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奴隷の刻印

衛兵による地上部の制圧が終わり、中にいた人が次々に連れ出されていく。


中にはここの実態を知らなかった人もいるだろうが、本当に知らなかったかどうかはこれから調べるだろうし、本当に知らなかったのならそんなにひどい事にはならないだろう。


「いや~、早く片付いて良かった良かった!」


その光景を見ながらアイリスが大きく伸びをする。


アイリスとカノンは少し離れた場所にいる。


衛兵の邪魔をしない場所からその光景を見ていた。


『早くって……まぁこの町に来て丸一日は経ってないけど……』


俺たちがこの町に着いたのが昨日の夕方、今は日が陰り始めてはいるがまだ明るい。


中々のスピード解決となった。


途中からは俺たちの私怨もあって、やる気が上がっていたということもあるが……。


「この後はギルドですか?それとも詰所の方へ?」


カノンがアイリスに聞く。


「そうね……ギルドでいいんじゃないかしら?」


アイリスが少し考えてから答える。


『そうですね、私たちの報告はギルドにしますし、今詰所はバタバタしているでしょうからその方がいいでしょう』


二人がそういうなら間違いないのだろう。
































その後ギルドに戻ると、テルがいた。


どうやらアイリスの知り合いのため、アイリスへの報告に来たらしい。


商会の方の捜査はまだ途中だが、奴隷にされていた人からの話は聞き終えたようで、その報告らしい。


そしてカノンにも話を聞きたいとのことで、ギルドの一室でカノンは地下室に侵入したときの話をした。


その間にアイリスはギルドマスターに報告に行ったらしい。


「……大まかにはこんな感じです」


あらすじをテルに説明して話を切ったカノンは、少し緊張した様子だ。


まあ、日本で言えば警察の取り調べを受けているようなものだし仕方ないか。


「なるほどね~、でもやっぱりアイリス呼んで正解だったわね」


そういいながらカノンに聞いたことをメモしていくテル。


テルが言うには、この町で普通に冒険者を雇って制圧する作戦も案が出ていたらしい。


「でも魔力封じがあると人数なんて関係なくなっちゃうからね」


まあその通りだろうな。


あの商会長が無事だったのは何らかの対策をしていたからなんだろうが、そもそも身動きが取れなくなってしまえば一人相手にも負けるだろう。


そういえばあの商会長、戦斧なんか持って強そうだったな。


物腰は商人らしく丁寧だったが……。


この世界の商人ってのはみんなあんな感じなんだろうか?


…………魔物の生息域を護衛もなしに突き進む商人……。


なんだかイメージが……。


いや、想像するのはやめておこう。


そういえば、あんな結界は初めて見たけど普通に出回ってるものなのか?


テルに直接話しかけたことはないが、ソルは普通に話しかけるらしいし大丈夫だろう。


『いきなり済まない。テル、少し聞きたいことがあるんだが』


「え?……あぁ、カノンちゃんの中の……」


テルはいきなりの念話に驚いたが、ソルで慣れているのかすぐに誰か分かってくれた。


『キメラドラゴンのハクだ。よろしくな』


「ハクね、こちらこそよろしく。で、どうしたの?」


『あの結界なんだが、普通に出回ってるものなのか?』


俺がそう聞くと、テルは難しい顔をした。


「ん~、魔法陣として技術が確立されて販売もされてるんだけど……」


なんだか歯切れが悪い。


「買うには国の許可がいるし、値段もすごく高いから流通はしてないわね。そもそも普通は見る機会もない物だしね。詰所の牢屋とかには使われてるけど」


まあそうだよな。


あんなものが普通に出回っていたら大問題だ。


因みに値段が高いと聞いたカノンが少し体を震わせた。


あぁ、そういやあの部屋にあった奴叩き壊したな……、俺が……。


「一応あの商会が許可を取って買ったかどうかは調べてるんだけど、裏ルートっぽいのよね~」


そういいながらため息を吐くテル。


しかしこれ、途中からは聞かない方がいい情報な気がするんだが大丈夫なのか?


「他に聞きたいことはある?」


『いや、大丈夫だ、ありがとう』


「どういたしまして。とりあえずこっちから聞きたいことも全部聞いたし…後は……」


そういいながらメモにチェックを入れていく。


さっきまでのカノンへの聞き取りもあらかじめ質問の内容は決めてあったんだな。


「あ、そうそう。カノンちゃんって鑑定使えるんだよね?」


なにか忘れていたらしい。


「え?は、はい。ハクが使えますけど……」


「鑑定してもらいたい子がいるのよ。今医務室で寝てるから一緒に来てくれない?」


「えっと…ハク?いい?」


『あぁ、それくらいなら問題ないぞ?』


「はい、分かりました」


そう言ってカノンはテルについて医務室に向かった。






























医務室で寝ていたのは地下室でカノンに最初に話しかけてくれた少女だ。


確か竜人だった気がする。


「この人……ですか?」


「えぇ」


テルは神妙な顔で頷いた。


「ハク、出来る?」


『あぁ、さっき地下で鑑定したけど……もう一回……』


----------

種族・竜人 名称・リーゼ

職業・巫女・Dランク冒険者 年齢15歳

HP・346 MP・693

状態・衰弱・奴隷の刻印

スキル

奴隷の刻印により閲覧不可

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さっきと全く同じ結果になった。


『で、何が知りたいんだ?鑑定結果を書き出せばいいのか?』


「いえ、鑑定って状態って項目があるでしょ?それが知りたいの」


状態?


『状態なら……衰弱と奴隷の刻印ってなってるな。ついでに言うとそのせいでスキルが見れない』


「やっぱりね……」


俺の説明に納得したように頷くテル。


反応したのは恐らく奴隷の刻印の方だろう。


「奴隷の刻印?って?」


カノンが初めて聞く単語に首を傾げる。


「あぁ、普通は知らないわよね」


そんなカノンの様子にテルは納得した様子で説明してくれた。


そもそも奴隷とは、魔法的な契約で成立している。


スキルとして奴隷術というものが存在し、それを使って対象に奴隷紋と呼ばれる魔法陣を刻むことで奴隷にするというものだ。


それは契約術スキルの一種として扱われる。


奴隷術は基本的に対象の許可なしでは行使できないので、犯罪者を奴隷にする場合には同じ効果を持った首輪を使うのが一般的らしい。


首輪は恐らく地下で見た革製のあれだろう。


あの首輪はそれ自体が奴隷紋と同じ魔法陣になっており、対象にはめるだけで効果を発揮する。


さらに、対になる魔法陣が描かれた魔道具などに主所有者の魔力を流すと全身に激痛が走るようになっている。


また、所有者の意思でスキルや魔力の発動を抑えることが出来るそうで、それを使って粗暴な犯罪者を抑え込むのだそうだ。


あの場にいた人たちにつけられていた首輪は詰所で外されたらしい。


なんでも普通に外すのは難しいが、詰所などの公的機関には専用の魔道具があり簡単に外すことが出来るようだ。


しかし、この少女に施されているようなスキルによる奴隷の刻印を消すことはできないらしい。


そもそも奴隷の刻印とは、背中に刻まれている奴隷紋そのものであり、魔力的なつながりのみで所有者とつながっている。


そしてこれを解除するには所有者の意思で奴隷を開放するか、所有者が死ぬしかない。


他にも同じ奴隷術や契約術で契約を消すことも出来るのだが、契約術ではそれなりのレベルが必要になるし、奴隷術は持っている人間はほとんどいない。


そういった使い勝手の悪さから段々と廃れていったスキルが、目の前の少女に施されているというわけだ。


……厄介だな。


「スキルを見れないってことは、スキルを全く使えないようにされてるって事ね。このまま解放されても生きていくのは難しいわね」


この世界はスキル在りきだ。


スキルが使えなければいきなり人生がハードモードになってしまう。


「ハク?契約術か奴隷術持ってない?」


カノンが聞いてくるがいくら何でもそれは無茶ぶりだ。


『流石にそんなものはないぞ?』


「だよね……」


「せめて高レベルの契約術スキルを持ってる人がいれば、所有者変更くらいは出来るんだけど……」


テルもどうしたものかと頭を抱える。





「それならいい方法があるわよ~」


そんな空気を壊すような軽い声で、部屋に入ってきたアイリスがそういった。




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