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戦闘終了

山のようなゴブリンの死体の中心に、カノンはあおむけで倒れている。


着ている服はボロボロになっているが、カノンの肌には傷はない。


意識はないが命に別状はない。


カノンはゴブリンの群相手に勝利したのだ。


とは言っても、戦いの終盤ではすでにカノンは満身創痍だったし、傷も高速再生では追い付かいほどに増えていた。


それでも最後まで戦い抜き、最後の一匹を倒した直後に意識を失って倒れてしまった。


いや、俺がいて本当に良かった。


カノンの意識がなくても高速再生は問題なく使えるので、カノンが気を失ってから全力で治したのだ。


《カノンちゃん!返事してくれ!大丈夫か!?》


カノンの身に着けている魔道具からロイドの声が聞こえてきた。


因みに戦いの最中にも声は聞こえていていたのだが、俺もカノンも答えている暇もなく、聞き流していただけだが、向こうの集落での戦闘はだいぶ前に決着がつき、ロイドたちはこっちに向かっているそうだ。


とは言っても、死者こそ出なかったものの怪我人はかなりいるらしく、残された後方支援の冒険者は全員そっちにかかりっきりになってしまっているらしい。


なのでロイドと後数人がこちらに向かっているらしい。


因みにカノンが気を失うのと同時くらいに動き出したそうなので、そろそろこちらに到着するだろう。


《ギルマス、ゴブリンの死体の山があったんだが……》


これはロイドからロンへの報告か?


どうやら近くまで来たらしい。


ぎりぎりだが気配察知で確認できた。


《どうですか?カノンさんはいますか?》


《少し待ってくれ、これから探す》


探してくれるなら居場所を教えた方がいいだろう。


とは言っても、俺は魔道具を使えないし、カノンもしばらくは起きそうにない。


なので俺は触手を上に向けると、そこからファイヤーボールを発射した。


これでロイドたちが見つけてくれるだろう。


《い、今の魔法はカノンちゃんか!?無事なのか!?》


どうやらロイドたちにも見えたらしい。


なのでもう一発発射する。


























少しだけ待っていると、ロイドたちがカノンを見つけて駆け寄ってきた。


「カノンちゃん!大丈夫かー!?」


仰向けで倒れているカノンを見つけ、ロイドが慌てて駆け寄ってくる。


「おい!生きてるよな!?」


ロイドが懸命にカノンに呼びかけるが、カノンはしばらくは起きられないので代わりに俺が返事をするしかないか。


俺は触手を出すと、ロイドに向かって丸を作って見せる。


「うお!……て、カノンちゃんの中の……ハクか、カノンちゃんは大丈夫ってことだな?」


ロイドは少しだけ驚いたものの、すぐに俺の事思い出してくれたらしく、安堵するように聞いてきた。


それに対して俺は再び丸を作って示す。


「そうか、よかった。で、カノンちゃんは起きられるのか?」


俺は×を作って見せる。


これで伝わるといいんだが……


「えっと……すぐには目を覚まさないってことか?」


俺が丸と答えると、ロイドはカノンを背負った。


「じゃあとりあえずカノンちゃんを連れて戻るぞ」


周りの冒険者にそういうと、ロイドは歩き出した。


「ロイドさん!ゴブリンの事は確認しなくてもいいんですか?」


「いや、この状態じゃ確認できんだろ?」


それはもっともだ。


二択での回答しかできないので、質問する方に少し内容を考えてもらう必要があるが、ロイドでは無理だろう。


それを聞いていた冒険者が、大きなため息を吐いた。


「ギルドマスターと通信繋いで、質問してもらえばいいじゃないですか」


「おう、なるほどな」


ロイドはいい考えだと言わんばかりに反応すると、すぐにロンに連絡をし始めた。






















『…………というわけだ』


《なるほど、よくわかりました。ハクさん。報告ありがとうございます》


何故か俺とロンが会話できている。


その理由は、ロイドがロンに事情を説明し、俺が触手で回答しているときのロンの質問にあった。


「ところで、ハクさんとカノンさんの会話は念話でしょうか?」


この質問に対して俺が丸と答えると、念話は別に魔力的なつながりは必要なく、一定の距離の間ならだれとでも会話できると教えてくれた。


そして、カノンが着けている魔道具に対して念話で話しかければ、ロン達にも聞こえるらしかった。


もっと早く教えてほしかった。


とはいえ、そんなわけで俺はロンと直接会話することに成功し、カノンとゴブリンの戦闘の経緯を説明していたのだ。


「しかしお前ら、よくあの数相手に勝ったよな~」


話を聞いていたロイドが呆れたように言い、それに同意するように他の冒険者たちも頷いている。


『いや、正直ダメかと思ったよ。途中からは、俺も遠距離攻撃を防ぎきれなくなってたし、カノンも正面から攻撃受けてたし』


「それでもだ。最後まで戦い抜いたんだ。普通はできることじゃない。まあ、なんでカノンちゃんがそこまで必死になったのかは気になるが……」


《ハクさんは何か心当たりはありませんか?》


『そういわれてもな……俺もカノンと出会ったのはついこの間の事だし……』


《そうですか……申し訳ありませんが、折を見てカノンさんに聞いていただけますか?》


『あぁ、俺も気になってるからな。必ず聞き出すことにするよ』


「まあ、その前に大事なことがあるかな」


ロイドの言葉に俺は心の中で首を傾げる。


『大事なこと?』


「カノンちゃんへの説教があるだろ?」


ロイドがニヤリと笑うと、カノンの体が一瞬だけ震えた。


意識はないが、これから己の身に起きる地獄の説教タイムを理解したのかもしれない。


《今回はあきらめてください。流石に私たちも心配したんですから》


《そのお説教って、もちろん私も参加していいのよね?》


突然会話に割り込んできたイリスがそんなことを言う。


「まあいいだろ、お前も随分と心配してたみたいだしな」


《ところでハクさん。カノンさんの魔力と体力はどうですか?ある程度は回復しましたか?》


ロンが思い出したように話題を変えてくれた。


正直、助かった。


『いや、体力に関しては、俺が戦闘中から回復させ続けてたってのもあるから問題ないんだが、魔力はほとんど残ってないな』


因みに、マナポーションは戦闘終了後にカノンを回復させるために使ったことで在庫が尽きてしまった。


ただし、魔力の上限に関してはとんでもないことになっている。


前回のゴブリンを焼き尽くした戦闘の事もあるが、今回だけでも相当な数のゴブリンを倒したのだ。


しかも半数以上は上位種だった。


おかげで、スキルも魔力も思ったよりも増えていた。


ただし、どうやら魔力の上限が増えるだけの様で、回復するにはある程度の時間が必要になるらしい。


そのせいで俺の魔力は割合だけでいえば過去最低になっていた。


最も、魔力の総量が増えているので回復速度も多少は上がっているので、恐らく一晩で回復するだろう。


《ではロイド君、町に着いたらカノンさんをギルドの医務室まで連れてきてください。今日の事は、カノンさんが回復してからということにしましょう》


「そうだな。報告に関してもハクからしてもらってるし、問題はなさそうだな」


《じゃあギルドの医務室のベッド開けてもらいますね》


《お願いしますね。イリスさん》


そんな声を聴きながら、俺は一息ついていた。


正直今回は無理かと思ったが、よく生き残れたもんだ。


しかも、カノンの戦闘スキルはやけに高い。


勿論、ロイドやほかのCランク以上の冒険者に比べれば総合力では劣るだろうが、同い年でここまで剣術を扱える者はそういないだろう。


もしかしたら、カノンの必死さとも関係あるのだろうか?


まあ、どっちにしてもそれは今考えることじゃないな。


カノンが起きて、三人からのお説教が済んでからゆっくりと聞き出すことにしよう。



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