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ゴブリンの集落

ゴブリンの気配のする方に少し飛ぶと、森が開けた場所が見えてきた。


そこにはあばら家のような簡単な家が立ち並び、人の住む村のようにも見える。


しかし家の周りにいるのは間違いなくゴブリンだ。


集落の周りには柵や壁はないが、何か所かに見張り台が建てられており、一か所につき2匹のゴブリンがいる。


「これがそうかな?」


『間違いないだろ。しかし……よくこんな物作るよな』


俺の言葉にカノンも頷く。


「ゴブリンって意外と頭いいんだね。ハク、連絡するね」


カノンはそう言って魔道具に魔力を流し始めた。


「カノンです。ゴブリンの集落を見つけました」


《カノンさん、早いね。で、場所はどうだい?まっすぐ南で大丈夫かい?》


水晶からロンの声が聞こえてくる。


「いえ、少しだけ西に逸れています。目印は……」


カノンがそう言って周りを見渡す。



因みにここから町まではそんなに離れていないので、町を囲む壁はしっかりと見えている。


高度を上げればその下にいる冒険者たちも見つかるだろう。


《カノンちゃん、俺たちからは目印も見えるかわからねぇ、少し乱暴だが、空に向かって魔法撃ってくれ。それを頼りに進むからさ》


《ロイド君!何馬鹿なこと言ってるの!?そんなことしたらこれから襲撃に行きますって宣言するようなものだからね?》


《けどよ~、そうでもしないと俺たちの場所からはカノンちゃんの場所すら分かんないんだよ!》


なにやらロンとロイドの言い争いに発展しそうな勢いだ。


「あの、私がもっと高く飛べば見えますか?」


カノンも同じ考えだったのか、思わずといった感じで口を挟んだ。


《あ、あぁ、そうだな。でもカノンちゃん、大丈夫なのか?》


「はい、今から高度上げますね」


カノンはそういうと、翼をはばたかせて高度を上げて行った。


そして俺たちからも門の下にいる冒険者が見えたころ、ロイドから連絡が入った。


《カノンちゃん、しっかり見えたぞ。しかし、ずいぶんずれてるな》


確かに角度的には大したことないのかもしれないが、距離があるので離れて見えるのだろう。


《カノンさん。集落があるのはその真下でいいのかい?》


「はい。この真下にゴブリンの集落があります」


《そうか……ロイド君。カノンさんがいる場所は覚えたね?》


《あぁ、方向感覚スキルを持ってるやつらがしっかり覚えた。問題なくたどり着けるぞ》


なんでロイドが得意げに言ってるのだろう?


《なんでロイド君が偉そうにしてるのか分からないけど……、カノンさん、念のため、門からまっすぐ南に言いった場所も見に行ってくれますか?》


「分かりました。このまま向かいます」


カノンはそう言って滑空しながら言われた場所に向かう。












「ねぇハク、なんかギルドマスター焦ってなかった?」


さっきのロンは少しだけ声が上ずっていた。


カノンもそれに気が付いたようだ。


『あぁ、最悪の事態を考えたんだろうな』


俺がそういうと、カノンは首を傾げた。


「最悪の事態?」


『そうだ。一番ましなのは、調査をしていた冒険者の勘違いってことだ。これなら場所が少し変わっただけで大した問題はない。次にましなのは、報告が適当だった。つまり大体の方角だけを報告したんで、距離があるせいで場所がだいぶずれたってことだな。で、ここまではいいんだが、もう一つの可能性には問題があるんだ』


「もう一つ?今までのは冒険者の報告ミスだよね?もしそうじゃなかったら……え?」


カノンははっとした顔をした。


多分気づいたんだろう。


『そう、最悪の事態は、集落が二つ以上存在することだ』


元々俺たちは、気配察知でゴブリンの気配を探しながらあの集落を発見した。


しかし、もし普通に探した場合、まっすぐに南に飛んでいた場合にも集落を見つけた可能性がある。


そしてその場合、さっき見つけた集落は、新しく見つかったものだということになってしまう。


その場合は、元々発見されていた集落はそのままのはずだ。


そうなると、町への危険度は一気に跳ね上がってしまう。


「その状況って、確かに最悪だね……」


カノンも思わずそう漏らす。


『あぁ、しかもその場合、どっちかを後回しにするか、同時に叩くか選ぶ必要があるんだが、もしかするとあまり猶予はないかもしれんな』


俺の気配察知に反応があった。


さっきの集落よりも濃いゴブリンの気配だ。


『カノン!これは少しまずいぞ!』


俺がそういうと、カノンも気配察知を発動したらしく、一気に顔が険しくなった。


そして前方に、森が切り開かれた場所が見えてきた。


広さはさっきの集落の3倍ほど、つまり、最低でも3倍近い数のゴブリンがいるはずだ。


「見えたけど……これは流石に……」


ようやく目視できる距離まで近づいてきたが、その光景には絶句するしかない。


村の様子が見えてきたが、ゴブリンの密度はさっきの集落の比ではない。


さっきのは、もしゴブリンを人間に置き換えたとしてもあまり違和感のない数だったのだが、ここでは数倍の密度になっている。


町の市場のような人混みを、丸々ゴブリンに置き換えたら分かりやすいか。


しかもなにやら、武器を持って広場のような場所に集まりだしている。


「カノンです。集落がありました」


カノンはすぐにロンに連絡を入れる。


《やはりあったか……》


魔道具越しにも、頭を抱えるロンの姿が見えてくるようだ。


《で、どうだい?》


「はい、規模は……」


『広さは向こうの3倍ほど、数は……最低でも10倍以上』


「広さが3倍ほど、数は最低でも10倍以上です」


《10倍?じ、冗談だよね?》


心なしかロンの声が震えているような気がする。


《ギルマス!こっちはもう到着するぞ!行先変えるか?》


割って入ってきたのはロイドだ。


なるほど、ロイドたち冒険者は最初の村に到着するということか……。


しかし、もしこのまま戦闘になれば、こっちに応援を寄越す余裕はなくなるだろう。


『カノン、ゴブリンの様子を伝えた方がいい気がする』


「分かった……こっちのゴブリンなんですけど、武器を持って広場に集まってます」


《か、カノンさん……》


この声はロンかな?


声が震えていて分かりにくい。


《カノンさんはそのまま上空から監視をお願いします。もし、万が一その集団が町の方に向かって動き出したら、出来る限りの足止めをお願いします》


《ギルドマスター!カノンちゃん一人では無茶ですよ!》


イリスが会話に割り込んできた。


《分かっています。カノンさん。上空から攻撃して、ゴブリンを散らすだけでもいいです。そのゴブリンの動きはまずいです!》


ロンの説明によると、ゴブリンが集まっているということは、狩りに出ると考えるのが普通だという。


ただし、ここまで規模が大きくなってしまうと、この森だけでは食料が集まりきらず、町にまで押し寄せてくる可能性が高いそうだ。


そして、町の方に動き出してしまったら、距離からして間違いなく町まで来てしまうとのことだ。


《ロイド君!その集落は後回しで結構です!カノンさんがいる集落を先に片づけます!》


《いや、それは無理だ……。こっちも見つかっちまって、すぐに戦闘になる》


ロイドの答えで、状況はかなりまずいと言うことが分かった。


多分さっきの集落のゴブリンを全滅させない限り、ロイドたちはこっちには来れないだろう。


それまでここのゴブリンたちが大人しくしていてくれればいいが、そうはいかないはずだ。


《ロイド君たちは、出来るだけ速やかに全滅させてください。カノンさん。もしゴブリンに動きがあれば、すぐに連絡をお願いします。町の方に移動を始めた場合、すぐに報告と、出来る限りでいいので攻撃をお願いします》


「分かりました。このまま監視します」


カノンはそう答えると、広場の方に視線を戻した。


まだゴブリンたちは続々と集まってくるので、しばらくは大丈夫そうだ。


集まるのに時間がかかればかかるほど、危険になっていく気もするが…………。





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