自分の正体 ~俺は世界最弱でした~
木の上に戻ると、俺はさっきスライムを確認できたステータスを自分に出せないかやってみることにした。イメージは自分自身に対してステータスを出すように念じる感覚だ。すると……
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種族・キメラドラゴン 名称・???
HP・8 MP・8
スキル
鑑定・同化・捕食吸収・触手伸縮・自己再生・魔装(使用不可)
固有スキル
キメラ・スキルテイカー
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……とりあえずスキルの事とか色々言いたいことはある。しかしその前にどうしても言っておかなくてはいけないことがあった。
「俺のステータスはスライム以下かよーーーーーー!!!!!!!!」
まさかのスライム以下であった。しかもスライムですら2桁はあったのに……、俺は一桁である。
泣いてもいいかな?
気を取り直して……、このステータスを見たりできるのは鑑定というスキルのおかげだろう。とりあえず項目の詳細を順番に見ていくことにしよう。
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キメラドラゴン
最弱のドラゴンと呼ばれている。初期ステータスも低くブレスも吐けない為、殆どが生まれてすぐに死んでしまう。しかし運よく他の生物を捕食できた個体は捕食した生物の能力を自分の物にできるため、過去には最強クラスのドラゴンに至った個体も存在する。
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最初の文章で心が折れて、後ろの文章で応急処置された気分だ。
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鑑定
対象となる物を鑑定する。レベルが上がるとスキルのレベルや自分以外のスキルの効果なども確認できるようになる。
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おおよその予想通りといった所だった。スキルのレベルが確認できないのは俺の鑑定のレベルが足りないからだろう。
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同化
他の生物や物質と同化する。
捕食吸収
食べたものの能力値の一部を自分に還元できるようになる。
触手伸縮
触手を最大10倍の長さと体積まで伸ばせる。スキルレベルが上がると最大値が増える。伸ばす距離が長いほど魔力を消費する。
自己再生
傷や欠損などを再生する。再生速度はスキルレベルに左右される。
魔装
使用不可のため詳細不明
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魔装の詳細が分からないのは鑑定のレベルのせいだろう。しかし、同化・捕食吸収・触手伸縮・自己再生はたしかさっきのブルースライムが持っていたスキルのはずだ。固有スキルにスキルテイカーってのがあるみたいだし、スライムから奪ったとみて間違いないだろう。
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キメラ
キメラと名の付く種族の固有スキル。倒した相手の情報を取り込みステータスの一部を自分に還元し、自身の全部、もしくは一部を取り込んだ相手の姿に変えることができる。この能力で変化した場合、元となった物の能力を行使することができる。また魔素の触媒となる物を取り込むことで、ステータスが上昇する。
スキルテイカー
倒した相手のスキルを取得できる。すでに持っているスキルの場合、経験値に変換され一定量たまるとスキルレベルがUPする。
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固有スキルにとんでもないのがぶっ込まれてた。おそらくキメラドラゴンとは倒した相手の能力を取り込める代わりに初期ステータスが悲しいことになっているのだろう。このステータスは下手をすると世界最弱な予感がする。しかし、もし強い相手を倒せた場合は一気に強くなれるような存在なのであろう。
……普通に考えれば力押しでスライムに負けるようなステータスだから、生き残る個体なんて基本いないのだろうが……
そしてやっぱり見たことのあるスキルは『スキルテイカー』のおかげだった。気になるのが『キメラ』のステータスの一部を取り込むという能力だが、もしかして俺の初期ステータスは8よりも低かったのではないのだろうか?考えたくはないがありえる。本当に世界最弱を名乗れるかもしれない……
笑えねぇ…………
そういえばさっきの戦利品であるスライムコアって鑑定できるのか?
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スライムコア
スライムの核となっている器官。純度は低いが魔素の触媒として使え、キメラのスキルを持つ者が食べることでHP、MPを5アップさせる。
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いきなりステータスが1.5倍にできるな。もしスライムを狩り放題になればかなりのパワーアップができそうだ。とりあえず食べておくか。
食べた感想?水に寒天を混ぜて固めたようなものだったよ……
とりあえずは新しい能力の確認をしてみるか……。そうすれば意外と戦えるようになっているかもしれないし……。スライムだけど……
という訳で先ずはスキル・キメラの変身能力を使ってみよう。全身をスライムの姿に変えるイメージをすると、いきなり俺の視界が暗転した。
(ちょっ!!何だこれ!?)
しかも声も出せない。よく考えてみるとスライムには目も口もないのだから当たり前かもしれない。しかしそうなるとあのスライムはどうやって俺を認識していたんだ?
考えてもわかりそうにないのでとりあえず変身を解除した。そのとたん視界が開け、体が元に戻ったのを感じる。
「やっぱり視覚は偉大なんだな……」
そんなことを考えながら、今度は腕の先の部分をスライムに変化させてみた。
すると肘より先がスライムのようになった。
俺はそれを少しずつ手を伸ばすように前に伸ばすイメージをすると、ゆっくりとスライムの腕が伸びた。10センチほど
これでは腕全体を変化させたとしても元々小さな腕では大した距離にはなりそうにはない。
「せめてもう少し遠くまで伸ばせれば戦いにも使えるんだけどな~」
確かにかなり便利な能力ではあるが、全身を変化させると視界がなくなり戦いどころではない。かと言って腕だけでは大した距離にならないし、触手伸縮を使ったところで1メートルだ。しかも魔力を消費するにしてはあまり有効とは言えそうにない。もっと大きな面積をスライムにできればいいのだが……
そんなことを考えていると、視界の隅に翼が映った。
「これだ!」
そう、翼ならかなりの大きさがあるし、薄いとはいえある程度の厚みもある。しかもこれなら木を登っていようが手に何か持っていようが、滑空中以外ならいつでも使用可能だ。試してみる価値はある。
早速俺は翼をスライムに変化させてみた。思った通り腕だけよりもかなり多いスライムの体になった。そしてそれを限界まで前に伸ばしてみた。すると今度は50センチほど伸ばせるようになったではないか。
「これはいける。さらに触手伸縮発動だ!」
そのまま触手伸縮を使ってみると同じ太さのまま5メートルほどにまで触手が伸びた。これなら戦闘にも使えそうだ。心配なのはどれくらいの魔力を使ったのかということだが……
(俺のMPだけ見えたりしないかな?)
そんなことを念じながら鑑定を使うと…
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MP・8/13
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あっさりできた。しかし全力発動で半分近く持っていかれてしまった。多分連戦はやめた方がいいだろう。
しかしこれで新たな戦略もとれるようになったわけで、ようやく生き延びる目途が立ちそうだった。