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アイリスとの合流

「カノンさん、私を貴女のパーティに加えてください」


リーゼのその申し出にカノンは固まってしまった。


「え?……え?」


「えっと……だめ……かな?」


カノンのその様子を見たリーゼが言いにくそうに聞いてくる。


「えっと……私冒険者初心者ですよ?それにまだまだ知らないこともいっぱい……」


「はい、それでも私はカノンさんたちについて行きます!」


まっすぐな目でカノンを見るリーゼ。


「えっと、どうしよう?」


まあ俺に聞いてくるのは分かっていた。


しかし俺に出来る回答は一つしかない。


『カノン好きにしたらいいとしか答えられないぞ?カノンがリーゼと組むのが嫌でないのなら組んでもいいとは思うが……』


「でも私パーティなんて自信ないよ……」


珍しく情けない声を出すカノン。


『リーゼはカノンが初心者だってことも、封印者(シーラー)だってことも分かっている。そんなに気負わなくてもいいだろう。それより、カノンがどうしたいのか、それだけで決めていいと思うぞ?』


勿論普通にパーティを組もうというのならもっとよく考えるべきだろう。


今まで組んできたような即席のパーティではなく、これから一緒に冒険者をやっていく仲間になるのだから。


しかしリーゼに関しては信用してもいいと思うし、この短期間でカノンとリーゼの仲が良くなったのも分かっている。


そもそもマリアの居たパーティもあれだけ問題を抱えていて成立していたのだから、カノンがリーダーをして問題になる可能性などないようなものだろう。


それこそ、問題が起こったのならロンやアイリスに相談すればいいし、そこまでしなくても俺もいる。


体が無いから直接のサポートは出来ないが、それでも間接的なサポートは出来る。


今だ考え込んでいるカノンに向けて、俺は再び話しかける。


『カノン、お前はどうしたい?』


「私は……リーゼさんと同じパーティで冒険者を出来たら楽しいかなって……」


その言葉を聞いたリーゼの表情が明るくなる。


『ならそれを優先したらいい。細かい問題は後回し……というかロンにでも丸投げしとけ』


「それはギルドマスターがかわいそうだと思うけど……」


カノンの呆れたような声が聞こえたが、どうやら段々と調子も戻ってきたな。


そしてリーゼに向き直って、口を開いた。


「リーゼさん。冒険者初心者で迷惑をかけるかもしれませんけど、よろしくお願いします」


「はい!」


カノンの言葉に即答で返事をしたリーゼの顔は、今までで一番輝いていた。






















その後カノンとリーゼは気配察知と魔力感知を頼りにアイリスの居場所を探し、そこに向かっていた。


アイリスが居るのは町の外壁の近くだ。


カノンたちが町を出入りした門とは少し離れた場所で、人の気配も少ないので人気が無いのだろう。


だから町からの脱出には好都合だし、こそこそ抜け穴を掘っていても誰も気が付かなかったのだどう。


その場所に近づいてくると、周りには倒壊した建物が増えてきた。


人気はないが、気配が全くないわけではなく、物陰からこちらを伺うような気配がいくつかある。


まぁそんなに強そうな気配はないので、油断しなければやられることはないだろうが……。


「何?ここ?」


倒壊した建物を見ながらカノンが呟く。


「スラム……かな?私も話を聞いたことがあるだけだけど……」


カノンに答えるようにリーゼが呟いた。


なるほど、言われてみると、そんな感じがする。


それに物陰から探ってくるような気配。


よそ者を警戒するものだとするのなら合点がいく。


そうだとすれば、あまり刺激しない方がいいのだろう。


もし戦闘にでもなれば、被害が甚大なことになる気がする。


主にここに住む人の住居的な意味でだが……。


いや、俺の戦闘スタイルって、集団戦の場合は高火力で文字通り蒸発させるから、こんな場所でやったらがれきが消滅する自信がある。


どうせアイリスの気配のある外壁の近くだし、後数分で合流できそうだ。


これなら普通に移動していた方が得策だろう。





















それから少し進んでいると、建物を挟んだ向こう側で白い炎が立ち上った。


「な、なに?」


「あれは……聖炎?」


リーゼには覚えがあるようだ。


しかし聖炎って言うと、アイリスが持っていなかったか?


「あれ?聖炎ってアイリスさんの……」


カノンも気が付いたらしい。


『嫌な予感がするな……というか嫌な予感しかしないな』


大方アイリスが暴れているのだろうが、その暴れ方が問題だ。


「どうする?行く?」


「行くしかないよね」


『まぁ……そうだよな』


三人の意見も一致したことだし、行ってみるとしよう。











「よし、行きますよ」


カノンはそういうと身体強化と竜装を発動して建物の屋根の上に飛び乗った。


それはいい。


しかし、行きますよと言われたリーゼは果たしてここまで来られるのだろうか?


そんな心配をしていると、少し遅れてリーゼも屋根の上に飛び乗ってきた。


どうやら竜化スキルを使ったらしく、体の一部に鱗が見える。


「あ!あれアイリスさんじゃない?」


カノンが指さす先には、一人の男をアイアンクローで持ち上げるアイリスの姿がある。


そしてその周りには倒れている数人の男たち……。


一体何があったんだ?


この距離なら念話も通じるだろうし、ソルに呼びかけてみるか。


『ソル?何があったんだ?』


『ハクさんですか?……アイリスに絡んだ男の末路……と言えばよろしいでしょうか?』


あぁ……そんな事だろうとは思ったけど……。


いくらAランク冒険者でも女性一人でこんなところを歩いていたら絡まれるのも仕方ないよな……。


『そっちに行っても大丈夫なのか?』


『平気ですよ。アイリスもカノンさんたちが近くにいることには気が付いてましたし』


それを聞いたカノンとリーゼは顔を見合わせて同時に頷くと、アイリスの元に飛び降りた。
















「アイリスさん?」


飛び降りてすぐにアイリスに声を掛けるカノン。


「あら、カノンちゃん。そっちは終わったの?」


男を掴んだ手はそのままに笑顔で対応するアイリスにカノンは若干引いている。


「は、はい。刻印は全員分消しました……所で……この状況は?」


周りに倒れている男たちを見まわしながら首を傾げるカノン。


「あぁ、これ?襲ってきたから返り討ち」


大したことでもないように言って掴んでいた男を投げ捨てたアイリス。


『そもそも何でこんなところにいたんだ?』


こんな場所に居なければ襲われることもないだろうに……。


『抜け穴を見つけたのでそのままヘスカーの痕跡を追っていました。その途中で襲われたというわけです』


なるほどな。


「その時に火を使われたんだけど、瓦礫が燃えたにおいで痕跡が消えちゃったのよ」


『それに怒ったアイリスが聖炎を使ってこの状態というわけです』


なるほど、そういうわけだったか……。


「Aランク冒険者の邪魔をしたんだから当然よ!」


胸を張るアイリスを後目に、カノンとリーゼは顔を見合わせる。


「Aランクってこんな好き勝手出来ましたっけ?」


「無理だったと思う。多分ギルドでお説教が待ってるはずだよ」


リーゼのお説教という言葉が聞こえたのかアイリスの顔が若干青くなる。


『アイリス、安心してください』


ソルの言葉に顔色が元に戻った。


『その前に私が説教をしますので』


「え?」


あぁ、持ち上げてから落としたな……。


アイリスはショックのせいか固まってしまった。


『襲われて返り討ちまではいいでしょう。しかし聖炎はやりすぎではないですか?』


「……はい」


あ、このままお説教の流れかな?


『今はお二人もいますので後にしますが、覚悟してくださいね?』


「はい、分かりました」


がっくりとうなだれながら返事をするアイリス。


その間にもカノンとリーゼは倒れている男たちに駆け寄って状態を確認していく。


「こっちは大丈夫みたいです」


「こっちも大丈夫。しばらくは起きないと思うけど……」


『起きたとしてもトラウマ確定だけどな……』


因みに俺は触手を伸ばしてヘスカーのにおいを探している。


しばらく探知を続けていると、聖炎が届かなかった辺りからにおいが復活しているのを見つけた。


『お?におい見つけたぞ?』


「ほんと?ならまだ追える?」


『あぁ、ここからは俺が案内しよう』


ソルは説教で忙しいかもしれないしな。


というのは建前で、俺も少しはいいところを見せたかったというのが本音だったりするのは内緒だ。



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