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初めてのパーティ

その後、ロンは受付にカノンがこの依頼を受けること、そしてDランク以上の冒険者を1名以上含むパーティを同行させることを受付に伝えに言った。


残ったカノンは、ロイドと村の男のやり取りを聞いていた。


「で、あんたたちとしてはその子を探して保護したいわけか?」


「はい、あの親では、また同じことになるのは目に見えていますし……」


「しかし、その子を捨てた親も村に住んでるんだろ?もしその子を村に連れ帰ったとして、どうするんだ?」


ロイドがそういうと、男は俯いて黙ってしまった。


そこまでは考えてなかったのだろう。


もし仮に、カノンが魔弱のまま村に帰ったとして、再び捨てられるのは目に見えている。


さっきの話を聞いた限り、カノンの両親はカノンの事はなかったことにしたいはずなのだ。


もし、カノンがまた目の前に現れたのなら、下手をすれば今度は間接的にではなく、直接殺しに来るかもしれない。


「一応、その子が捨てられた場所が分かるなら、その付近に出向く冒険者たちに対して依頼を出すことはできる。ただし、普通に考えて、魔物の蔓延る森や平原で、子供が何日も生きていられるとは思えない。それは分かってるんだろうな?」


「は、はい。ですが、村の者が探せる場所は全て探しました。残っているのは、私たちでは入れない魔物のテリトリーくらいで……」


男のその言葉に、ロイドは大きなため息を吐いた。


「だったら、その時点でギルドに依頼をすればよかっただろ。そうすれば、すぐにでも冒険者が依頼を受けてくれたはずだ」


「そ、それはそうなのですが……」





最初は今回の依頼の話だったはずなのだが、段々と話題がずれてきて、今はロイドが男に説教をしている形になっている。


まあ、村の予算なんて限りがあるだろうし、言い方は悪いが魔弱の子供一人、しかも見つかる可能性は殆どない者に裂ける予算はないだろう。


「なんか……思ってたのと違った……」


『ん?どういうことだ?』


「私、村のみんながお父さんたちと同じ考えだと思ってた」


なるほど、今聞いた話では、村人の方は、カノンの事を普通の魔弱だと思っていて、カノンの両親だけがカノンには魔力があると思っていた。


しかしカノンは、村のみんなから魔力があると思われていて、自分が捨てられたのは村の総意だと思っていたのか。


『なるほどな、で、どうする?あいつにお前の無事を知らせるか?』


「…………それは……やめとく。ばれた時が怖いから……」


『そうか、でも、もし悩んだりしたら相談くらいはしろよ?話を聞くぐらいしかできんが……』


「うん、ありがとう」


カノンはそう言って、覗き穴から目を離した。
































カノンはそのままギルドの受付に来ていた。


そして、受付に行くと、受付にはグランとイリスの姿があった。


「あ、カノンちゃん!やっと来た」


イリスが声を掛けてくるが、なんで二人がいるのだろう?


「え?どうしたんですか?」


カノンは昨日のお説教が尾を引いているのか、少し引き気味に聞く。


「実はさっきギルドマスターにあってな、カノンちゃんが討伐依頼を受けるから、Dランク以上でパーティを組んでくれる冒険者を探してるって聞いてな」


カノンの疑問にグランが答えてくれた。


なるほど、確かにグラン達ならカノンも信頼できるだろう。


しかも、今回の条件であるDランクを一人以上含むというのもクリアしている。


「カノンちゃん、こういう感じの依頼は初めてだって話だったし、それなら初めて会う人たちよりも、私たちが一緒の方がいいんじゃないかってね?」


「そんなわけで、もしカノンちゃんさえよかったら、俺たちも同行しようと思ってな」


「えっと、ありがとうございます。ぜひお願いします」


カノンはそう言って軽く礼をする。


「ああ、こちらこそ、よろしくな」


「で、どうするの?あと一人くらい誰か入れる?」


イリスがそう言ってグランを見る。


しかしグランはカノンの方を向いた。


「今回依頼を受けるのは俺じゃなくてカノンちゃんだから、その辺の判断はカノンちゃん次第なんだよ。ただ、カノンちゃんはこの手の依頼を受けるのは初めてだし、パーティを組んだ経験もないだろうから、出来ればあと一人入れたいな」


グランの言うようにあと一人パーティに入れるとすれば、カノンの知っている人物となるともうほとんどいない。


さて、どうしたものか……。


「ハク、誰かいい人いない?」


カノン、俺に聞かれても困るぞ……。


それでも一応考えはするが……。



『そうだな……とはいっても、この町でカノンと面識がある奴だよな……そうなると、ロイドとマリア……あとはその辺にいる冒険者ぐらいか?』


実はカノンは、たった一日でEランクに上がったこともあり、よくここでたむろしている冒険者には気軽に話しかけられている。


その殆どが、カノンを可愛がってくれるものなので、カノンも困った顔はしても一応返事はしている。


なので、顔見知り程度の付き合いがあるという条件なら、ここに居るほとんどの冒険者が当てはまってくるのだ。


「流石にロイドさんにはお願いできないから、マリアさんかな?この近くにいればいいんだけど……」


『いや、すぐそこにいるぞ』


実はカノンのセリフの途中で、偶然見つけてしまっていた。


「え?何処?」


カノンは周りを見渡すが、なかなか見つからない。


『掲示板の前の人ごみの中だよ』


カノンがその言葉に掲示板の方を見た。


依頼の張り出される掲示板は、朝一で張り出されるのだが、それだけだと張り出した直後に来た依頼は明日になってしまう。


かといって、依頼が来るたびに張り出していたのでは、今度はギルド職員で混雑してしまう。


なので、大体2時間おきに張り出されるのだが、ちょうどそのタイミングだったようで掲示板の前には人だかりができているのだ。


さっきそれを見ていたら、一瞬だけマリアの姿を見ることができた。


ただし、他の冒険者の圧力に負けて弾かれて飛び出してきた、ボロボロの状態ではあったが……


『マリア、聞こえるか?ハクだ』


念話で呼びかけてみると、その瞬間にマリアが人だかりの中から弾かれて出てきた。


そして周りを見渡してカノンを発見すると、何となくやつれた笑顔で近寄ってきた。


因みに、これだけ人の居る状態でピンポイントに念話を飛ばすのはかなり難しい。


しかし、マリアとは昨日念話で会話したことがあったので、一度繋いだことがあった。


どうやら念話とは、一度繋いで魔力のつながりを覚えることができれば、こんな状況でも多少面倒ではあるが念話を繋ぐことができるらしい。


「カノンさん、おはようございます。今、ハクさんに呼ばれたのですが……」


「あ、はい、実は……」


カノンは依頼を受けることと、その臨時パーティにマリアも来てほしいことを説明を交えながら伝えた。






















「お任せください!荷物持ちでも囮でも、なんでもやりますよ!」


説明が終わって開口一番これである。


『いや、荷物持ちは収納が使える俺たちがやればいいし、囮もいらないんだが……』


「そ、そうですよ、むしろ、冒険者として初心者の私がやるべきです!」


カノン、それも何か違う気がするぞ……。


「マリアちゃん、カノンちゃんはそんな事のためにあなたを誘ってないわよ」


俺の心の声を悟ってくれたのか、イリスが助け舟を出してくれた。


しかし、マリアは前のパーティでの扱いのせいで、どうも思考が極端な方向にシフトしていっている気がする。


「あの、私、今回初めてパーティを組むので、マリアさんとなら安心して組めるかなって……」


『マリア、俺からも頼む。カノンの勉強の為でもあるし、マリアなら俺の事も知ってるし安心なんだよ』


俺とカノンにそう言われたマリアは、少し迷った末に頷いた。


「分かりました。ですが、道中の食事はお任せください!いつも作らされていたので得意です!」


分かってくれて何よりだ。


……本当に分かってくれたのか?


まあいいか。


しかし、マリアに料理スキルなんてあったっけ?


確か家事スキルはあった気がするが……。


----------

家事Lv3

料理・掃除・洗濯の統合スキル

上記のスキルと同等の効果がある


----------


統合スキルか、初めて聞いた。


つまり、その3つのスキルが合体したものか、多分、レベルは全部3相当なのだろう。


『ま、まあ、出来れば野宿するときの料理の事とかも教えてもらえると助かるが……』


「あ、はい。それじゃあ、作るときに教えますね」


「じゃあ、今回の依頼はこの4人でいいんだな?」


ずっと蚊帳の外だったグランがカノンに聞いてきた。


「はい、私は大丈夫です」


「よし、じゃあ、今回はカノンちゃんメインで受けるから、臨時パーティでの依頼を受けてって、カノンちゃん、受け方分かるか?」


グランの言葉に、カノンは首を横に振る。


「だよな~、よし、じゃあそれも教えるから、受付に行こう。行くのは俺と、カノンちゃんとマリアちゃんだな」


そう言って二人を連れて受付に向かうグラン。


どうやらグランとイリスはパーティとしてギルドにも登録しているらしく、臨時パーティの時はパーティを組んでいる冒険者はパーティの代表が、ソロの冒険者は基本的に全員で行く必要があるらしい。


そんなわけで、カノンの初パーティは受付のレクチャーから始まった。






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