魔剣の代償
フレイムスネークを直撃した炎は、そのままフレイムスネークを焼き尽くした。
俺のフレイムアローを当てた段階での様子から、火属性の魔法でも効果があるのは確認済みだ。
多少の耐性は持ってはいたが、それでも魔剣の風で増幅された炎に耐えることはできなかったようだ。
高火力によって香ばしい香りを放っているフレイムスネーク。
しかし、真っ黒になっているわけではなく、多少焦げているだけだ。
まぁ、火を使う魔物相手に火で挑んだのなら上出来だろう。
「ふぅ……難しかった……」
大きなため息を吐きながら魔剣を収納に仕舞うカノン。
その額には脂汗が浮かんでいる。
それに、よくよく観察してみるとカノンの体を巡っている魔力の流れが荒れている気がする。
魔剣と魔法剣。
魔力を流した時の負荷が違うのだろうか?
もしくは、自分の魔力を流せないカノンならではの弱点だろうか?
「ははっ!初めてでそれだけ扱えりゃ上出来だよ。アリエルも進化したての魔剣相手に苦労してたってのに」
そういいながらシルフィードがカノンの肩に手を置き魔力を流す。
すると、カノンの体を巡っていた魔力がいつも通りに戻った。
「……ふむ、思った以上に魔力の扱いが上手いんだよな」
「えっと……ありがとうございます?」
何をされたかまでは分からないまでも、不調を治してくれたことは分かったカノンはシルフィードに礼を言う。
『……今のは何だったんだ?』
「別に大したことじゃない。魔剣ってのは魔力剣とは魔力の扱いが違う。魔力剣は魔力を込めるだけだが、魔剣は魔力を流して剣の中で循環させるんだ。まぁ、それ自体が中々に難しいはずなんだが……こいつは普通に出来てた。余程魔力の扱いが上手いんだろうな」
あぁ、そういえば魔力制御スキル、気がついたらレベル3になっていたんだよな……。
初めて会った時に鑑定したアイリスのレベルが2だったし、スキルレベルで言えばカノンの方が上になったんだよな……。
「でだ、魔剣を扱う場合は魔剣の中の魔力の流れに意識が向くから自分の中の魔力の制御が乱れやすい。それでも普通に使う分には問題ないが、さっきみたいに難易度の高い魔力操作をすると自分の中の魔力が不安定になるんだよ。でも、普通は自分の魔力を魔剣に流してるし、その延長で制御してすぐに収まるんだが……」
あぁ、そういう事か……。
『カノンが魔剣に流していた魔力は俺の物だ。つまり、その間カノン本来の魔力は宙ぶらりんで放置されていたって訳か』
「そういう事だ。しかもお前の魔力をガンガン魔剣に流し込んでいたから、こいつの魔力も多少だが引っ張られてたんだ。そのせいで魔力が乱れてたんだよ」
そういう事か。
そして、恐らくカノンは魔力が乱れるという経験が少ないはずだ。
何せ、自分の中の魔力が少ないから制御が簡単なのだから。
だから、一度乱れてしまうと中々もとに戻せないのだろうが……。
「ま、普通はもっと影響を受ける。自分の魔力を流したとしても初めてはもっと魔力が荒れる。お前ならあと何回かやれば完全に制御できるだろう」
「はい。頑張ります」
「それと、何回かは魔力をお前が正してやれよ?」
『あぁ。勿論だ』
さっきシルフィードがやるのを見ていたから問題なく出来るだろう。
元々魔力の繋がっているカノンと俺だ。
魔力の流れに干渉する程度はカノンの魔力制御スキルを借りればどうにでも出来る。
しかし……シルフィード、俺もカノンもお前呼びなおかげでどっちを呼んでいるのか区別がつかん……。
如何にかしないと……。




