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冒険者候補

その後グランとイリスと食事をしていると、ふと、視界の隅にロンの姿が見えた。


「あれ?ギルドマスター?」


カノンが思わず呟く。


ロンはまっすぐこちらに近づいてきた。


「やあ、カノンちゃん。奇遇だね」


「えっと、どうかしたんですか?」


「いやいやどうもしないよ。たまたまカノンちゃんを見かけてね」


そんな訳がない。


偶々にしてはこちらを見つけた瞬間迷わずこちらに向かってきたし、そもそもロンはカノンの事はさん付けで呼んでいたはずだ。


カノンちゃんなどと呼ぶはずがない。


カノンもそれを分かっているのか、少し困った顔をしている。


「ところで、カノンちゃんは今から時間あるかい?」


これは何かあったこと確定だ。


『おい、何があった?』


「え、えっと……何もないよ?」


ロンは視線を逸らして言う。


ギルドマスターとは思えないほど分かりやすい。


もしくはこれも演技なのか……


『何があった?』


「いや……その……」


『何があった?』


言ってることは同じなのに、圧力だけが段々と強くなっていく。


念話でもこんなことが出来るんだな。


「……………実は少し困ったことになっててね……僕の部屋に来てくれないかい?」


なにやら嫌な予感がしてならない。


俺としては放っておきたいが……。


「……私にも関係のあることですか?」


「うん、正直言って無関係に近いと思うよ。でも、まったく無関係ともいえないと思う」


ロンは苦い表情をしている。


「……分かりました」


カノンは渋々といった感じで頷く。


まあ、今まで大変な目に遭ってきたのだから当然の反応だろう。






























『で、何があったんだ?』


ロンの部屋に来て真っ先に俺が言う。


「いきなりだね、まあしょうがないか。あれを見てほしいんだ」


ロンはそう言って窓を開けた。


そこからは演習場が見えるようになっていた。


演習場の中央ではロイドがいて、ロイドと向かい合っているのはカノンと同い年くらいに見える少年と少女だった。


『あれは?』


「Fランク登録の試験だよ」


『あぁ、カノンも受けたあれか』


「もしこの試験に受からなければ、Gランクとして登録してもらうことになるんだ。でも、少しだけ問題があってね」


「というか、これとカノンとどんな関係が?」


どう見ても普通の試験だ。


まあ、ロイドが相手の以上勝つのは無理だろうが、ある程度の実力を示せばいいはずだ。


逆に、受験者の実力を見るため、Cランクのロイドが相手をしているのだろう。


しかし、カノンとの関係は全く見えてこない。


「ううん、これは関係ないとは言えない」


所が、カノンは苦虫をかみつぶしたような表情でそういった。


「あの二人の事、知ってるから……」


『知ってる?どういうことだ?』


「あの二人はアレーナ村から来たらしいんだ」


俺の疑問に答えてくれたのはロンだ。


なるほど、アレーナ村ということは、カノンとは知り合いで間違いない。


「で、ここからが本題なんだけど、あの二人はさっきFランクの試験に落ちたんだけど、ごねてるんだ」


ロンがそういうと、カノンは頭を抱えた。


『ごねてるって、どういう風に?』


「それが……どうもカノンさんがFランクになったのを知って、不公平だって……」


「あ~、なるほど……」


カノンが納得したように呟く。


「で、カノンさんと勝負させろって言ってるらしいんだよ。Eランクに勝てれば問題ないだろって」


『いや、カノンに勝つとかそれこそ不可能だろ』


確かにカノンはEランクだが、Dランクの上位以上の実力は持っている。


ロイドに勝つよりは可能性があるだろうが、試験に合格することよりも簡単とは思えない。


「そうなんだよね、なんでそんなこと言ってるのかな?」


ロンも不思議に思っていたらしく首を傾げる。


「多分、私が魔弱だからだと……」


カノンが俯きながら言う。


『なるほどな、魔法が使えない奴相手なら、なんとでもなるってか』


俺の言葉にカノンが頷く。


「アインは少しだけ魔法が少しだけ使えるし、セレンは体力あるから……多分余裕だと思われてると思う。でも、なんで冒険者に?」


アインとセレンというのはあの二人の名前だろう。


「あ、それは二人から聞いたんだけど、学費を稼ぐためらしいよ。ほら、ファングウルフの依頼があったでしょ?あれで村の貯えを消費しちゃったらしくて二人分の学費が出せなくなったんだって」


ん?あの二人は学費を村から出して貰うつもりだったのか?


というか、村が学費を負担するほど優秀なのか?


「ハク、ここから二人を鑑定できる?」


『ん?出来そうだな』


カノンに言われたので鑑定してみる。


----------

種族・人間 名称・アイン

年齢・13歳

HP・151 MP・162

スキル

魔法系

魔力操作Lv1・火属性Lv1


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種族・人間 名称・セレン

年齢・13歳

HP・125 MP・67

スキル

感覚系

身体強化Lv1


----------


鑑定してみた、してみたが……


『なんというか……、すぐに死ぬ気がする……』


「まあそうだろうね。長い目で見れば強くなるだろうけど、今はまだ早いよ」


ロンも同じ感想らしい。


「で、相談なんだけど、あの二人に現実を教えてあげてくれないかい?」


つまり、あの二人を模擬戦で叩きのめせって事か。


「……分かりました」


カノンは渋々といった感じで頷いた。


そしてカノンの返事を聞いたロンはいい笑顔になった。


「勿論報酬は出すからよろしくね」


「はい、では行ってきますね」


カノンはカノンはため息を吐くと、窓を開けて飛び降りた。






















カノンはロイドとアイン達の間に着地すると、ロイドの方を見る。


「ロイドさん、こんにちわ」


「お、おう。カノンちゃん、来てくれたのか」


ロイドはいきなり現れたカノンに少し驚いたようだったが、一瞬ロンの部屋の方を見て事情を察したらしい。


まあ、窓からロンがこっちを見ているしな。


盛大なため息を吐きながら。


「で、ギルドマスターに戦えって言われましたけど、それでいいですか?」


「あ、あぁ。問題ない」


いつもより少しだけ不機嫌そうなカノンに押されてロイドは一歩後ずさる。


「貴方たちもそれでいいの?」


カノンがそう言ってアインとセレンを見ると、二人とも状況に追い付けていないのかぽかんとしているだけだった。


「お、お前…一体どこから?」


少しだけ復活したアインがカノンに聞く。


カノンはロンの部屋を指さした。


「お昼食べてたらいきなり呼び出されたの、いい迷惑だよ」


「な!魔弱の癖しやがって!」


心底面倒くさそうに言うカノンと、その言い方に怒りを向けるアイン。


セレンの方はあまりついていけないのか無言でカノンの方を見ているだけだ。


「ロイドさん、確認します。二人と私が戦って、二人が勝ったらFランク、私が勝ったらGランクからのスタートでいいんですよね?」


カノンにそういわれてロイドは頷く。


「あぁ、両者とも武器は模擬戦用の物に限定するが、魔法は自由に使ってもいい。そしてカノンちゃん。手加減はいらないぞ」


「え?」


ロイドの言葉に少し驚くカノン。


実は俺も内心驚いている。


「あぁ、カノンちゃんはEランクの冒険者だ。つまり、Fランクの実力があれば勝てないまでもすぐに負けることはないはずだしな」


その理屈はどうなのだろう?


「それなら二人まとめてでいいですよ。面倒なんですぐに終わらせます」


カノンはそういうと、二人に向き直る。


「というわけだけど、それでいい?」


カノンにそういわれたアインは顔を真っ赤にしながら震えてる。


「魔弱が調子に乗んじゃねぇ!その条件でいいが後悔すんなよ!」


「…はい」


辛うじて聞こえたのはセレンの声か?


さっきから一言も喋ってなかったが、単に無口なだけだったのか?


「ロイドさん、始めてください」


「お、おう。カノンちゃん、武器は……あ、ハクか」


ロイドは素手のカノンに首を傾げたが、すぐに俺の能力を使うことを理解して頷いた。


「では俺が審判を務める。いいな?」


「「はい」」


カノンとアインの声が被る。


セレンは口すら開かない。


アインは片手剣を構え、セレンは戦斧を構えた。


まあ、身体強化が追い付いていないので持ち上げるだけで精一杯のようだが……。


というか、何で戦斧なんて選んだ?


カノンは羽織っていたマントを収納に仕舞って、身体強化を発動する。


「では、始め!」


ロイドの号令と共にアインがカノンに向かって剣を構える。




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