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竜人の巫女

「それならいい方法があるわよ~」


突然現れてそういったアイリスに対して、カノンは驚いているし、テルは冷めた視線を向けている。


「いきなり何よ?ていうか話ちゃんと理解してるの?」


「勿論よ。要はこの子の奴隷の刻印を消したいんでしょ?」


得意げに胸を張るアイリス。


ここは胸を張るようなところではない気がするけど、話の概要は理解しているらしい。


「とは言っても、カノンちゃん達のスキル頼みだけどね」


俺たちの?


しかし俺たちにはそんなことを出来るスキルは……


いや、ないなら手に入れればいい。


俺のスキルテイカーならそれが出来る。


しかしそれも目的のスキルを持っている敵がいればだが……。


「奴隷の刻印って、所有者とは魔力的な繋がりしかないから魔力吸収みたいなスキルで刻印に込められている所有者の魔力さえ奪えば普通の契約術のスキルでも所有者の上書きが出来るのよ。後はその所有者が奴隷の放棄を選べば解決って訳」



なるほど、直接は干渉できないが、他のスキルで隙を作るわけか。


しかし魔力吸収なんてあったか?


あ、魔力捕食があるわ。


確か怨霊スキルが分解されたスキルだったはずだ。


『魔力捕食ならあるが……』


『それでも大丈夫ですよ。魔力吸収よりも効率は落ちますが、今回は問題はありません』


ソルによると、魔力吸収は自分の魔力の限界値まで周りから魔力を吸い取るスキルで、上手く制御しないと手当たり次第になってしまうらしい。


しかし魔力捕食の場合は、触れていないと発動できないし吸い取る速度も遅いが、狙った魔力だけを吸い取れるということだ。


今回はむしろ最適かもしれない。


「じゃあとは契約術だけね」


「それなら探せば見つかるかも!」


テルはそう言って医務室を飛び出していった。


「あ!テル!?まだ話は……」


アイリスはまだ何か言おうとしていたようだが、テルの耳には入らなかったようだ。


「契約術を使うのは魔力を吸い取った人じゃないといけないらしいんだけど……」


テルの行動は完全な無駄足というわけだ。


「で、でも私契約術なんて持ってないんですけど……」


「魔物でも契約術を持ってるやつはいるわよ?ロード系の魔物なんかがそうね」


なるほど、そいつらを狩れば簡単か。


簡単か?


ロード系の魔物は自分の下位種族を率いる能力がある。


つまりそいつを相手にするには魔物の大群、下手をすると軍隊を相手にする必要がある。


いくら何でも無茶じゃないか?


「私が雑魚を蹴散らすから、カノンちゃんは目的のスキルをサクッとやっちゃえばいいのよ」


魔物がスキル扱いなことに突っ込むべきかスルーすべきか……。


まあそれが一番効率がよさそうだし、それしかないか。


「じゃあロード系の魔物の依頼がないか聞いてくるわね。カノンちゃんは待ってて」


アイリスはそういうとそのまま医務室を出て行った。


「どうする?」


『どうするって?』


カノンの問いの意味が分からず、問いに問いで返してしまった。


「待ってる?私たちも行く?」


あぁ、そういうことか。


『待ってた方がいいだろう。もしかしたら暴走したテルが戻ってくるかもしれないし』


戻ってきて誰もいないと余計に暴走しそうだ。


こういう所はアイリスに似ている気がする。


類は友を呼ぶとはこういうことを言うのだろうか?


「そういえば、欲しいスキルがあるんだけど……」


『なんだ?』


カノンからスキルの事を言い出すのは珍しい。


「召喚術が欲しい。それがあればハクも自由に動けるでしょ?」


俺の事を考えてくれたのか。


思わず涙腺が緩んでしまう。


いや、体もなければ涙腺もないけども……。


『そうだな……ロード系の魔物なら意外と持っていそうだけどな』


俺の勝手なイメージだが、ゲームとかだと大体雑魚を無尽蔵に召喚してくる気がする。


それと同じなら召喚術スキルくらいもってるだろう。


「そうなったらハクを抱っこしてもふもふ……」


あれ?もしかして俺ぬいぐるみみたいに思われてる?


カノンから漏れてきた言葉に内心冷やせをかく。



いや、気にしないことにしよう。


あの時から魔力も増えたしもしかしたら大きくなっているかもしれない。


いや、きっと大きくなっている。


カノンを背中に乗せられるくらいには成長していたい。


体が無いんだから成長どころか何も変わっていないという可能性が頭の片隅に浮かんだが、そんなものは捨てておく。


そもそも俺はドラゴンだから全身は鱗に覆われていてモフモフはないんだが……。


いや、さっきのカノンの言葉は空耳だ。


気にしないことにした。







そんなことを考えていると、ふと、ベッドの方から視線を感じた。


そちらを見てみると、少女が目を覚ましてカノンの方をじっと見ていた。


カノンはぼーっとしているので気づいていないだろう。


『カノン?目を覚ましてるぞ?』


「……え?あ!起きたんですね!」


俺の言葉で少女の視線に気が付いたカノンは嬉しそうに笑う。


「……はい。あの……貴女は……」


そこまで言って言いよどんでしまう少女。


「はい?なんでしょう?」


カノンも首を傾げながら聞き返す。


「……失礼を承知で聞きたいのですが、貴女は竜人なのですか?人間なのですか?」


あぁ、そういえばこの少女の前で竜装を使ってたよな。


見た目だけは竜人っぽくなるから疑問に思うのも当然か?


「えっと、人間ですよ?封印者(シーラー)ですけど……」


カノンはこの手の質問は予想外だったらしく、戸惑いながら答える。


封印者(シーラー)……ですか?」


あぁ、封印者(シーラー)って普通のクラスよりはマイナーだろうし知らない人も多そうだよな。


レセアールではアイリスが居たからか認知度も高かったが、この町ではそうではないのかもしれない。


「えっと……私の中に竜がいます。あれはそのおかげです」


カノンのざっくりとした説明で、何となくは分かった様子の少女。


「……そうですか。道理で貴女から竜の気配がすると……」


しかし少女の疑問は解けたらしく、納得したような表情になっている。


しかし竜の気配か……。


今、彼女はスキルを全く使えない状態のはずなんだが、それでも分かるんだな。


「竜の気配……そんなの分かるんですか?」


カノンも同じことを思ったようで、首を傾げる。


「あ、すみません。こちらの自己紹介をしていませんでした。私はリーゼと言います。巫女をしています」


寝たままなのでわずかに首を上下させるリーゼ。


そういえば職業に巫女ってあったな。


特殊クラスの一つだったはずだ。


つまりカノンと同じく特別な要因があるということか。


「巫女……ですか?」


「はい、ギルドカードには巫女というクラスで登録されています。特殊クラスとのことで……」


本人にもあまり詳しくは分からないらしいな。


特殊クラスの条件は調べたことがある。


例えばカノンの封印者(シーラー)は自分の中に魔物なり竜なり神獣なりを封印していれば勝手に認定される。


確か巫女は特殊クラスの中でも数が多く、推測ではあるが条件も分かっているらしい。


その条件とは、スキルの中で神に関連するスキルを持っている事らしい。


例えば神託や神威と言ったようなスキルがあるらしい。


ただ、この対象となるスキルは殆どが固有スキル、もしくはユニークスキルらしく、断定はできないらしい。


そしてそのスキルの中には神の名を冠しているのもあって強力なものも多く、リーゼがスキルを使えないようにされているのもそのせいではないのだろうか?


「それで……ですね」


簡単な自己紹介をしてもらって、何かを言おうとしたリーゼは言いにくそうに口をつぐんだ。


「はい?」


カノンの疑問符を含んだ返事を聞いて、ためらいながら口を開いた。


「すみません。さっきの話、少し聞いてしまいました。もし魔物を倒しに行くのでしたら、私も連れて行ってください」


リーゼの口から出た言葉には、強い決意のようなものがこもっていた。






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