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解体のすゝめ

オークを倒して帰る道中、カノンがアンデッドについて説明してくれた。


アンデッドに関してはこの世界では常識らしく、カノンも普通に知っていた。


この世界では、人でも動物でも魔物でも、死体を放置すればアンデッドになってしまうらしい。


それを防ぐためには、死体を燃やしてしまうか、聖属性と呼ばれる特殊な魔法属性で浄化をする必要がある。


ただし聖属性は使える人間が殆どいないので、基本的には燃やされるらしい。


なのでこの世界には土葬はなく、人が死んだ場合は間違いなく火葬されるようだ。


とは言っても、ある程度損傷の激しい死体はアンデッド化しないようで、冒険者が倒した魔物などはまずアンデッド化しないらしい。


それ以前に、もしその場に放置されたとしても、他の魔物や動物の餌になってしまうので心配はないらしい。


それに、アンデッドになるのにもある程度の時間が必要で、その土地の魔力の質にもよるが、基本的には一か月以上放置してようやくといった感じらしい。


第一、今回のスケルトンボアのように肉体のないアンデッドは稀で、基本的にはゾンビになる。


今回は、オークがサーベルボアの死体をきれいに食べ、残された骨が残っていた魔石の影響でスケルトンになったのだろう。


それがカノンの推測だった。


確かにあの時、サーベルボアの死体はそのまま放置した。


あの状況では仕方なかったし、魔石も回収できていなかった。


そして運がいいのか悪いのか、きれいに骨だけが残されてしまったため、偶然そこからスケルトンになったのだろう。


「でも魔物のスケルトンなんて初めて聞いたよ~」


カノンはそう言って笑う。


カノンは人がそうなることはあると知っていたが、まさか魔物もそうなるとは思っていなかった。


それにしてはあまり動揺していなかったように見えたが……。


『だが、運がよかったかもしれないな。もしあいつのせいで他の冒険者に被害が出てたら、責任を感じちまう』


「そうだね、でも、あれくらいなら大丈夫だったと思うよ?スキルもなかったし」


『スキル?怨霊があったぞ?』


「それはアンデッド化したときに勝手につくだけだよ。普通は、元々持っていたスキルも持ってるの」


『……なるほどな』


確かにあれには怨霊以外のスキルはなかった。


恐らく俺のスキルテイカーで奪ってしまったせいだろう。


俺やカノンが倒した相手には問答無用で発動するからあまり気にしてなかったが、文字通りスキルを奪っているのだろう。


だから普通は残っているスキルも残っていなかった。


使うのをやめようとしてどうにかなるものではないが、少し調べた方がいい気がしてきた。






























レセアールの町に戻ったカノンは、ギルドの掲示板の前の居た。


朝に見かけたオークの依頼、それが残っているか確認しに来たのだ。


「あるかな?」


『なさそうだぞ?』


さっきから探しているのだが、オークの肉の納品依頼は張ってない。


多分他の冒険者が納品してしまったのだろう。


「常時依頼で出す?」


『しかないだろう。少し残しておいて自分で食べてもいいとは思うが……』


この世界では魔物の肉は普通に食べられている。


勿論、牛や豚などの家畜もいるが、一歩町の外に出れば魔物がいる世界だ。


遊牧などできないし、牧場も大規模なものは作れない。


もし町の外に作ったのなら、魔物から餌場認定を受けてしまうことだろう。


なのでこの世界では普通の動物の肉は高い。


一般人でも手が出ないわけではないが、日本でいうブランド牛のような扱いを受けている。


それに対して魔物はどこにでもいるし、冒険者が頻繁に倒すのでその肉や素材も流通量が多い。


なので普通に食用とされている。


俺がカノンに封印されてからこの世界の人の食事を見る機会は多かったが、その殆どが魔物の肉だった。


家畜の肉は一度も見たことがない。


そんな訳で、多少量が多くてもギルドは買い取ってくれるし、カノンが食べたいのなら売らずにいた方が安上がりなのだ。


「ん~、どうしよう」


カノンは迷いながらも受付に向かった。


「あれ?」


そして受付には、イリスとグランの姿があった。


カノンの声に気が付いたのか、イリスが振り返ってカノンを見つける。


「カノンちゃんじゃない、どうしたの?」


「えっと、常時依頼の納品に……」


「そうなんだ。私たちも依頼の納品に来たのよ」


「とは言っても、大した収穫はなかったけどな」


イリスの後ろからグランが言う。


「で、カノンちゃんは何を持ってきたの?」


「えっと、オークです」


「お?オークってことは朝張ってあった依頼目当てか?あれはさっき別の奴が納品してたぞ?」


やっぱり通常依頼としてはもうないらしい。


「はい、なので常時依頼で買い取ってもらおうと……」


「なるほどな、でも、同じ考えの奴らが多いから、買い取ってもらえるかどうか……」


グランは難しい顔をする。


なるほど、確かに常時依頼でオークの肉を納品する冒険者が増えると、ギルドが買い取ってくれない可能性もある。


あまり数が多くなると、今度はギルドが不良在庫を抱え込む羽目になるからだ。


「それなら大丈夫ですよ」


今度はグランの後ろから声がかかる。


カノンたち三人がそちらを向くと、笑顔の受付嬢がいた。


「今日はオークの納品が増えることは分かってましたから、他の町へ売るのでまだまだ買い取れますよ」


何故かいつも以上の笑顔でそういう受付嬢。


何かあるのだろうか?


「じゃあ……買取お願いします……」


カノンもその笑顔に押されながら受付に自分の冒険者カードを出す。


「はい、オークの解体はお済ですか?まだでしたら向こうの解体所での納品となります」


「えっと、解体もお願いします」


「はい、ではこちらを解体所で見せてください」


受付嬢はそう言って一枚の書類をカノンに渡す。


カノンはそれをもって解体所に向かった。


何故か後ろにイリスとグランを引き連れて……。


って、なんでお前らついてくるんだ?


































『で、なんでお前らついてきたんだ?』


解体所でオークを渡し、解体と査定には1時間ほどかかると言われたので、カノン達はギルドに併設されている酒場に移動して昼食をとっていた。


「いや~、何となくな」


俺の問いにそう答えるグラン。


『まあいいけど……』


もう何を言っても無駄だろう。


それに、カノンを気にかけてくれてるんだし、むしろ礼を言うべきだろうか?


「それにしても、あのオークすごかったわね」


ふと、イリスが思い出してように言う。


それを聞いたグランも頷いている。


「そうだよな、首なし死体の山なんて初めて見たぞ」


『あ~、確かにあれは衝撃だよな』


グランの言葉で俺の脳裏によみがえってきたのは、解体所に並べられたオークの死体だ。


その全てが首をはねられて死んでいるので、食用となる胴体は綺麗で傷一つない。


処理もせずに持ち帰ったため少し安くはなってしまったが、それでも一般の買い取り額よりも多少高くなった。


とは言っても、解体費を引かれて相場とほぼ一緒の値段になったが。


問題だったのは、普通はあんな倒し方は出来ないということらしい。


高ランクの冒険者になら可能だろうが、普通Eランクの冒険者は傷だらけのオークを持ってくるそうだ。


オークを一撃で倒せる腕もないし、無理に倒そうとして傷だらけにしてしまうらしい。


なので解体所の人たちにオークを見せた所、とても驚かれた。


そして、これだけきれいに倒せるのに解体ができないのはもったいないと、解体技術を学ぶことを勧められたのだ。


「でも、あれはハクのおかげですよ」


『残念ながらそれは違うぞ』


そもそも魔装にあんな能力はない。


あれはカノンの魔力制御のたまものだ。


そう説明するとカノンは照れ臭そうに俯いた。




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