迷宮の説明
新しいスキルの検証をしてから二日後、ついに迷宮へ入るための許可証の準備が出来たらしい。
ギルドで許可証を受け取ったカノン達は、そのまま別室に通されて迷宮についての説明を受けることになった。
新しい冒険者が来るたびに別室で説明をしているのかと驚いたが、どうやら普段は受付で行うらしい。
しかし、カノン達の場合は少し状況が違う。
カノン達がここの迷宮に潜るのは実績を得るため。
元々能力は問題ないが、実績がないためレセアールの迷宮の調査を行えない状況を解消させるためだ。
なので、特別に迷宮についての説明をしてくれるらしい。
その為、アンナは同席を断ってホールで待っている。
そして、案内してくれた受付嬢が退室してすぐ、別の職員が入ってきた。
受付嬢よりも少し歳のいった女性で、恐らく事務職のまとめ役のような人だろう。
「初めまして、ここの事務員をしているマリーです。カノンさんとリーゼさん、お二人は迷宮攻略の実績が大至急必要とのことですので、迷宮についての情報もお伝えさせていただきます」
そういいながら壁にある黒板のようなものに何かを書いていくマリー。
そこには、迷宮とは、と書かれている。
あ……そこからなのね……。
そうして始まった授業は要点を抑えた分かりやすい物だった。
結局、迷宮というのは地下に向かって広がっているダンジョンなわけなのだが、ゲームとかであるように綺麗に階層ごとに分かれていたりするわけではない。
しかし、正確には分かれていないわけではないのだが、明確な区切りというものは付けられないというわけだ。
とは言っても、ギルドとしては階層を分けなければ不便なわけで、どうにか無理やりにでも区切るしかない、
ではどうやって分けているのか?
基本的には階段や急な坂道などで区切られるが、魔物の動きを利用して区分けしているらしい。
魔物は、例え獲物を追いかけていたとしても一定の範囲から外には動かないらしい。
何故か、それは丁度階段だったり坂道の途中だったりするようで、そこを境として見て、階層分けをしているようだ。
だから、一見すると一つの階層に見えても境目が存在して二つの階層になっていたり、階段を下りても階層が変わらないという事もあり得るようだ。
その場合、特に後者の場合は魔物から逃げ切れると思ったら普通に追いかけられたという事にも成り得るので、基本的に迷宮内ではギルドの販売している迷宮の地図を確認する必要がある。
ただし、階層分けなのか単なる縄張りなのか区別がつかない場合もある。
例えば、ゲームで言う所のボスのような魔物が陣取っている場所もあるらしい。
その魔物を階層主といい、階層主がいる階層は階層主の部屋があるだけのパターンと次の階層に進むための通路を塞ぐように階層主が陣取っているパターンの二種類があり、どちらにしても階層主の前後ではゲームの別エリアのように全く別の生態系を築いているらしい。
つまり、ボス部屋を境に魔物もがらりと変わることがあるということだな。
いかにもゲーム的ではあるが、しっかりとした理由もある。
階層主、ボスはその前後の魔物より数段強くなっている。
そんな生態系の頂点のような魔物が鎮座しているせいで、一つの階層が二分されているのではないかと言われ、今でも研究が続いているようだ。
因みに、階層主が倒された場合はどうなのか?と思うのだが、これは殆どのダンジョンに言えることではあるのだが、魔物は基本的に無限沸きとなる。
沸く速度に限界はあるのだが、それでも基本的に倒されても新しい魔物が沸くという事だ。
階層主も同様で、倒した瞬間という事はないものの、最短で10分程度、基本的には一時間程度で復活するらしい。
そして、一番大事なことなのだが、基本的に魔物と戦っている他の冒険者を見かけても、助けを求められるまでは手出しをしてはいけない。
要するに戦ってその素材を集めるのは早い者勝ちというわけだ。
手出しをするのは獲物を横取りとみなされる場合もあるらしい。
こういった話は確かに初めて迷宮に入るには必要な情報だな。
この説明をするのとしないのでは迷宮内の安全にかかわりそうだ。




