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名称未定の新生パーティ

店を出たカノンとリーゼはギルドに来ていた。


昨日、翌日の朝まではリーゼのギルドカードの再発行は出来ないと言われていたので、もう出来るだろうと行くことにしたのだ。

ギルドの受付で確認したところ、手続きも問題なく終わっているとのことですぐにギルドカードは再発行された。


そして普通なら必要な手数料もなしになった。


というわけでリーゼのギルドカードが出来たので、このままパーティ登録をすることにしたのだが、一つの問題が浮上した。


パーティ登録用の書類をもらって近くのテーブルで書いていたカノンが、ある項目の所で止まったのだ。


「……どうしよう?」


カノンが手を止めたのはパーティ名の項目だ。


しかし書類には任意と書かれているので書かなくてもいいらしい。


そして、後からパーティ名を決めることもできるし、名前の変更も可能だ。


パーティ名とは、要するに周りから見た時の識別名なので、こだわりがある人たち以外はあまり気にしないらしい。


そして有名になれば周りが勝手に言い出すこともあり、それをそのままパーティ名にすることも多いらしい。


『無理に決めなくてもいいんじゃ……』


「そうなんだけど…何かない?」


何かないと言われても……。


『そもそもパーティ名なんて聞いたの一回だけだしな……』


「あ~、マリアさんの?」


俺が言うとカノンも思い出したようだ。


かつてマリアが所属していたパーティの名は、ロイドが口に出していた。


何て言ったかな?


「確か竜の何とか……だっけ?」


どうやらカノンもあまりはっきり覚えていないらしい。


『竜の爪?いや違うな……牙だったか?』


爪か牙かは忘れたが、確かそんな名前だったはずだ。


「じゃあそういうのは却下だね」


つまり竜の~とか、~の爪とか言ったものは全てNGだと言うことか……。


いや、気持ちは分からなくもない。


あんなマリアを使い捨てにしようとしたパーティなんぞと似た名前は縁起が悪い。


……竜の~には少し候補もあったがそれは内緒にしておこう。


「あの、カノンさんはそのパーティと何かトラブルでもあったの?」


俺たちの話を聞いていたリーゼが不思議そうに聞いてきた。


『あぁ、レセアールでカノンがゴブリンの群から助けたパーティだよ。三人組だったんだが、一番弱い奴に全ての雑用をやらせてカノンが見つけた時もそいつを囮に逃げたんだ』


ここまではよかった。


いや、よくはないが……。


「で、助けに入った私が戦ってる隙に逃げたんですけど、私とその場に残ったもう一人をゴブリンにやられたって報告したんですよ!」


カノンの声が段々と強くなっていく。


あの時を思い出してイライラしているのか?


「え?ゴブリンの群?」


引っかかったのそっちか……。


何故かゴブリンの群という単語に反応したリーゼに、カノンが口を開く。


「群の規模は100匹くらいでしたね。ハクが壊滅させましたけど……」


「え?百?そ、その町ってそんなたくさんのゴブリンがいるの?」


何故か少しおびえたように聞いてくるリーゼ。


『いや、あの時は森の奥にゴブリンの集落が二つ出来てたんだ。そのせいだな』


まぁ、普段でも10匹程度の群はちょくちょく見るけど……。


しかしゴブリンの群の脅威度はEランク。


俺とカノンの敵ではないし、人型の魔物は有益なスキルを持っているので俺としては戦いたい側の魔物だ。


「そういえばあの二人ってどうなったんだっけ?」


カノンが思い出したように聞いてきた。


あの二人か……


確かロイドの話では冒険者資格の一定期間の凍結か、剥奪って言ってたな。


とは言っても正式に決まった話を聞いたわけではないから今あの二人がどうなっているのかは全く分からないのだが……。


『そういえば俺も聞いてないな。戻ったらロイドにでも聞いてみるか?』


「そうだね」


俺がそう提案するとカノンも頷いた。


そして俺たちの話を聞いていたリーゼは納得したような顔でカノンを見ていた。


「そういう事か。でも名前はどうするの?」


「どうしましょう?」


カノン、問いに問いで返すな……。


『思いつかないんだったら後回しにするしかないだろう。そうでもしないとその書類も永遠に進まないぞ?』


「…………………………うん」


少し長めの思考時間を経て、パーティ名を考えることを諦めたカノンであった。


とは言ってもそのうち勝手に決まるような気もしている。


カノンとリーゼ、この二人の行動が目立たないわけがないからな。


カノンが目立つのは俺のせいでもある気がするのは気にしない。


というか、最初は二人でのパーティ名なら竜の~でいいような気がしていたのだ。


カノンは竜を封印している封印者(シーラー)


リーゼは竜人で、神竜由来のスキルを持っている。


二人の共通点で考えるのなら理想的だろう。


とは言ってもさっきの話の流れでその候補を出すわけにはいかなかったので、仕方がないかなとは思っている。

















結局パーティ名に関してはなしで書類を提出した。


そしてパーティの登録の終わったカノンとリーゼは、そのまま町の外に来ていた。


因みにアイリスには伝言を残している。


ギルドの受付にお願いしたら快く引き受けてくれたのだ。


これでアイリスがギルドに行けばカノンたちがここに居るということは分かるはずだ。


そもそもソルなら他の手段で見つけてもおかしくないとさえ思ってしまう。


話が逸れたが、ここに来た目的はリーゼの刀の具合を確認するためだ。


購入してから何をいまさらと思われるかも知れないが、刀本体の方は確認済みなのだがリーゼが一度本気で振り回したいと言ったのでここまで来たのだ。


ここなら万が一にも誰か無関係な人間を一刀両断という事故も起きないだろう。


それに周りには木々もあるし、少し遠くに行けば魔物もいるので的には困らない。


そんなわけでここでやることにしたのだ。




近くに生えていた木に向かって鞘に納めたままの刀を構えるリーゼと、少し離れた所からそれを見守るカノン。


抜刀術、つまり居合だよな?


元の世界の居合とこの世界の居合は少しだけ異なるらしい。


元も世界の居合は、座っている状態からの反撃や、抜刀していない状態からの不意打ち的なものも存在する。


それは別に居合の方が威力が高いというわけではない。


まぁ、居合は普通に刀を振るよりも威力が高いという説もあったらしいが……。


しかしこの世界での抜刀術は違う。


この世界の刀の鞘には魔力が流れる回路のようなものがあり、そこに流した魔力を一時的に刀身に伝達させることで斬撃の速度と威力を上げることが出来るらしい。


ただし魔法剣のように専用の剣でないので魔力の残留時間は精々斬撃一発分。


なので斬撃のたびに刀を鞘に納める。


そして鞘の中に魔力を溜め、その魔力を斬撃と同時に飛ばして魔力の斬撃を飛ばすこともできるらしい。


この辺りは魔法剣と近いが、魔法剣よりも切断力には優れているし、乗せる魔力も魔法剣より少ないので需要はあるらしい。


そして最大の特徴は、鞘を左手で持っていることだ。


どうやら鞘も攻防に使用するようで、鞘で相手の攻撃を受け止めたりすることもあるらしい。


そんな疑似的な二刀流のような攻防を行えるのが刀での抜刀術の特徴らしい。







「はぁ!」


そんな声と共にリーゼが刀を一閃した。


鞘から抜き放たれた刀は一切の抵抗を感じさせない滑らかな動きで木を切断した。


そして少しずつ木が倒れていく。


ズシシィィン!


そんな音と共に木は完全に倒れた。


そしてそれを見て満足そうに刀を鞘に仕舞う。


それをカノンは目を輝かせながら見ていた。




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