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刀の扱い

リーゼが切り倒した木は直径で30センチ近くはあった。


それを一太刀で切り裂いたのをみて、カノンは目を輝かせていた。


「凄い!凄いねハク!」


『あぁ、普通あれだけの太さの木を切ろうとしても刃が途中で止まるもんなんだが……』


恐らく刀という斬ることに特化した武器ということもあるのだろうが、それ以前にリーゼの技量の高さがなせる業だろう。


恐らくカノンが普通の剣を使ってもあれは出来ない。


魔法剣に魔力を流せば行けるか?


しかも振りぬいた瞬間は高速思考を使ってギリギリで確認できるほどの速度だ。


あれでは普通の奴じゃ認識すらできずに斬られるんじゃないのか?


「リーゼさん!凄いです!」


「あ、ありがとう…」


興奮するカノンに苦笑いで返すリーゼ。


『で、どうだった?試し切りの感想は?』


俺がそういうと、リーゼの顔が少しだけ暗くなった。


「うん、やっぱり誰か使ったみたいだね。そのせいで少しだけ鞘から抜けにくくなってる」


ということはこの刀はリーゼを誘拐した連中か、そこから手に入れた誰かの手によって使用されているという事か。


そして剣と刀は扱いが違う。


普通の剣と同じように扱おうとした結果、刃に歪みでも出たのだろうか?


しかし刀なんてそう簡単に歪むような柔な構造ではない気がするのだが……。


『刀身か?』


俺が聞くとリーゼは首を横に振った。


「これは鞘だと思う。無理に抜いて鞘の内側が傷ついてるんじゃないかな?」


そういいながら鞘に収まったままの刀を見るリーゼ。


確か、日本刀でも適当に抜刀すると鞘だけでなく刀身まで傷つけてしまうという話を聞いたことがある。


それに元々刀は剣ほど強度はない。


だから扱いが難しいわけだが、そのせいで誰かがやってしまったらしい。


「治せるんですか?」


「専門の職人にお願いすれば鞘だけ作り直してくれると思うんだけど……」


そこまで言ってリーゼは口をつぐんだ。


『高いのか?もしくは職人がいないのか?』


「両方かな?高いって言うのももちろんあるけど、私の知る限り刀を作れる武器屋はあまりいないしね」


確かに刀はあまり広まっていないうえ、剣とは作り方も違う。


需要もないのに作ろうとするわけもないか。


「ハク、ユーリさんはどうかな?」


考え込んでいたカノンがそういう。


「ユーリか……」


ユーリはカノンの魔法剣を作った武器屋の主人だ。


ユーリに作れるかは分からないが、もし作れなくても人脈はあるかもしれない。


『可能性はあるな』


それを聞いたカノンとリーゼの顔が明るくなる。


「じゃあレセアールに戻ったらすぐに行こう!」


カノンがそういうが、もうこの町を離れてもいいのだろうか?


この町でも気になることはあるんだが……。


『そうしたいが……リーゼの刀の仕入れ先も気になるんだよな…。そもそも今回の奴隷商の件も分からないことが多いわけだし……』


「それはそうだけど……」


カノンが渋る気持ちも分かる。


しかし今回俺たちはアイリスの助手扱いでここまで来ている。


それを放り出して帰るわけにも行かない。


今回の件は衛兵団が引き継いでアイリスは依頼達成になっているとは言っても、アイリスの許可なしで勝手に戻るわけにはいかないのだ。






「こんな所で仲良く修行中~?」


俺たちがそんなやり取りをしていると、町の方からアイリスが歩いてきた。


「あ、おはようございます」


「おはようございます」


「えぇ、おはよう」


カノンとリーゼが挨拶をすると、アイリスも笑顔で応じる。


「で、どうしたの?なんだか深刻な空気だったけど?」


流石にさっきから漂っていた不穏な空気は分かったらしい。


『あぁ、リーゼの武器なんだが……』


































「なるほどね~」


リーゼの武器のいきさつを説明すると、アイリスは納得したように頷いた。


「私はもうレセアールに帰るつもりだったしいいと思うわよ?」


『先ほど衛兵団と話をしてきました。後は基本的には衛兵団が引き継ぎ、もし何かあればギルド経由で連絡が来ることになっています』


なるほど、もう話は付いているわけか…。


「で、帰りはどうしようか相談しようと思ってね」


「え?相談ですか?」


アイリスの言葉にカノンが首を傾げる。


『はい、行きと同じように走るか、馬車に乗るか、護衛依頼を受けるかです』


歩くという選択肢はどこ行った?


「は、走る?」


行きの事を知らないリーゼが後ずさる。


あぁ、カノンと同じような反応だ。


カノンも最初はあんな反応だったな。


馬車と走るってのは分かるが……。


『護衛依頼ってのはなんだ?』


『はい、ここ、ムードラからレセアールまで商隊の馬車が出ます。その護衛依頼がギルドに張られてました』


ソルが言うには、こういった町間の移動で護衛依頼を受ける冒険者は多いらしい。


どうせ移動中は実入りもないので、それなら多少のお金になる護衛依頼を受けることは冒険者にとってもメリットになるらしい。


『護衛依頼を受ける場合はレセアールまで10日ほど……盗賊などに襲われた場合でも一日ほど伸びるくらいですね』


ソルが追加情報をくれた。


そうなると、今回はリーゼもいるし馬車での移動、もしくは護衛依頼を受けた方がいいのだろうか?


問題としてはリーゼの刀の事だが……。


刀の不調で戦えないのに護衛依頼を受けるのも憚られる。


「リーゼさん、どうしましょう?」


「刀は使いにくいってだけで全く使えないわけじゃないし、護衛依頼を受けて行ってもいいとは思うけど……」


「ハクは?」


『そうだな……護衛依頼の経験を積むという意味ではいい機会だと思うぞ?アイリスが監督してくれるだろうし、このメンバーで問題が起こる確率の方が低いだろう』


女だけとはいえ、竜人に封印者(シーラー)二人、さらにその内一人がAランク冒険者だ。



下手な盗賊では相手にもならないだろうし、魔物もよほど大きな群れで来ない限り大丈夫だろう。


「分かった。アイリスさん、その護衛依頼を受けます」


カノンがそういうとアイリスはなぜか満足げに頷いた。


もしかしたらアイリスはカノンに経験を積ませようとしてくれているのかもしれない。


護衛は普通の戦闘よりも難易度が高い。


特に前衛主体の冒険者では守りが薄くなってしまう事もあるからだ。


だからアイリスは自分がいる間に護衛依頼を受けさせたいのかもしれない。


なんだかんだ頼りないところはあるが面倒見はいいしな。


「じゃあ早速受けに行きましょ」


そう言ってアイリスは町の方に戻っていった。


カノンとリーゼもそれを追う。


しかし、Aランクでも護衛依頼は受けられるのか?


確か護衛依頼はDランクかCランクくらいだし普通ならAランクのアイリスが受けることはできないと思うんだが……。


とは言っても護衛依頼は少し特殊だと聞いたことがあるし、大丈夫だろう……多分。































結論から言って、護衛依頼は問題なく受けることが出来た。


今回はカノンとリーゼのパーティが依頼を受けて、そこにアイリスが臨時で加入するという方法を取った。


これでアイリスもランクに関係なく依頼受けることが出来るわけだ。


自分のランクと同じか、その前後のランクの依頼しか受けることが出来ないので仕方ないのだが、今回アイリスはカノンとリーゼという駆け出し冒険者の育成のためということで許可を取っているのだ。


多用は出来ない方法だが、今回はそれで間違いないし問題ないのだろう。


というわけで、商隊が出発するのは明後日の早朝とのことで、カノンたちはそれまで暇をつぶすことにした。


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