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リーゼのお願い

リーゼから一緒に連れて行ってくれと言われたカノンは助けを求めるように周りを見渡すが、当然誰もいない。


「え?えぇっと……」


カノンだけではどうしようもないな。


初対面で出張りたくはないが、ここは俺が話すしかなさそうだ。


『お前は自分の状況が分かっているのか?奴隷の刻印のせいでスキルは使えないんだぞ?』


「え?何処から?」


「ハク?」


俺が突然話に割り込んだので、俺の念話を知らないリーゼは混乱してきょろきょろしているし、カノンは疑問形ではあるが安堵した表情になっている。


『カノンの中のドラゴン、ハクだ。よろしくな』


「え?ドラゴン?え?」


この様子だとリーゼが混乱から回復するまで少々時間がかかるだろうか?


『混乱しているところで悪いが、どうなんだ?魔法もスキルも使えない。そんな状態で着いてくる意味が分かってるのか?』


「…………」


俺がそういうとリーゼは悔しそうに下唇をかむ。


『ここで待っている方が利口だと思うぞ?』


こういう偉そうなのはあんまり好きじゃない。


しかしリーゼには効果があったようで、肩を震わせている。


「……冒険者は利口じゃないとだめですか?」


リーゼの口から出た言葉には静かな怒りの感情が混ざっていた。


『ダメとは言わない。しかし冒険者は自分の命が第一だろ?』


「う……」


何故かカノンが気まずそうな顔をする。


『明らかに自分の命が危ない状況で無理をする必要はないだろう?』


「ハク?説得力が……」


カノンが呆れたように言う。


『そ、そんなにないか?』


「アイリスさんの依頼についてきた時点で駄目だと思うよ?」


言われてみると、Aランク冒険者相手の指名依頼にDランク冒険者がついていくとか命知らずだとしか思えない。


「…………」


リーゼは先ほどまでとは打って変わって呆れたような顔でカノンを見つめている。


いや、その視線の半分以上は俺に向けられたものなのかもしれない。


『あ~、何で一緒に行きたいんだ?』


「……私はあなた達に命を救われました。恩返しをしたいと思うのは当然の事です」


ん~、言いたいことも分からなくはないが、何か隠してる気がするんだよな……。


連れて行っても俺たちにはあまり危険はないだろうが、リーゼ自身は危険だ。


何せスキルが使えない。


竜人の身体能力で近接戦闘は出来るだろうが、それでも魔物相手にどこまでやれるか分からない。


せめて使えないスキルの内容さえ分かれば今の能力も計算できそうなんだが……。


「どうする?」


カノンが困ったように聞いてくる。


『どうするって……どっちにしてもアイリスの……ソルの判断次第だな』


こういった場合の決定権はソルの方が持っている気がする。


「そうだね、アイリスさんが戻ってきたらソルさんに聞いてみる」


「何で私は無視なのよ!?」


おや?アイリスがいきなり駆け込んできたが、途中から話を聞いていたらしい。


と言っても俺の念話はカノンとリーゼにしか送ってないのでアイリスにはカノンの独り言にしか聞こえていないはずだが……。


『カノンの言葉だけで会話の内容が分かったのか?』


「分かるわよ!テルにも同じようなこと言われたんだから!」


あぁ、アイリスに聞くよりソルに聞いた方が正確だからな……。


「あぁ……」


カノンも納得と言った表情で頷いている。


『それで、どうしたのですか?』


『あぁ、実はな……』


ソルが会話に入ってきてくれたので、俺はリーゼとのやり取りを説明した。










『連れて行ってもいいと思いますよ』


話を聞いたソルの答えは連れていくことだった。


「いいんですか?」


カノンも首を傾げながら聞き返す。


『はい。リーゼさんも冒険者ですし、冒険者が探索に行くのに誰の許可も必要ありません。それに今回行くのは推奨ランクはD以上です。カノンさんも一人で問題のない場所ですし、彼女一人ならアイリスが面倒を見れます。というか、カノンさんでも一人を守りながら戦うことは出来るはずです』


なるほど、そこまで危険な場所ではないわけか。


それを聞いていたリーゼの顔が明るくなる。


「まぁいいか」


そんなリーゼを見ていたカノンがため息を吐きながら呟いた。





『所で、どこに行くんだ?』


話がまとまりつつあるが、まだどこに行くのかは聞いていない。


「この町から少し歩いたところにある盆地ね。丁度そこに出たらしくて討伐依頼が出てたの」


そう言ってアイリスは依頼表を見せてくる。


そこにはスライムロードの討伐と書かれている。


スライムロード?


なんとも似合わない名前だが……。


というか、スライムに支配者っているのか?


「スライム……ですか?」


カノンも疑問に思ったのか聞き返す。


「あ、スライムロードって言っても、こいつ自身はスライムじゃないのよ。ただ、自分でスライムを召喚してそれを操って攻撃してくるってだけで」


なるほど、スライムを使う支配者でスライムロードって訳か。


しかし気になることが一つある。


その依頼表には、Cランクと書かれているんだが?


『Cランクの依頼はDランク以上で受けることが出来ますよ?』


あれ?ソルに考えを読まれた?


『まあいいが……カノンはそれでいいのか?』


「え?話を聞く限り、ハクの劣化版でしょ?」


カノンがきょとんとした顔で言う。


……そうか、俺って周りからそう見られてたのか……。


いや、確かに最近スライムばかり使ってるけども……。


それは否定できないんだけど……。


ま、まあいいか……。


「じゃあ出発は明日の朝でよろしくね~、そっちのお嬢さんもいいわよね?」


「は、はい。お願いします」


いきなりアイリスに話を振られたリーゼは慌てて返事をして頭を下げる。


「二人とも今日はゆっくり休んで明日に備えなさいね」


そう言い残してアイリスは出て行った。


しかし、AランクだとCランクの依頼は受けることが出来ないはずなのだが……。


どうやって受けたのだろう?







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