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カノンVSゴブリン集団

カノンがしばらく観察をしていると、ゴブリンたちはとんでもない数に膨れ上がっていた。


集まっている広場の地面は見えず、数えるのも不可能なくらいの数だ。


そして問題なのが、そのうち半分以上の個体が体が少し大きいということだ。


その個体に絞って鑑定をしてみると……


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種族・ホブゴブリン・ソードマン

HP・562 MP・420

スキル

剣術Lv3・身体強化Lv2・魔法耐性Lv1・統率Lv1・方向感覚Lv5


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種族・ホブゴブリン・メイジ

HP・354 MP・564

スキル

火属性Lv5・水属性Lv3・詠唱破棄Lv1・魔力操作Lv1・複合魔法Lv1


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種族・ホブゴブリン・アーチャー

HP・412 MP・510

スキル

弓術Lv3・遠目Lv1・狙撃Lv2・身体強化Lv1

----------


こんな感じである。


たしかホブゴブリンは、ゴブリンの上位種のはずだ。


つまり、半分以上が上位種になっているのだろう。



もしこれだけの上位種が動き出したなら、カノン一人でどうにかできる可能性はかなり低い。


「これ……どうにかできる気がしないんだけど……」


『奇遇だな、俺もだ』


カノンも同じ考えだったらしい。


しかしこのままでは動き出すのは時間の問題のような気もする。


そしてそうなったとして、カノン一人相手にどれだけのゴブリンが向かってくるのか、考えるだけでも頭が痛い。


しかも、そのうち数割は遠距離攻撃の手段を持っている。


つまり、上空からちまちま攻撃したとして、間違いなく反撃されてしまうだろう。


『少しやばいな』


「少しってレベルじゃない気がするんだけど……」


『最悪……魔法も届かないような上空からの粘液爆弾だな』


「それか一気に焼き払う?」


俺もカノンも段々と思考が物騒な方向にシフトしてきている。


しかし、そうでもしないとこの群は止められないだろう。


とはいっても、カノンの提案は無駄になりそうだ。


水属性の魔法が使えるゴブリンが何体かいる時点で、火など消されて終わりだろう。


「あれ?なんか数減ってない?」


カノンに言われて、よく観察してみると、確かにさっきよりもゴブリンの密度が下がっているような気がしてきた。


そして嫌な予感がして町の方角に広がる森を気配察知で探ってみると、町の方向に移動していくゴブリンの気配を感じた。


『最悪だな』


「ほんとにね……。カノンです。ゴブリンが動き出しました。………町の方に」


《か、カノンちゃん!出来るだけ派手に攻撃しちゃって!出来るならそのまま反対側まで誘導して!イリスさん!すぐに後方支援をしている冒険者の半分を連れて町に戻ってください!町に残っている冒険者と一緒に住民の避難を!ロイド君!急いでください!》


《了解!すぐに町に戻ります》


《無茶言うなギルマス!カノンちゃん!こっちもさっさと終わらせるから、そっちは頼んだぜ!》


「応援は……期待しない方がいいよね?」


『だな、とりあえず、ゴブリンの先頭に回り込んで火でもお見舞いしてやるか』


俺の言葉にカノンは頷くと、そのまま歩みを進めるゴブリンの群の前に回り込んだ。


とはいっても、俺たちがいるのは森の上空なので、ゴブリンたちからは木々が邪魔をして俺たちの姿は確認しにくいはずだ。


「ハク!お願い!」


『おう!』


俺はそのまま地面に向かって魔法を放つ。


『フレイムトルネード!』



その瞬間、森の中から火の渦が立ち上る。


フレイムトルネードは火属性Lv2で使えるようになる範囲攻撃系の魔法だ。


効果範囲はこの前に使ったファイヤーウォールとウィンドボムの合わせ技よりも広いのだが、一点に与えるダメージとしては、ファイヤーボールすら下回る。


普通に使うだけでは、文字通り見掛け倒しだ。


しかし、火力が低くても、こんな森の中で火を広範囲に使えば、森を燃やすくらいの火力はあるのだ。


ゴブリンの前方の森は燃え上がり、群の前の方にいたゴブリンの内何体かはそのまま焼かれた。


残りのゴブリンたちは、目の前がいきなり燃え上がったことに対して驚いたのか、少しの間後ろからやってくるゴブリンに押されてぶつかったり、そのまま火の中に突っ込まされたりしていたが、すぐに少し後ろにいたリーダーらしきゴブリンが何かを言って、ゴブリンの群は燃え上がった森を迂回し始めた。


「ハク、回り込まれちゃうよ?」


『分かってる。任せろ』


今度は風魔法を使うことにしよう。


『トルネードカッター!』


今回は下向きの竜巻だ。


竜巻は地面に触れた瞬間、一気に広範囲に拡散して、火の勢いを強めた。


そして回り込もうとしていたゴブリンを、そのまま焼き尽くした。






















火が収まってくると、焼け焦げた大地と森の間で、驚きのあまり茫然と突っ立っているゴブリンたちを見つけた。


そして火の勢いが強くなりすぎたのか、新しく燃え移る前に燃えていた木が燃え尽き、森自体に対する被害は思ったよりも少なくできた。


『さて、森がなくなると火は効果が落ちるから、後はどうするか……』


「ハク、粘液爆弾で動きを止められない?」


『粘液爆弾?出来なくはないが……そうすると帰ってくれなくなるぞ?』


動きを止めてしまっては、ゴブリンたちが集落に戻ることも、進行方向を変えることもできなくなる可能性が高い。


今回の目的はあくまで足止め、もしくは進行方向を変えることなので、粘液爆弾はあまり使いたくない。


「大丈夫!私が斬るから」


カノンの口から出た言葉は意外だった。


カノンは確かに冒険者だが、数日前まではただの村人の子供だったのだ。


いきなり死と隣り合わせの生活になり、何故そこまでしようと思うのか、分からなかった。


「私、ハクに頼りすぎだと思うの……、戦いでも、ハクのスキルや魔法を借りてるし…回復もまかせっきり……だから、自分の力でもっと強くなって、ハクと一緒に冒険者をしたい!今なら経験を積むにはいい機会だから」


カノンはそこまで言うと、収納から魔法剣を取り出した。


「お願い!」


ここまで言われたら、何とかしてやりたくもある。


どうも俺は頼まれると嫌とは言えない性格なのかもしれない。


『分かった。援護と回復は任せろ。ただし、死ぬかもしれんぞ』


俺がそういうと、カノンは真剣な表情で頷いた。


覚悟の上ということだろう。


俺はカノンの両肩に、砲身を作り、そこから粘液爆弾を連射した。


ポポポポポポポポポポポポポポポポポッ!!


そんな音ともに打ち出される粘液爆弾。


それはゴブリン達の頭上に降り注ぎ、そのままほとんどのゴブリンの動きを止めてしまった。


とはいえ、動きが止まったのはあくまで粘液爆弾の射程範囲にいたゴブリンだけだし、後ろから無事なゴブリンが次々に現れるだろう。


『カノン!魔法で援護するから今のうちに行け!』


「分かった!」


カノンは急降下してゴブリンに迫る。


そして魔法剣で手近なゴブリンから順番に斬り捨てていく。


その間に俺は、高速思考を使いながらゴブリンの動きを観察、魔法が飛んで来たら相殺するか触手で防ぎ、矢が飛んできたときは触手で受けてそのまま収納に仕舞いこむ。


いや、意外と収納スキルがチートな気がしてきた。


収納には死んでいる者や、普通の物体は基本的に仕舞えるので、それを利用して自分に()()()()()()にしまい込めるのだ。


勿論欠点もあって、これを人がやろうとするとわずかに体に傷がつく。


触れてから収納発動までの間のわずかなタイムラグのせいだ。


しかし、スライムの触手でやれば問題はない。


スライムの触手は、実は分離や接合が簡単なのだ。


元々不定形なので当然なのかもしれないが、完全に切断されてさえいなければ、斬られようが穴を空けられようが自己再生なしで修復できる。


なので、カノンに当たる前に受け止めて、そのまま収納しているのだ。


しかし、手前のゴブリンが減れば減るほど、奥からは無傷の個体がやってくる。


流石に俺の処理能力も超えられるかもしれない。


「…クッ」


そんな時、カノンの口から苦悶の声が漏れた。


カノンの肩を矢がかすったのだ。


『カノン!すまん、すぐ治す!』


俺は慌てて高速再生で傷を塞ぐ。


「大丈夫!私の事は気にしないで!ここで頑張らないと、ハクに助けてもらうばっかになっちゃうから!」


カノンはそう言って新しく来たゴブリンの群に突っ込んでいく。


俺は魔法を優先して防ぐが、どうしてもカノンにも被弾が増えていく。


しかしカノンも立ち回りを覚えたのか、何とか急所への攻撃だけはそらせている。


カノンに矢が刺さっても、直ちに収納へしまい込み、そのまま高速再生を発動させているが、いつまでもつかもわからない。


このままではカノンは死んでしまうかもしれない。


俺はこの世界の人間ではないからこの世界の価値観が分かってないだけかもしれないが、カノンは何か必死すぎる気がする。


まあそれはこの戦いが終わってから考えることにする。


俺はカノンの後ろから迫っていたゴブリンに対して、カノンの背中から触手を二本出した。


一本の先にはサーベルボアの角を、もう一本にはカノンが最近まで使っていたバスタードソードを握ったゴブリンの手がある。


俺はこれで背後の敵を迎撃した。


さて、カノンとは後でじっくりと話し合わなくてはいけないな。


まあそれも、押し寄せてくるゴブリンの群をしのげればの話だが。







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