暗闇の先を
11階層で何度か戦闘をしたが、暗闇の中での戦闘は中々面倒だった。
しかし、全体的に見れば9階層までの方が大変だったかも知れない。
確かに視界が悪いことに変わりはないのだが、光属性の魔法で周りを照らしてしまえば雪との明暗差も生まれて魔物の保護色も意味を為さなくなってしまう。
因みに、ライトというこの魔法、光属性レベル1で使える基本中の基本なのだが、汎用性が高い。
明るさは懐中電灯程度、範囲も10メートル程度なのだが、月明かりもない状態では焚火よりも安定して周りを照らせるのだ。
それでいて、維持するのも難しくなく消費魔力も比較的少ない。
しかし、カノンの感知方法と併用できるかというと、あまりしたくないのも事実だ。
流石に魔法を維持し続ける状態は中々大変だが、感知に神経を使う必要がない分楽か?
いや、大変にはなったか……。
とはいえ……。
「さっきまでの感知は無理?」
『出来なくはないが、する必要もないな』
わざわざあの感知方法を使う必要はない。
あの感知も範囲は狭いし、見える敵に使うものじゃないしな。
「確かに……そうだね」
カノンが暗闇から向かってくるスノーウルフに向かって魔銃を向けて引き金を引く。
「キャン!!」
魔獣の一撃でスノーウルフは倒されてしまう。
そう。
結局、この階層の時点では10メートルの距離でカノンが敵を発見できれば十分なのだ。
「確かにここは見える分楽だね」
前の階層の時点で充分に戦えていたリーゼも、なんの問題もなく戦えているし、むしろこの階層でもなんのハンデにもなっていないのではないだろうか?
「……後ろから3体」
「了解!」
リーゼの言葉でカノンが魔銃を後ろに向ける。
そして、そのすぐ後には3匹のスノーウルフが灯りに照らされた。
うん。
リーゼのスキルに頼らない感知能力はこのエリアでも健在だよな……。
結局、リーゼが見つけてカノンがそれを魔銃で撃ちぬくだけの単純作業だ。
相性がいいというのもあるのだろうが、これは……。
いいのか?




