直撃の代償
「ハク!リーゼさんが!!」
リーゼが盛大に吹き飛ばされたところを見たカノンが取り乱す。
『分かってる!とにかく俺を召喚……って聞いてないか……』
カノンはフロストギガースの近くを駆け抜け一直線にリーゼの元に向かう。
『……ん?』
フロストギガースの近くを通った時、フロストギガースを覆っていた霜が完全に剝がれていて、それがゆっくりと再生していくところだった。
何で霜が全部消えてるんだ?
……いや、今はそれよりもリーゼだ。
「リーゼさん!」
段々と収まっていく雪煙の中に向かって声を掛けるカノン。
カノンが呼びかけている間にフロストギガースの様子を伺ってみるが、何故かその場でじっとしていてこちらに向かってくる気配は無い。
何故かは分からないが、とにかく今ならリーゼを探せる。
雪煙が収まると、雪から出ている刀の切っ先が見えた。
「いた!ハク!!」
『よし、任せろ』
緊急事態だ。
一番手っ取り早いのはスライムだな。
俺はスライムの何本かの触手を出すと、刀の周辺の雪に突き刺していく。
一本は刀に沿って奥にいるであろうリーゼ目がけて突き進み、他の触手で周囲の雪を収納に入れながら掘削している。
周囲のスライムを壁にして雪が崩れてこないように抑えつつ掘り返していくと、リーゼの顔が出てきた。
「リーゼさん!」
カノンが呼びかけるが反応はない。
息はしているので気を失っているようだ。
更に掘り返していくと、リーゼの全身を助け出すことができた。
「リーゼさん……」
カノンがリーゼを抱き起しながら悲しそうな顔をする。
リーゼは無事ではあった。
呼吸も安定してはいるし、命に別状はない。
だが、あの爆発のような衝撃波を至近距離で受けたのだ。
普通なら全身がバラバラになっているような威力だっただろう。
だが、竜人ゆえの強靭な身体、それに加えて竜化した腕で咄嗟にガードをしたことでダメージを減らすことに成功したのだろう。
だからギリギリ無事だった。
しかし……。
カノンの視線の先には、完全に竜化して肥大化し、肘の先からボロボロに崩れているリーゼの左腕があった。




