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魔力の相性

炎が収まると、そこには真っ黒に焼け焦げた植物の一部が転がっていた。


念のために自分のステータスを確認してみると、わずかに上昇している。


倒したということでいいのだろう。


「相変わらずすごい威力だね」


心なしかカノンの声が呆れているように聞こえる。


「でもDランクであの火力は凄いと思うわよ」


後ろにいたアイリスがフォローしてくれた。


アイリスは後ろで俺たちの様子を見ていてくれた。


もしカノンが危険そうになればすぐにでも助けに行けるように待機していてくれたのだ。


今回はカノンの出番はなかったが、俺たちにとってはいい経験になった。


『でもアイリスのファイヤーボールの方が威力が高そうだったんだよな』


「それは仕方ないわよ。私は白虎、聖炎を司る神獣の封印者(シーラー)だしね」


アイリスが笑いながら言う。


『聖炎?そういえばそんなスキルを見た気が……』


確かアイリスには聖炎属性というスキルがあった。


『そもそも魔法の威力は鍛錬次第です。冒険者になって日の浅いお二人ではむしろ強い方だと思いますよ』


「そういえば……カノンちゃんってハクを封印されてどれくらいなの?」


アイリスの言葉に少しだけ考えるカノン。


「えっと……多分一月くらいだと……」


カノンが答えるとアイリスが固まった。


「…………ねえソル?私今のカノンちゃんくらいの時ってどうだったっけ?」


『そうですね。いきなり増えた魔力を使いこなせずに暴発させていましたね。身体強化も無茶苦茶で体が振り回されていた記憶がありますが』


「やっぱりそうだよね。あれ?私そのうち抜かれちゃう?」


『これから死ぬ気で鍛錬すれば大丈夫ではないですか?…………しばらくは』


「しばらくって何!?」


そう言って落ち込むアイリス。


そういえばカノンは最初から俺の魔力もスキルも使いこなせていたよな。


『そういや……カノンが魔力の制御で苦労したことってあったか?』


「え?……あんまりないかな?あ!魔装はそれにかかりっきりになっちゃうけど」


まあ魔装は特殊だしな。


そういえば……。


『俺の場合はカノンに封印されてから急激に魔力が増えて行ったからそのせいじゃないのか?』


俺の初期の魔力は精々人の範疇だった。


そこから増えて行ったのでカノンも問題なかったのではないのだどうか?


『いえ、その場合はむしろ扱いが難しくなります。戦うたびに魔力が増えていくわけですから、前の戦いと同じ感覚で魔法を使えば間違いなく暴発します』


あぁ、確かにいつも数値で測れるわけではないし、自分の魔力の何%と言った感じでやれば魔力の込め過ぎになってしまうな。


『その辺りは間違いなくカノンさんの才能も有るでしょうが、お二人の相性が大きいのでしょうね』


「相性?」


ソルの言葉にカノンが首を傾げる。


『はい、封印者(シーラー)は私達、つまり自分の中にいる別の存在の魔力を利用します。自分の魔力ではないので制御しにくく、暴発しやすいのです』


『つまり運よく俺たちの魔力の相性が良かったから上手く扱えてるって訳か』


『そういうことです』


「…そっか」


カノンはどこか嬉しそうに呟いた。








































その後休憩を終えた二人は再び走り出した。


今度はアイリスもカノンに速度を合わせてくれている。


というより、カノンの魔装を観察したいようだ。


まっすぐに前を見ながら走るカノンの横で、カノンを凝視しながら走っている。


何であれでこけたりしないんだ?


俺とソルはさっきのマンイーターについて話していた。


『で、なんであんなのが放置されてたんだ?ギルドで依頼が出ててもおかしくないだろ?』


『依頼はありましたよ。Aランク依頼なので受ける人がいるかは別でしたが』


なるほど、Aランクの依頼となれば受けられるのはBランク以上。


そんなランクの連中が早々いるわけもないか。


『で、アイリスは受けなかったんだな?』


『はい、レセアールに戻ってから掲示板すら見ていないと思いますよ?』


そんな事だろうと思った。


『それにアイリスの探知能力でマンイーターを見つけるのは難しいので見たとしても受けないでしょうね。ハクさんのように鑑定持ちでもない限り、あの擬態を見破るのは難しいですから』


確かにあの擬態能力では、見破るのは難しいだろう。


『まぁ、あの手の待ち伏せ型は罠を張って捕まえるって訳にも行かないか』


みた感じだと、マンイーターはあまり動き回れるような体はしていなかった。


根は足のように使用できそうだったが、それでも少しずつ動くのがやっとだろう。


あれは基本的には獲物を待ち伏せて、蔓で捕食するのだろう。


『しかしこの辺りにマンイーターが出たのは初めてです。どこからか種が飛んできたのか、もしくは誰かが持ってきたのか……』


ソルはそう言って黙り込んでしまった。


考えを整理しているのだろうか?


俺も少し情報を整理してみることにしよう。


マンイーターが出たとの情報は最近になって出たものだろう。


じゃないとカノンも知らなかったのはおかしい。


カノンは他の冒険者との交流もあるのでそういった情報はある程度入ってくる。


そしてアイリスが知らなかったのもいい。


二人がこの森を抜けるのを知っていても、Aランクの冒険者ならマンイーターを無視して近道を行くというのもあり得るだろう。


だからギルドが警告を出さなかったのも不思議なことではない。


問題は、ソルの言ったここに出たのは初めてという言葉だ。


つまりこの辺りではマンイーターはいなくて、誰かが持ち込んだ可能性がある。


そうなると、冒険者を狙い撃ちするような場所にいるマンイーターには違和感を持ってしまう。


まあこれ以上考えてもどうしようもないだろう。


考えても今ここで出来ることはない。


さっきの戦いの反省をする方が大事だろう。


二人には上出来との評価をもらったが、それに甘んじていては成長出来はしないだろう。


さっきの魔法は高威力を意識したが、もっと狭い範囲でも出来たのではないだろうか?


いや、俺の魔力操作では限界があるが、カノンの魔力制御でなら行けるのかもしれない。


さっきは一人で突っ走りすぎた。


今度はカノンとも相談して技のバリエーションを増やしていくのがベストだろう。


そんな事を考えていたら、ふと新しい攻撃の案が浮かんだ。


これは俺一人では実行できそうにないのでカノンと相談するしかないが、もし出来たらロマンがある。


次の休憩か、町に着いたときにでも相談してみることにしよう。




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