渾身の一撃
俺の全身に襲い掛かる衝撃波を物理無効スキルで防ぐ。
甲冑のままでは魔力消費が多すぎるので、表面に薄いスライムの膜を張っている。
これで衝撃波を凌いで、衝撃波が完全に収まったら形態変化を行う。
『カノン!行け!』
カノンに向かって叫びながら、基本形態であるドレスアーマーに変化する。
全身甲冑よりも視界が広いし関節の動きも阻害されにくい。
それなら霊装を解けばいいのではないかとも思うが、霊装を解除するよりもこのまま形態変化した方が早い。
「うん!」
俺の声に短い返事を返したカノンは、振りかぶった魔剣ハクティアをフロストギガース目がけて振りぬいた。
ドォォォンンン!!!!
それと同時に先ほどの衝撃波の比ではない爆音が響いた。
魔剣から放たれた衝撃波は、周囲に広がることなくフロストギガースに向かって収束していき、フロストギガースを貫いた。
ハクティアにこんな能力があったかは分からないが、一点に収束した衝撃の威力は伊達ではなく、フロストギガースは腹に風穴を開けて倒れ込んだ。
「はぁ…はぁ…倒した?」
カノンが息を切らせながら呟く。
『あぁ、流石にこれじゃ生きてないな』
耐性スキルを持っていても、腹に穴を空けていては生きていられまい……。
戦闘が終わったことを確認すると、霊装を解除して元の姿に戻る。
「あ!リーゼさん!」
その直後、カノンは寝かせたままのリーゼの元に走っていった。
リーゼの意識はまだ戻っていなかった。
しかし、腕は人の姿に戻っていた。
その腕は肘の当たりから炭のようになり、ボロボロと崩れていた。
「リーゼさん……」
そんなリーゼの姿を見てカノンは悲しそうな顔をする。
しかし……。
確かにあの衝撃波の威力は高かった。
もし人の体で正面から受けてしまえば粉々になってしまうだろう。
しかし、リーゼのように炭化したような状態になるだろうか?
あの攻撃を物理無効で正面から受け止めた時にあの衝撃波の正体が分かった。
あれは熱吸収スキルで集めた熱を体の表面にある霜に与えることで昇華させて水蒸気爆発をおこしていたようだ。
リーゼが巻き込まれた時は、直前の攻撃でリーゼの正面の霜はなくなっていたので爆発の直撃は受けなかった。
受けたのは周囲からの爆風だ。
そして、そもそも空気の膨張による衝撃なのだから腕が一瞬で炭化するような熱は持っていないはずなのだ。
しかも、竜化して耐久力も桁違いになった腕を……。
一体これは……どういうことだ?




