11階層
結局、11階層へと続く道は時間経過で現れた。
カノン達が下りてきた場所のすぐ前の雪が段々と沈んでいき、下層へと続く階段が現れたのだ。
……いや、凄い仕掛けなのだけれども……。
『これ、帰りはどうなるんだ?』
俺たちは11階層へと続く階段を下りていた。
降りている途中で気が付いたのだが、これ、戻るときにここを上っても出るのは雪の下なのではないのだろうか?
流石に沈んだら終わりの雪の中を泳ぎたくはないぞ?
「あ、11階層から戻るときは10階層の入り口の近くに出られるみたいだよ」
メモを片手にリーゼが説明してくれた。
一本道でルートが変わるとかどんな仕組みなのか……。
いや、それはこの際いいか……。
「因みに、6層から5層でも同じで、5層の入り口の近くに出られるみたい。だから出た瞬間クリスタルトレントに潰されるなんてことはないみたいだよ」
そうなのか。
クリスタルトレントに関しては、足元に階段があっただけで完全にふさがれていたわけではなかったし、頑張って脱出するものだと思っていた。
どうやらそこまで鬼畜仕様ではないらしい。
そんな事を考えていると、階段の終わりが見えてきた。
しかし、今までとは違い出口が明るくない。
今までは、一面の銀世界が出迎えてくれたおかげで階段の出口は明るかったのだ。
しかし、見えてきた出口は暗い。
「これ、さっきまでと違う?」
「うん。そうみたい。この先は夜みたいらしいよ」
カノンが首を傾げ、リーゼが説明してくれた。
リーゼが手に持っているメモ書きをこちらに向けてくれた内容によると、この先は基本的に6階層から9階層までの間の焼きまわしのような階層らしい。
地形も気候も、出てくる魔物も同じような感じらしい。
しかし、唯一違うのが、夜のように暗いという事だ。
だから、ただでさえ保護色で見えずらい敵がさらに視認しにくくなっているそうだ。
なるほど。
この迷宮を上層、中層、下層に分けるとする。
上層は氷の洞窟。
中層は雪原。
そして下層が夜の雪原。
段々と敵が視認しずらく、さらに周りの状況も確認しにくくなっていっている。
この迷宮は敵の強さを上げて難易度を上げているのではなく、環境を変えることで難易度を上げているという事か。
そんな事を考えている間にも、階段が終わり、真っ暗な雪原が俺たちを出迎えてくれた。




