本領発揮
「ガウ!」
『邪魔だ!』
飛びかかってきたスノーウルフをマンイーターの蔓で捕まえて投げ飛ばす。
6階層も4階層と同じでスノーウルフの群が出てくる階層だったのだが、その脅威は4階層目と比べものにならない。
4階層は氷におおわれた洞窟で、スノーウルフの保護色が機能していない所か目立っていた。
しかし、ここは銀世界。
保護色がその実力を全力で発揮してしまっているのだ。
しかも、迷宮の中で感知系のスキルがいつもより鈍い。
そのせいで隠れたスノーウルフの場所を探すだけで手間だ。
「スキルに頼りすぎてたかも……」
目の前に迫ってきたスノーウルフを魔銃で狙撃しつつカノンが呟く。
確かに、スキル以外に素の能力を鍛えるべきだったかも知れない。
そう思うほど、俺たちの動きはいつもより鈍かった。
それに対して……。
「はぁ!」
カノンから少しだけ離れた場所でスノーウルフを切り裂いていくリーゼは、感知系のスキルのハンデを物ともしていない。
今、この場で一番実力を発揮できているのはリーゼだ。
その姿を見ていると、スキルが使いにくいなんていうい言い訳をしている場合じゃないと思い知らせてくれるな……。
そもそもスキル以外にも戦う手段はあるのだ。
その手札を試すまで、本気を出したとは言えないな。
考えろ。
まず、機能制限のある能力は感知系のスキルだけ。
それ以外のスキルに影響はない。
つまり制限されているのは隠れている敵を見つけ出す方法だけで、それ以外の、例えば攻撃とかには何の影響も出ていない。
ならば、どうにかして探せばいい。
鑑定?
いや、駄目だ。
マンイーターはあくまで木に擬態していたから鑑定で見破れただけで、雪に紛れているだけのこいつらの正確な場所はつかめない。
かと言って、手あたり次第というのも、雪一色のこの場所では危険だ。
下手に雪を巻き上げて視界を狭めれば不利になる。
「ハク」
俺がどうするか考えていると、カノンから声を掛けられた。
『どうした?』
「私がやってみる」
カノンはそういうと、目を閉じて魔銃を構える。
一体何を?
「……そこ!」
「キャン!」
カノンが目を閉じたままスノーウルフを狙撃する。
カノンが目を閉じて5秒ほどで、完全にスノーウルフの位置を掴んでしまった。
正し、魔力がゴリゴリと減っているが……。
「……これで全部……かな?」
そんなカノンの呟きが聞こえた次の瞬間。
カノンが魔獣を連射して次々にファングウルフをしとめていく。
そして、魔銃を下ろしたカノンは目を開けた。
「うん。これで全部じゃないかな?」
「……確かにそうだけど、何したの?」
途中で獲物がいなくなってしまったリーゼが困惑しながらカノンに聞く。
『魔力ががっつりと持ってかれたのは分かったが……』
「えっと……まず音を聞いて大体の場所を見つけて……で、魔力をその方向に流して探した?」
俺とリーゼの質問に疑問形が返ってきた。
え?
どういうことだ?
魔力を流した?
スキルじゃなくて普通に流しただけ?
何でそれでスノーウルフの位置が分かったんだ?
「カノン、ごめん。どういう事か全く分からない」
俺と同じように頭を抱えていたリーゼがカノンに言う。
「あ~、なんて言ったらいいのかな?魔力が魔物に当たったら弾かれるから、それで?」
なるほど。
今ので何となくわかった。
要するにソナーだ。
しかし、そういった知識なしによく思いついたな……。
カノンって、本気を出すと凄いのか?




