魔装・解放
「くっ!」
イリスは間一髪、横に飛びのいて躱す。
しかしファングウルフはそのまま着地すると、イリスの方に飛びかかろうとする。
『させるかよ!フレイムアロー!』
俺は触手をファングウルフに向けて、魔法を放つ。
フレイムアローはその名の通り、矢のように細い炎を放つ魔法だ。
火属性Lv1の魔法のため威力はそこまで大きくない。
ファイヤーボールと比べても見劣りするくらいだ。
消費魔力もファイヤーボールと変わらない。
ただし、飛んでいく速度はファイヤーボールと比べるとかなり速いし、狙いもつけやすい。
とは言っても、ファングウルフに対して当てれるくらいかと言われると微妙なところだ。
しかし、それで問題はない。
「ガウッ!」
ファングウルフは危険を察知したのか、その場から飛びのいた。
そのおかげでイリスに対する攻撃は中断されたし、不意を突かれたせいか大きく飛びのいたので、空中では身動きは取れないだろう。
『イリス!やれ!』
俺は叫ぶのと同時にフレイムアローを放つ。
イリスも少し遅れて弓を弾き絞り、矢を放つ。
「キャン!」
ファングウルフのそんな鳴き声と共に突き刺さる一本の矢と、一発のフレイムアロー。
矢は後ろ脚の付け根に深々と突き刺さり、フレイムアローは顔面を掠って耳を焼いた。
そして、その一瞬の攻防の間に駆け寄ってきたカノンが、剣を横なぎに振る。
「はぁ!」
「ギャ!」
そんな断末魔と共に、ファングウルフは絶命した。
因みに、カノンが斬りさいた瞬間に何とか鑑定を使うことができた。
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種族・ファングウルフ
HP・316 MP・106
スキル
感覚系
身体強化Lv4・気配察知Lv5・嗅覚探知Lv6・気配遮断Lv6・威嚇Lv9・
技能系
統率Lv3
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スキルに統率があることから、恐らくこの個体が群のリーダーだったとみて間違いないだろう。
「イリスさん!大丈夫ですか?」
カノンが無理な体勢で矢を撃ったせいでせいで受け身をとれずに体を地面に打ち付けてしまったイリスに駆け寄る。
「か、カノンちゃん!後ろ!」
「え?」
イリスに言われてカノンが振り返ると、俺の触手に全身を貫かれたファングウルフの姿があった。
『大丈夫だ。』
実はボスがやられた時、グランが相手をしていた2匹のうちの1匹がこちらに向かってきていたのは確認していた。
そもそもカノンの真後ろであっても視認できるのだから、俺に限って言えば背後からの不意打ちなど意味を為さないのだ。
なので俺はカノンめがけて飛びかかってきたファングウルフを触手の先端を針にして貫いてみたのだ。
《条件を達成しました。スキル・魔装が解放されました》
突然頭の中に声が響いた。
聞き覚えのある声、確かユニークスキルの機能の一つだったか?
で、たしか魔装って俺が最初から持ってたスキルだった気がする。
このスキルだけ使用不可になってて、鑑定もできなかったはずだ。
解放されたってことは鑑定もできるのか?
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魔装Lv1
使用条件 身体強化Lv10・魔力操作Lv10
身体強化Lv10使用中にのみ使用可能。身体強化の際に発生する余剰魔力を体表面上に纏う。その祭、纏った魔力は薄い魔力の層として視認できる。
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内容から察するに、身体強化の上位スキルってイメージでよさそうだ。
しかし、俺って身体強化はレベル9しかなかったし、魔力操作に関してはもっと低くなかったか?
一応鑑定っと……
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種族・キメラドラゴン 名称・ハク
HP・3649 MP・9011
状態・封印
スキル
感覚系
鑑定Lv5・方向感覚Lv7・気配察知Lv7・高速思考Lv2・身体強化Lv10・念話・威嚇Lv6・魔装Lv1・嗅覚探知Lv1・気配遮断Lv1・
戦術系
剣術Lv5・棒術Lv2・戦斧術Lv1・弓術Lv2・格闘術Lv3・戦槌術Lv1・槍術Lv2
魔法系
魔力操作Lv3・詠唱短縮Lv3・詠唱破棄Lv2・火属性Lv4・風属性Lv8・水属性Lv1・地属性Lv1・雷属性Lv1・治癒属性Lv1
状態・耐性系
麻痺針Lv8・毒針Lv7・毒耐性Lv3
技能系
解体Lv1・料理Lv2・穴掘りLv1・建築Lv2・掃除Lv1・採取Lv1・捕獲Lv1・罠作成Lv1・統率Lv1
特殊系
同化Lv3・捕食吸収・触手伸縮Lv8・自己再生Lv10・高速再生Lv5・収納Lv4・粘液Lv5・飛行Lv9・針生成Lv3・形状変化Lv1・硬化Lv1
固有スキル
キメラLv2・スキルテイカー・スキルシェアLv2
ユニークスキル
世界の記憶(詳細不明・ナビゲート機能のみ解放)
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なんか身体強化のレベルが上がっていた。
たしか倒したファングウルフも持っていたはずなので、多分そのおかげだろう。
で、たしかカノンのステータスが……
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種族・人間 名称・カノン
職業・封印者・Eランク冒険者 年齢・13
HP・354 MP・5(9011)
スキル
感覚系
身体強化Lv4・方向感覚Lv6(鑑定Lv5・気配察知Lv7・高速思考Lv2・身体強化Lv10・念話・威嚇Lv6・魔装Lv1・嗅覚探知Lv1)
戦術系
剣術Lv3(剣術Lv5)
魔法系
魔力操作Lv10・魔力制御Lv2(詠唱破棄Lv2・火属性Lv4・風属性Lv8・水属性Lv1・地属性Lv1・雷属性Lv1・治癒属性Lv1)
状態・耐性系
(毒耐性Lv3)
技能系
料理Lv4(採取Lv1)
特殊系
(収納Lv4・飛行Lv9)
固有スキル
竜装Lv2・???(詳細不明)
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こんな感じだ。
因みに( )の中は俺のスキルをスキルシェアで共有しているやつだ。
今までは10個までが限界だったのが、スキルシェアのレベルが上がったことで20個まで共有できるようになったらしい。
おかげで俺の持っている属性は全て使えるようにできた。
もし必要な組み合わせが変わったなら、その場で入れ替えればいいだろう。
高速思考を使えば難しくはないはずだ。
そして、大事なことだが、やはり俺の魔力操作はレベルが足りていない。
しかし、俺の魔力を動かしているのはカノンだし、カノン自身は魔装の起動条件を満たしている。
多分、カノンが身体強化を使っているときに俺の意思で発動させる形になるのだろう。
そんな事を高速思考を使いながら考えていると、マリアとグランは一人でファングウルフを倒せたようで俺たちに近づいてきた。
「イリス、大丈夫か?」
「イリスさん!」
二人ともイリスを心配して声を掛けてくる。
「えぇ、大丈夫。カノンちゃんとハクのおかげね」
イリスはそう言ってカノンに向き直る。
「カノンちゃん、ありがとうね」
「い、いえ、私は反応できてませんでした。ハクのおかげです」
相変わらずの謙虚さである。
一応気配察知と嗅覚探知で確認してみるが、この辺りにはもうファングウルフはいないようだった。
しかし、人の気配が近づいてくるのを感じる。
『カノン、フードを被りなおせ。人の気配が二人だ』
「え!?」
俺の言葉にカノンは驚いて、先ほどの戦闘で捲れてしまったフードを被りなおす。
バゴン!
「お前らー!誰の許可で狩りしてんだ!」
それとほぼ同時に、フレッドが柵を壊して飛び込んできた。




