アンナの歩いてきた道
「お二人はメリア商会はご存じでしょうか?」
アンナの問いにカノンは首を横に振り、リーゼは少し考えた末口を開いた。
「確か……この国でもトップクラスの規模を誇る商会ですよね?上は貴族向けから下は一般市民や農村向けまで幅広く商売してるって噂は聞いたことがあるような……」
なんか凄く巨大な商会らしいが……。
『カノンは知ってたか?』
「知らないよ?そもそも商会って言われても関わりはなかったし……」
『まったくないわけでもないはずなんだが……』
商会自体にはかかわりはあるだろう……。
まぁ、そもそも小さな村にやってくる商人も商会の下っ端のようなものだろうし、その商人の上がどんな商会かなんてのは子供が気にすることではないのだろうが……。
「この商会の店舗ってこの国の殆どの街にあるけど、少し前から冒険者向けの商品も扱うようになったから私もよくお世話になってるし……そもそもレセアールにもあるからカノンも使ってるよね?」
リーゼにそういわれるが……。
『そんな大きな店舗って行ったことないよな?』
「うん」
俺たちの買い物はほとんどが個人の店だ。
商会の運営するような大きな店は行ったことがない気がする。
「そういえば……カノンとパーティ組んでから行った記憶がないね……」
「え、えっと……そのメリア商会なんですけど、私の父親が商会長なんです。といっても商会は兄が継ぐ予定なので特に何があるわけではないのですが……」
気を取り直して話を再開するアンナ。
なんか…ごめん…。
「私は家を継ぐことはないですし、家業の手伝いも兄や姉がいますので自由だったんです。そんな時に、私に特殊クラス・憑依者の才能があることが分かりまして……」
「冒険者になった……ってこと?」
リーゼの質問に恥ずかしそうにうなずくアンナ。
「はい。ですが家族には大反対されました」
『それは当然だろうな……。冒険者は誰でもなれる反面、実力が伴わなければあっさり死ぬだろうし』
「でも、特殊クラスだからって冒険者を選んだんですか?」
カノンの疑問は尤もだ。
アンナの動機を否定する気はないが、なんだか動機としては弱いような?
「そうですね……ですが、その頃にはもうシルフと契約していましたし、ほかの精霊とも契約してみたいって考えてしまって……。いろんな場所に行って精霊と出会うにはやっぱり冒険者が一番かと……」
なるほどな……。
確かにフットワークの軽さなら冒険者が一番だな。
そこまで言ったアンナはなぜか肩を落とす。
「ですが、冒険者になるにあたって父から条件を出されてしまい……」
『条件?』
俺が復唱すると、アンナが大きくため息をはいて口を開いた。




