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幼馴染

「…セレン?」


カノンもセレンが来たのは予想外だったようで、驚いている。


「……カノンちゃん、ごめんなさい」


セレンはカノンにそういうと、いきなり頭を下げる。


「え?」


それに対してカノンはポカンとするだけだ。


「……その、今まで酷いこと言ったから……」


セレンがそういっても、カノンは首を傾げる。


「セレンから何か言われた覚えはないんだけど……」


「……アインが……」


「それセレンが謝ることじゃないよね!?」


カノンが思わず突っ込みを入れる。


「……ごめんなさい」


「…………」


流石にカノンもどうしたらいいのか分からなくなってきたらしい。


困惑、というよりは混乱しているといった方が正しいだろう。


「……えっと、アインはともかく、セレンの事は気にしてないんだけど……ていうか、なんで謝りたいって思ったの?」


カノンは何とか言葉を紡ぐ。


「……さっきカノンちゃんに攻撃を止められた時、何となくカノンちゃんが大きく見えた。だからその後の死にかけたって言葉も、例えじゃないんだろうなって…………」


「あ~、そういうことか」


俺にはセレンが何を言いたいのかいまいち分からないが、カノンには充分だったらしい。


「……私も甘く見てた。ごめんなさい」


「……うん、分かった」


三度頭を下げるセレンにカノンが近づいて、頭を上げるように促す。


「でも、どうして冒険者を選んだの?学費を稼ぐだけなら仕事は他にも……」


「……アインに」


そこで口を閉じるセレン。


無口よりはましだが、それでも会話が成り立たない。


「あ~、誘われたんだ。で、ここで試験を受けたんだね」


カノンよ、何で会話が成立してるんだ?


「セレンとは幼馴染だからね」


俺の心情を察したのか、カノンが言う。


するとセレンは少しだけ嬉しそうになった。


「村にいた同年代の中で私をいじめなかったのはセレンだけだったしね。まあ、流されやすいから無視とかはされたけど」


カノンが冗談ぽく言うと、セレンが申し訳なさそうに俯く。


「で、流されやすいからアインに捕まってここまで来た……と」


カノンがそういうとセレンは頷いた。


「……学校も」


「あ、そっちも流されたの?」


多分年の割に魔力の多かったアインだけが学校に行くつもりだったのだろう。


そこにセレンが巻き込まれ、その結果学費で村の予算がギリギリになってしまった。


そしてファングウルフの依頼で予算を吐きだしてしまい、ここまで稼ぎに来たと……。


『苦労しそうな子だな』


それも嫌と言えないせいで……。


今の念話はこの部屋にいるセレン以外の全員に送った。


それを聞いたロンとロイドも頷く。


カノンは苦笑している。


「でも、それならアインだけなら村のお金でどうにかなるってことだよね?」


カノンの言葉にセレンは首を横に振る。


「……一緒がいいって」


「てことは、この元凶ってアインじゃない?」


カノンが思わず呟く。


それを聞いていたロンとロイドも頷いている。


「まあ、それでも冒険者に登録した以上は自己責任だ。ここからは流されんなよ」


ロイドはため息を吐きながら言う。


「……はい」


セレンもしっかりと頷いたが……心配だ。


『で、アインの方はどうなるんだ?このままセレンと組ませるのか?』


「いや、それにはギルドは関知しないよ、パーティを組むのも組まないのも冒険者次第だからね」


「しかし、あのガキが仕事できるとは思えんが……」


俺の問いにロンが否定を返し、ロイドは難しそうな顔をしている。


「まあ、ギルドの信用を落とすのなら考えるさ」


ロンはそう言って笑った。


「でも、アインは絶対に問題を起こすと思うよ?セレン、そうなる前にFランクに上がったら?」


カノンがそういうと、セレンは驚いた顔をする。


「……でも私、さっき落ちた」


「さっきはね。だから、もっと鍛えて受け直せばいいじゃん」


カノンがそういうと、ロイドも頷いた。


「そうだぜ、別に一回だけの試験じゃないんだ。実力をつけて受け直せばいい。まあ、Fランク以上はある程度の危険も付き纏うから簡単には合格はさせんがな」


「……はい、頑張ります」


二人の言葉にセレンは頷いた。


「所でセレン、あなた達ここまでどうやって来たの?」


話もひと段落といったところで、カノンが思い出したように言った。


セレンの肩がピクリと跳ねる。


「……えっと……村の人に付いてきた」


「あぁ、さっきアレーナ村の人が来ていたからね。依頼の相談だったけど、その時に二人の事も頼まれたんだよ」


今度はロンが補足してくれた。


なるほど、大人と一緒だったのならよかった。


もしこっそり来ていたとかだったら目も当てられない。


「で、これからどうすんの?」


「……え?」


カノンの質問の意図が分からずに首を傾げるセレン。


「いや、だから泊まるところとか……、今からじゃ依頼があるかも怪しいよ?」


カノンがそういうとセレンの表情が曇る。


まあ、半分ははったりに近いが……。


いくらGランクの依頼が冒険者の数に対して少ないとはいえ、数時間おきに更新される。


その時は争奪戦になるが、そこに突入する勇気と依頼をもぎ取れる実力さえあれば、安宿で暮らすくらいは何とかなる。


セレンにその争奪戦が出来るかは不安ではあるが……。


「……お金、ない」


セレンの呟きに、カノンはやっぱりかといった反応をする。


「どうせそんなことだと思った。アインが後先考えるわけないもんね」


そう言って大きめのため息を吐くカノン。


セレンは救いを求めるようにカノン、ロイド、ロンの順番で視線を向ける。


「……今日の分だけなら……宿代……」


カノンがその視線に負けそうになる。


「……えっと」


カノンも思わずロンに視線を送る。


そしてダメ押しと言わんばかりにロイドの視線もロンに向く。


「え?え?え?僕!?」


ロンが困ったように額に手を当てている。


やがて何かアイデアが浮かんだのか、カノンの方を見た。


「……一応Gランクの冒険者がFランクの依頼を受ける方法はあるんだ」


ロンはそう言ってため息を吐く。


「Eランク以上の冒険者が同行する場合だね。Fランクに上がった時の練習としてそれだけは許可されてるんだ」


ただし、その場合はただでさえ少ない報酬が減ってしまうし、いくらFランクの依頼とはいえお荷物であるGランクの冒険者を連れて行こうとする者は殆どいないので、今では説明さえされていないらしい。


しかし、Fランクならまだ依頼は残っているだろうし、一回でもこなせばセレンの今日の宿代くらいにはなるだろう。


アイン?あいつは知らん!自己責任だ!


「じゃあ、Fランク受けてみる?」


カノンがセレンに提案する。


「……うん、お願い」


セレンも頷いて、二人で依頼を受けることが決まった。




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