありがとね!」


『それこそお互いさまになるだろうな』


「確かにね」


そう言って俺たちはお互いにお礼を言いあい、笑った。なんだか無性に可笑しくなってきた。


「じゃあこれからもよろしくね。私はカノン。あなたは?」


『よろしくな。……名前は…無いな』


なぜか前世での名前さえも思い出せない。たった二日で忘れるなどありえないはずなのだが……


「なら私がつけていい?」


『別にいいけど…』


俺がそう答えると、カノンは腕を組んで考え始めた。


「じゃあ…ハクは?真っ白な白竜だったから!」


『ハクか…』


確かに白いしそれでもいいかもしれない。どうせ元の名前を憶えていてもこの世界では違和感ばりばりな気がするし。


俺の沈黙を拒絶と解釈したのか、カノンが慌てだしたのが分かった。カノンの中にいるだけあって、感情の変化がある程度わかるらしい。


「…嫌だった?」


カノンが恐る恐る聞いてきた。


『いい名前だと思うよ。よし、これから俺の事はハクと呼んでくれ』


俺がそう答えると、カノンが喜んでいるのが伝わってきた。


「これからよろしくね!ハク!」


『こっちこそよろしくな!カノン!』

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