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一難去ってまた一難

俺はそのあと魔力が回復次第、近くの獲物を狩ってみた。と言ってもスライムしか見当たらなかったわけだが、最初の苦戦が嘘のように次々にスライムを倒せるようになっていった。


具体的には、まず尻尾と翼をスライムに変身させてスライム部分の体積を確保。次にそれを触手伸縮である程度伸ばし、その先端に丸い球体を作る。これで即席のハンマーの完成だ。そしてこのハンマー、全力で使うと射程が7メートルほどになり、遠心力と重力を味方につけて振り下ろすと、スライムは一撃で消滅する。


更にここからがすごい所で、潰したスライムのスライムコアはそのまま触手の中に吸収、スキル・捕食吸収で食べることができたのだ。そうすればあとは魔力の続く限りスライム狩りを続ければ、ある程度まではステータスが上がるというものだ。1匹あたり5増えるから、18匹倒せば100を超えるはずだ。


さすがに10倍のステータス差があればスライムの群れに囲まれても大丈夫だろう。






そんなわけでスライムを探しつつ、2時間ほどで18匹を倒し切った俺は、自分のステータスを確認してみた。


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種族・キメラドラゴン 名称・???

HP・121 MP・139

スキル

鑑定Lv2・同化Lv1・捕食吸収・触手伸縮Lv3・自己再生Lv4・収納Lv1・粘液Lv1・魔装(使用不可)

固有スキル

キメラLv1・スキルテイカー

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なんかスキルが増えているが、それは後回しにするとして、HPとMPの伸びに差があるのが気になる。それに計算よりも多い気がする。いや、俺が計算したのはスライムコアの分だけで、キメラの効果での分は計算に入れていなかった。それを踏まえて計算すると……


確かもともと両方13だった。そしてスライムコアの分が18匹分で90。つまり合計で103になるはずだ。そして『121-103=18』と『139-103=36』となるわけだから、HPは1匹につき1増加、MPは1匹につき2増加となる。これなら計算が合うし問題はない。


更に計算してみると、俺の初期値はHPが7、MPが6となるわけか。俺の初期値が悲しいのはこの際置いていくとして、MPに関しては20倍以上になったみたいだ。これならスキルを多用しても多少は大丈夫だろう。


次にスキルだが、一応経験値稼ぎとしてエンカウントしたスライム全部に鑑定を使ったおかげか、鑑定がLv2になっていた。ほかのスキルのレベルが見れるものそのおかげだろう。同じスライムでも全く同じスキルを持っているわけじゃなくて、少しのばらつきがあるようだった。


全てのスライムが持っていた自己再生はLv4になった。多分、多少は回復速度が上がっているはずだ。逆に最初のスライム以外にまったく持っていなかった同化に関してはLv1だ。レベルの表記がないスキルは、元々レベルの概念がないのだろう。そう言えば新しいスキルも増えているし、気になっている触手伸縮と一緒に確認してみよう。


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触手伸縮Lv3

触手を最大30倍の長さと体積まで伸ばせる。スキルレベルが上がると最大値が増える。伸ばす距離が長いほど魔力を消費する。


収納Lv1

触れたものを亜空間に収納する。レベルが上がると収納できる容量が増える。生物は入らない。


粘液Lv1

粘性の液体を出す。粘度はある程度調整可能。レベルが上がると出せる量が増える。


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触手伸縮に関しては、一気に間合いが3倍に広がった。これで戦闘の幅も広がるし、短い触手を3本作れば同時に3か所に攻撃できるだろう。


収納に関しては、ラノベとかでよく見るあれだな。テンプレだがあると無いのでは色々な効率が天地の差になるだろう。あまりスライムに収納のイメージはないが、手に入ってよかった。


粘液は、スライムっぽい能力だとは思う。しかも粘度をかなりあげられるのならトラップなどにも使えそうだ。スライム相手には効果は期待できないかもしれないが、普通に動物を狩る分には重宝するだろう。この能力はさっそく検証してみるか。


俺は翼をスライムに変化させ、その先端を自分の1メートル程先に出して粘液を出してみた。


なんだろう?おもちゃのスライムのような粘性の液体……というよりここまで来たら物体でもいい気がするが、液体が地面に落ちた。ためしに近くに落ちている枯れ枝で突いてみると、枝の先端が粘液に巻き込まれて離れなくなった。少し引っ張ってみると粘液が伸びるだけで枝は離れそうにない。


これはかなり粘性が強そうで、下手をすると二度とその場所から動けなくなるかもしれない。気をつけねば……。



とりあえず色々試しておこうと、少し粘度を下げるイメージで色々な種類の粘液を出してみた。すると、一度に出せる量はおよそ1リットルくらいで、何回か出せば多くても問題なさそうな感じだ。そして粘度の方も、最初のスライムもどきを最大として、水のような状態までかなり自由に出すことができた。そして何より重要なのは、俺が粘液に触れた状態で粘液を消すイメージをすると、跡形もなく消滅することも分かった。少なくとも、これで俺が間違えて捕まって大惨事という事にはならなさそうだ。


これなら上手く使えば役に立ちそうだ。とはいえこの辺りには獲物がいないので、少し移動してみることにしよう。当初の目的の腹を満たすこともできていないしな。


「そういえば食べられそうな木の実もあるけど……行けるか?」


この辺りが木の実だらけという事を思い出した。とりあえず触手を手近にあった林檎のような木の実まで伸ばすと粘液で木の実を固定。そのまま引っ張って林檎が取れると粘液を消して林檎を落とした。


「早速役に立ったな……」


初めての見せ場が戦闘ではなく食糧調達ではあるが、このスキルもかなり便利だった。この林檎らしき木の実は食べられそうだが、万が一毒という事もある。一応鑑定しておこう。


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品種・山林檎

野生の林檎。糖度は低いが野生動物にとっては貴重な栄養源。

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問題なさそうだ。せっかくだし、収納の検証と練習がてら何個かとって収納に入れてみるか。もしかすると木に生った状態のまま入れれるかもしれないし。






結論から言うと、木に実っている状態では収納できなかった。収納の範囲が木全体と見做されてしまい、容量が足りなくなっているのか、生物という部分に引っかかってしまうのかは分からないが、木から切り離されれば枝の上に乗っていようが地面に落ちていようが問題なく収納できるようだった。収納ってやっぱチートスキルの一種だよな……


そんなわけで俺は林檎を20個ほど確保して、一つを尻尾で持って齧りながら生物を探して移動した。もちろん気配には細心の注意を払っているし、いざとなれば食べかけのまま収納の中に放り込んでしまえばいい。体の一部が触れていれば発動できるのでとても便利だ。



それからしばらく森の中を歩いていると、遠くの方で何かが動くのが見えた。木々の隙間からしか見えていないため何が動いたのかは分からないが、魔物か動物は居そうである。とはいえ罠の可能性もあるので無暗に突っ込んでいくのは危ないし、もしかしたら人間がいる可能性もある。


この姿(子竜)で人間に会えば、即刻討伐コースになるとは思うが……


という訳で少しだけ遠回りをしながら何かが動いた場所に向かうと、そこは森の中で少し開けた空間になっていた。


ブゥゥゥン


「……ん?」


俺がその場所を木の陰から覗っていると、後ろから羽音のようなものが聞こえてきた。音自体は虫の出す羽音そのものなのだが、音の大きさがおかしい。明らかに大きすぎる。俺は嫌な予感に襲われながらゆっくりと振り返ってみた。


「っ!!?」


振り返ってよかった。俺の後ろには50センチくらいのサイズの蜂がいた。たしか日本の蜂って有名なのがスズメバチとかミツバチで、その中でもスズメバチのような肉食の蜂は危険だって話を聞いたことがある。たしかスズメバチはアリの仲間だったはずだよな……。


思考が現実逃避している気がするが仕方ない。俺の脳裏には、スズメバチが芋虫団子を作って巣に持ち替える光景が浮かんでいた。団子の素材は俺だが……。


とりあえず鑑定してみるしかないな。


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種族・キラービー

HP・67 MP・55

スキル

飛行Lv1・麻痺針Lv1・毒針Lv1・方向感覚Lv2・風属性Lv1


昆虫型の魔物。クイーンビーを中心とした群れで行動し、集団で狩りを行う。

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何故か種族の詳細までまとめて確認できた。


目の前の相手に対して勝てるかどうか聞かれるなら間違いなく勝てる。麻痺と毒が不安要素だがスライム化と触手伸縮で何とでもなるだろう。問題なのは相手が蜂だという事だ。こいつの見た目はまるっきりスズメバチだ。そしてスズメバチ…というか殆どの蜂は社会性昆虫と言われており、女王蜂を筆頭にコロニーを形成して生活する。コロニーとはつまりその集団が一つの生命体のようなものになる。


殆どの生物が個としての遺伝子を子孫に受け継がせていくのに対し、コロニーを形成する生物はそのコロニーとしての遺伝子を受け継がせていくのである。


何が言いたいのかというと、目の前のこいつは人間で例えるのなら細胞の一つであり、当然他の仲間が近くにいるという事である。


とりあえずは目の前のこいつを倒してさっさと逃げるのが得策だろう。


「という訳で……、さっそく退場してもらう!」


俺は翼と尻尾をスライムに変えると、触手伸縮でキラービーの上に巨大な網を作り全力で地面にたたきつけた。


ドォォンという音と共に土煙が舞い上がる。しかし俺には地面を叩いた感触しか感じられなかった。


「チッ、蜂なだけあって速いな」


俺は思わず舌打ちすると、触手を自分の周りに戻して警戒を強めた。鑑定では表示されない素早さとかの部分がここまで影響するとは……、ステータスの存在でゲームみたいな感覚になっていたが、やはりこの世界は現実だと改めて思い知らされる。



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