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刻印の開放

奴隷の刻印を解くために必要なスキルもそろった。


これでリーゼをはじめあの場にいた刻印を刻まれた人たちも助けられる。


「よし、リーゼさん。この場でやっちゃいましょう」


カノンがリーゼに微笑みかける。


「え、えぇ」


いつ襲われるか分からない場所ではあるが、アイリスが居るからそれくらいは大丈夫だろう。


俺はスキルシェアに魔力捕食と契約術、ついでに魔力感知をセットする。


『カノン、スキルの準備は出来た。いつでも行けるぞ』


「うん、ありがとう。リーゼさん、背中に触りますね」


カノンはそう言って刻印のある場所に触れる。


刻印を解除する手順は単純だ。


まず魔力捕食で刻印の中にある所有者の魔力を吸い出す。


これで所有者の登録は空白になり、そこに契約術でカノン自身を所有者として登録する。


後はカノンが奴隷契約の解除と奴隷からの解放を宣言すればそれで終わりだ。


「……これかな?うん、これっぽい」


魔力感知で目的の魔力を見つけたカノンは、その魔力だけを魔力捕食で吸い取っていく。


カノン以外の魔力が俺の中に流れてくるのをしっかりと感じるから間違いない。


とは言ってもそのまま吸収して大丈夫なのか分からないので魔力制御を使ってその魔力を触手を通して外に放出する。


流石に魔法陣の上に載っている魔力なので大した量ではなく、数秒で吸い出し終わった。


魔力感知を発動させてみると、刻印の一部に魔力の存在しない領域が見える。


ここの魔力を吸い取ったのだろう。


「よし、…………………………奴隷の刻印・契約」


カノンが何かの詠唱をして最後に呟くと、リーゼの背中の刻印が一瞬光った。


「ん……」


リーゼがくすぐったそうな声を出すがカノンはそれを無視してそのまま口を開いた。


「リーゼとの奴隷契約を解除します。同時にリーゼを奴隷から解放、元の身分に戻します」


カノンが奴隷の開放を宣言すると同時に刻印が光った。


服の上からなのでどうなったのかが見えない。


「……上手く……行った?」


カノンは首を傾げながらリーゼの服を捲くって背中を確認する。


そこにあった刻印は跡形もなく消滅していた。


----------

種族・竜人 名称・リーゼ

職業・巫女・Dランク冒険者 年齢15歳

HP・346 MP・693

スキル

感覚系

気配察知Lv3・竜感知Lv1・身体強化Lv4・威嚇Lv1

戦術系

剣術Lv1・抜刀術Lv3

魔法系

魔力操作Lv3・光属性Lv2・水属性Lv1・治癒属性Lv1

技能系

解体Lv1・採取Lv1・鼓舞Lv3

固有スキル

竜化Lv2・神域(神竜)Lv1


----------


鑑定を使ってみても、奴隷の刻印はしっかりと消えている。


それにスキルも中々凄そうなものが揃っている。


このスキルについては後で確認することにしよう。



『大丈夫そうだな。奴隷の刻印の影響は完全に消えている』


「そう、よかった」


俺の言葉を聞いてカノンが安堵したように呟く。


そしてリーゼはぽかんとした顔で自分とカノンを交互に見て、目から一筋の涙を流した。


「リーゼさん?」


「……!カノンさん、ありがとう」


カノンが見ていることに気が付いたリーゼは涙を拭ってカノンに礼を言う。


今まで何も弱音を吐かなかったが、奴隷にされていた間の事は思い出したくもないようなことだったはずだ。


その原因の一端である刻印が消え、完全に奴隷から解放されて感極まったのだろう。


お礼を言った勢いでカノンに抱き着いたリーゼを、カノンはそのまま受け止めた。





































「えっと、ごめんなさい」


それからしばらくして、ようやく泣き止んだリーゼが顔を真っ赤にしながらカノンに謝っていた。


「いえ、気にしないでください」


カノンは苦笑いをしながら言う。


「その、少し感極まったというか……ね?」


「は、はい。気にしませんから……」


カノンとリーゼのやり取りを聞いていた俺は少しだけ違和感を感じた。


さっきまでリーゼは敬語を使っていたが、少し砕けた口調になってるような気がする。


「えっと、リーゼさん?口調変えました?」


「え?あぁ、私こっちが素なんだよね。さっきまでは一応奴隷だったから丁寧にしゃべってたというか……」


なるほどな。


奴隷じゃなくなったから素の喋り方に戻ったということか。


そしてさっきから気になっていることがもう一つある。


カノンとリーゼの会話は完全にすべて終わったような空気を出しているのだが、カノンの後ろの方では爆音が絶え間なく響いている。


いや、誰がやってるのかは分かっている。


アイリスがスライムを蒸発させているのだろうが、スライム相手には少しオーバーキルなのではないだろうか?


カノンの後方に視線を移してみると、木々の上にいくつもの黒煙が立ち上っているんだが……。


森林火災とか大丈夫だよな?


「えっと……これ行っても大丈夫かな?」


カノンも気になってはいたようで、後ろを振り返って苦笑する。


『いや、巻き込まれるのが関の山だと思うぞ?』


あれは自分の周りに味方がいないからこそできる攻撃だ。


あんなところに行ってはカノンでも無事では済まないだろう。


「そういえば私たちを追いかけてた人もどうなったか分からないんだよね?」


カノンに言われてあの商会長……ヘスカーとか言ってたか?


ともかくそいつの足取りも見失ったことに気が付いた。


いや、正直ここのクレーターの中に入った時点で存在は半分以上忘れてたんだが……。


ここのスライムが多すぎて気配察知でもまともに感知できなくなったので放っておいたのだ。


『ここを抜けてスライムの気配が減れば分かるとは思うんだが……』


「どうする?倒す?」


カノン・その倒すってのは捕まえるって意味でいいんだよな?


魔物と同列の扱いじゃないよな?


「私は倒したいわね。恨みもあるし」


そうか、当然と言えば当然だがリーゼは賛成っと……。


「倒したら報奨金も貰えるかもですね」


カノンがとてもいい笑顔で言う。


あぁ、捕まえる方の意味だがあくまで生きていればいいという感じか……。


というか盗賊と同列の考えだったか……。


俺がこの二人をどうやって抑えるかと考えていると、ふと、爆音が止まった。


『お待たせしました。近くにいたスライムは全滅しました』


ソルから念話が入った。


というかあの量のスライムが全滅って……。


森の生態系は大丈夫なんだろうか?


俺の脳裏に浮かんだ光景は辺り一面の焼け野原なんだが……。


「カノンちゃ~ん、そっちは終わった?」


少し離れた場所からアイリスの声が聞こえてくる。




少しして見えてきたアイリスは服にも全く汚れが付いていない。


どうやったらあの爆炎の中でそんなことが出来るんだ?


「あ、アイリスさん」


「カノンちゃん、どう?……って、もう刻印も外せたみたいね」


アイリスはリーゼを一瞥しただけでそれが分かったようだ。


『リーゼさんから刻印の魔力が消えています。流石というべきですね』


刻印の魔力を確認したのか。


「あ、あの、アイリスさん。ありがとうございます」


リーゼがアイリスに頭を下げると、アイリスは少し困ったように頬を掻く。


「私は何もしてないんだけどね。貴女を守ってたのもカノンちゃんだし、刻印を外したのもカノンちゃんよ……」


「いえ、それでもありがとうございました」


再び頭を下げられてアイリスは困ったように微笑む。








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