三階層
二層から進むことしばらく、通路の真ん中にあった三階層へと進む階段を下りて三階層目に到着した。
というか、なんだこの変な階段は……。
何をどうしたら何もない通路のど真ん中に穴を空けてその中に階段を作るのか……。
っと、そんな事は置いておいて……。
三階層目は、二階層目と壁の外見などは変化していない。
しかし、大きく変わっている所が一つある。
それは二階層目までは広めの通路だけの構造だったのが、大きな空間と狭めの通路というような、明確な部屋分けのされているような空間になったのだ。
まぁ、あくまで通路で区切られただけなので隣の部屋の様子も多少は見えるし、攻撃も出来る。
まぁ、通路の幅は3メートル程度しかないので部屋を越えて戦う事はないだろう。
寧ろ、そんな面倒な事をするなら普通に戦うか敵の有無を確認して厄介そうなら避ければいいだけだな。
そんな事を考えつつ、進む方向をカノンが確認していた時だった。
「……あれ?何か聞こえない?」
俺たちがいるのが上からの階段のある部屋。
その隣の部屋から、確かに何か聞こえてくる。
何というか、走り回るような音と、這いずるような音。
『……確かに聞こえるが……』
気配察知が中途半端にしか仕事をしないのではっきりしたことは言えないが、追いかけっこをしているような感じか?
「どうしよう?見に行った方が良いのかな?」
「いえ、迷宮じゃ他の冒険者の戦闘に割って入るのはまずいから無視するのが一番?」
リーゼが冷たい事を言っているように感じるかも知れないが、迷宮に潜っている以上仕方ない。
とはいえ……、それはあくまで助けを求められなかった場合だ。
「様子を見に行くのはありだと思います。その時に冒険者が優勢だったらそのままでいいかと……」
『そうだな。このまま放っておくのもな……』
別にそれでもいいと言えばいいのだが、なんかカノンが後に響きそうだし……。
というわけで、隣の部屋に伸びている通路を通って部屋の入り口まで来てみたのだが……。
「走れーーーー!!!死にたくないのなら全力でだ!!」
「はいーーーーー!!」
そんな事を叫びながら全力疾走する20代だと思われる男女。
そして、その後ろから追いかけてくる巨大蛇。
……よかった。
見捨てなくて……。
「……どうしよう?助けた方が良いのかな?」
『まぁ……普段なら助ける所だが……』
「迷宮だしね……ってかあれ何?」
カノンの隣で呆れたような口調で言うリーゼ。
『……フレイムスネーク。火属性を持ってる蛇だな……』
「何でこんなところに?」
鑑定結果を伝える俺にカノンが首を傾げる。
確かにこの場所には不釣り合いな魔物だな。
もしかして、レアな魔物か?
「……この迷宮に居た記憶がないのですが……」
アンナが首を傾げていることからして、普段はここに居ない魔物か?
「外から迷い込んだのか、誰かが連れてきたのか……」
『迷い込むって事は流石にないだろう……。だから誰か、テイマーとかが連れてきた魔物かと思ったんだが……』
こいつに従魔の項目はないから違うのではないだろうか?
っと、そんな事を考えていると、逃げまどっている二人のうち、男の方とカノンの目が合った。
「……君たち!助けてくれ!!」
俺たちに気が付くなり叫ぶ男。
潔いな……。
まぁ、その方が楽でいいか。




