迷宮の外へ
リーゼの話を聞きながら一休みしたカノン達は、再び迷宮の出口を目指していた。
まぁ、一休みしたとは言えリーゼの消耗もかなり多かったようで歩く程度ならまだしも迷宮を駆け上がるカノンについていくことはできなさそうだったので、さっきまでと同じようにカノンがリーゼを背負い、俺が周囲を警戒しながら走っている。
「あの……カノン?この格好、なんか罪悪感が……」
背負われているリーゼも、俺と同じ気持ちになったらしい。
『我慢しろ。俺も気にしないようにしてるんだ』
「それに私は別に何ともないから」
「う、うん。そもそも原因は私だし……ごめんなさい」
リーゼはそれだけ言うと黙ってしまった。
まぁ、リーゼも仕方ないことは自覚してはいるのだろう。
リーゼはまだカノンのペースについてこれないし、かといってのんびりしているわけにもいかない。
リーゼの腕は、ポーションを使った応急処置しかしていないのだ。
この状態で放置するわけにもいかない。
だからこそ、さっさと迷宮を脱出して診療所に駆け込まないといけないのだ。
俺たちが休憩を最小限にして走っているのはそれが理由でもある。
そんなわけで、探索している冒険者の横を走り抜けながら、カノンは迷宮の出入り口にたどり着いた。
迷宮の入り口にいる守衛は出てきたカノン達を一瞥して、そのまま視線を戻しかけ……再びカノンのほう……正確には、カノンの横で飛んでいる俺に驚愕の視線を向けてきた。
「お、お嬢ちゃん?その竜は……」
「え?あ!ハク出しっぱなしだった…」
守衛の言葉にカノンが思い出したようにつぶやく。
しかし、そんなカノンの呟きで俺がカノンの制御下にあると理解したのか肩の力を抜いた。
『じゃあ俺は戻るぞ。これ以上騒ぎにしたくないし』
「うん」
目撃者が少ないうちに俺はカノンの中に引っ込む。
「あ~、お嬢ちゃん、できれば今度からは……」
「あ、はい。気を付けます」
守衛が言い終わる前にカノンが謝る。
「あぁ、頼むよ。ここは人が多いからな……っと、その背負っている娘は……え?」
守衛がカノンの背負っているリーゼに気が付き、さらに腕がなくなっていることに気が付く。
「あの、診療所に行きたいんですけど」
「あぁ、分かった。近くにあるから案内しよう」
カノンの言葉に守衛はそう答えると、隣にいるもう一人に何かを伝えてカノンを
手招きする。
案内してくれるのならありがたい。
「ありがとうございます」
カノンも礼を言うと守衛の後を追った。




