特攻
「……」
リーゼの左腕を見ながら何も言わないカノン。
そして、その後ろからは霜の再生を終えたフロストギガースが動きを止めた獲物を狙ってこちらに近づいてくる。
『カノン、後ろから…』
「うん。分かってる」
カノンは静かにそういうと、リーゼを雪の上に寝かせて立ち上がった。
しかし……。
カノンは疑問を感じる余裕もないだろうが、リーゼの腕に何か違和感を感じるのだが……。
しかし、違和感は一旦棚上げだな。
「ハク。霊装して物理無効」
短く口を開くと詠唱を始めたカノン。
……怖い。
けれど、フロストギガースに怒りが向いているわけではなさそうだ。
まぁ俺も、今回は後悔している。
カノン達の経験を積むことが優先だったし、それが出来そうな相手ではあった。
だからこそ、俺を召喚せずにカノンとリーゼの連携だけで攻めることにしたわけだが……。
情報の少なさというハンデを甘く見ていた。
そして、追撃しようとしてたリーゼを制止していたら……。
いや、この反省はこいつを倒してからだ。
カノンの指示から推測するに、あの衝撃波相手に正面突破するつもりか。
なら、ドレスアーマーでは防ぎきれないし普通の甲冑で隙間をスライムか何かで埋めるか?
俺が霊装の形態を考えている間にカノンは詠唱を終え、俺はカノンの前に召喚された。
そして俺は霊装を発動して甲冑に変身してカノンに装備される。
『カノン。一応隙間は少ない形にはしたし、残りの隙間もスライムで埋めるがどこまで威力を殺せるか……』
「大丈夫。一回だけ耐えてくれたらいいから」
魔力も出し惜しみなしってことだな。
カノンも一撃で決めるつもりか。
しかし、カノンだけの技でそんな火力なんて出せたっけ?
「行くよ!」
カノンはそういうとこちらに向かってくるフロストギガースに向かって駆けだす。
駆けながら魔剣に魔力を集めていくカノン。
何か今までよりも魔力の流れがスムーズな気がするが……。
いや、今はそんな事はいい。
フロストギガースは自分に向かってくるカノンを叩き潰そうと腕を上げる。
「グゥゥゥ!」
このうなり声、さっきの衝撃波の時と同じだ。
「ハク!」
カノンも気が付いたようだな。
何か力を溜めているような声。
さっきの攻撃のためにも見える。
フロストギガースは振り上げた腕をカノン目がけて振り下ろす。
しかし、カノンはそれを躱して魔剣を振りかぶっている。
ボン!
「っ!」
そしてカノンが魔剣を振りぬく直前、フロストギガースから衝撃波が放たれた。




