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犯罪者の処遇

ギルドに到着したカノンたちは、空き部屋に連れていかれ、そこでギルドの職員に今日の事を説明した。


マリアも別の部屋で説明をしているはずであり、二人の話を合わせて事実だと確認するようである。


因みにマリアの仲間二人はギルドで依頼達成の報告をしていることろをロイドに捕まり、別室に連れていかれた。


その時に二人は抵抗したので、かなりの人数の職員と冒険者が同行することになり、下手をすれば修羅場になっている可能性が高そうだ。























カノンが説明したのは、マリアを含めた三人がゴブリンに追われているところから、マリアと一緒に捜索を始め、残りの二人を逃がすためにゴブリンに挑んだことまでだ。


その後の二人の事はロイドが説明してくれるだろう。


カノンの説明を聞いていたギルドの職員は、段々と顔が険しくなっていき、カノンに情報の礼を言うとすぐにどこかに行ってしまった。


カノンには、もう帰ってもいいと言っていたので、カノンは今日の収穫分を納品すべく、受付によっていた。


「はい。ではこれが薬草の納品分の代金となります。そしてこちらがゴブリンの討伐報酬となっています」


受付嬢が差し出したのは600ゴールドだ。


ゴブリンは、討伐の証明部位は角で1匹あたり20ゴールド。


2回目の戦闘では森が火の海になってしまったので、ゴブリンも消し炭となってしまった。


なのでマリアを助けた時の戦闘で倒したゴブリン20匹分の角を納品したのだ。


これで400ゴールド、そこに薬草の常時依頼の分が200ゴールドとなった。


因みにこれは、Eランク冒険者の半日の稼ぎとしてはそこそこといった金額のようだ。


慣れてくると、もっと効率よく薬草を探せるようになるので、一日で約1000ゴールドが、Eランクとしては最高クラスの稼ぎになるらしい。


普通は一日で大体500ゴールドくらいらしいので、稼ぐ金額としては十分と思われる。



「ありがとうございます」


カノンはお礼を言ってからお金を収納スキルで収納する。


ある意味一番安全な財布だろう。


「ではこれでこちらの手続きは以上となります。本日の事につきましては、二人の処分が決定次第カノンさんがギルドにいらした際にお知らせいたします」


「はい、ありがとうございます」



そういってカノンはギルドを出て行った。




























それから数日、カノンは毎日のようにギルドに通い、依頼をこなしていた。


とはいっても、カノンも今の段階で討伐依頼を受けたりはしていないので、実入りはそんなに良くはない。


精々一日で300~400ゴールド程度だ。


しかしそれでも十分ではある。


そんな事をしながら7日ほどたって、カノンがギルドに顔を出すと、ホールにはマリアがいた。


ここ数日、まったく姿を見なかったので少し心配していたのだが、大丈夫だったのだろうか?


「マリアさん!」


カノンはマリアを見るなり駆け寄っていった。


「カノンさん。今まで連絡もせず申し訳ありません」


マリアはカノンに軽く頭を下げる。


「ですが、時間はかかってしまいましたが何とかパーティを抜けることができました」


「マリアはそう言ってギルドカードを見せてくれた。


そこにはFランクの文字が浮かんでいる。


パーティを抜けたので、マリアの場合は仕方ないだろう。


「と言っても、そのランクも今から上げるんだけどな」


ふいに横から声が聞こえてきた。


カノンとマリアがそちらを見ると、ロイドが近づいてきていた。


「ロイドさん。おはようございます」


「おう、おはよう。今からこの嬢ちゃんの試験だからな。嬢ちゃんの実力なら間違いなく合格だ」


ロイドの話では、パーティについての話し合いと並行して、戦闘の訓練もしていたようだ。


なのでマリアはカノンと会う時間が取れなかったらしい。


「そうなんですね?マリアさん。頑張ってください」


「はい、絶対に合格して、あいつら二人に見せつけてやります!」


「じゃあカノンちゃん。また後でな」


ロイドとマリアはそう言って訓練場の方に行ってしまった。


「あの、カノンさん」


すると話が終わるのを見計らったように、受付嬢がカノンに声を掛けてきた。


「はい。どうしましたか?」


「この間の盗賊たちの処遇が決定しましたので、その件についてギルドマスターから話があります。お手数ですが、ギルドマスターの部屋までお願いします」


「分かりました」


カノンは返事をするとギルドマスターの部屋に向かった。


















ギルドマスターの部屋に入ると、ロンが出迎えてくれた。


「カノンさん。態々申し訳ない。普通の盗賊ならこんなことしなくてもいいんだけど、今回はギルド職員が絡んだことだったからね」


ロンはカノンに対して軽く頭を下げると、盗賊たちのその後について説明してくれた。


盗賊三人は、犯罪奴隷として鉱山に売却されることになった。


そして一人当たり金貨10枚、つまり100000ゴールドとなり、その7割が捕まえた冒険者に支払われることになるらしい。


因みにこれは、鉱山行きの場合で、それよりも罪が軽い場合は少しはましな待遇となり、売却額も下がるらしい。


冒険者の取り分の7割というのは、裁判や拘留中の食事などの経費を考慮して、手数料のようなものを決めているらしく、犯罪者の引き渡しの場合、その割合が一般的らしい。


因みに、冒険者の方が取り分が多い理由は、盗賊を犯罪奴隷として売るまでの中で一番危険なのが捕縛することなので、危険手当の意味合いもあるらしい。


そしてギルドの職員だった男に関しては、こっちも鉱山行きが決まったらしい。


盗賊と手を組んでいたことが、盗賊の仲間だと判断される材料になったのと、冒険者をだまし、ギルドの信用に泥を塗ったことが大きく影響しているらしい。


こちらに関しては、カノンとイリスが捕まえたので、7割の取り分を二人で山分けという形になるらしい。


なので今回のカノンの取り分は245000ゴールドとなるようだ。


金貨24枚と小金貨5枚、とんでもない金額になってしまった。


「報酬に関してはこの後受付で受け取ってほしい。そして、ここからが本題になるのだが……」


そこまで言うと、ロンは一枚の書類をカノンに差し出した。


カノンがそれを見ると、そこには【南の森・ゴブリンの集落のせん滅作戦】と書かれていた。


「ゴブリンの集落……ですか?」


カノンがつぶやくとロンは頷く。


「カノンさんの報告にあった百匹以上のゴブリンが気になって、ギルドでも依頼のランクを上げて調査を実施、その結果、森の中心付近にゴブリンの集落があると判明したんだ」


「あの、ゴブリンって洞窟とかに住んでるんじゃ……」


「あぁ、普通はそうなんだけどね、群れの規模が大きくなってくると、ゴブリンの行動は二つに分かれるんだ」


ロンの説明によると、一つは洞窟の中で養いきれなくなった分だけ弱い個体から追い出す。これが続くと最終的にその群には上位種が生まれ、追い出された個体の数が多ければスタンピードとなる。


これが一般的なゴブリンのスタンピードの生まれ方らしい。


そして二つ目は、群れ全体で引っ越すことだ。


ただし、下手をすれば数百もの数のゴブリンが住める洞窟など中々存在しないので、一部の上位種が中心となって、森を切り開き簡単な家を作り、集落を作ってしまうことが稀にあるらしい。


そして、こうなるには頭脳が進化した上位種か特殊個体が居なければいけないので、集落ができるのは稀らしい。


問題なのは、この集落は最終的にはスタンピードを上回る脅威になる可能性が高いということだ。


スタンピードとは、魔物が溢れてくるだけだ。


つまり冒険者の数がそろっていて、町の防壁がしっかりしていれば大抵の事は何とかなる。


しかし集落ができると、そこに暮らすゴブリンたちは急速に進化していくらしい。


その群の方針が、仲間を見捨てないというものであるのもあるだろうが、家を作ったりしているとスキルが急速に進化していってしまうらしい。


最終的にはすべての個体が上位種、もしくはそれに匹敵する特殊個体並みの能力になってしまうらしい。


それが数百匹ともなれば、群れの脅威度は恐らくBランク、下手をすればAランクにも届くことになるだろう。


なのでそうなる前に対処するのが、今回の作戦の目的らしい。


「この依頼はギルドより出される特殊依頼。基本的にDランク以上の冒険者に対しての強制依頼になるんだけど、カノンさんにも受けてほしいんだ」


「でも、私Eランクですけど……」


「あぁ、だから戦闘に関わることはお願いしない。カノンさんには飛行スキルがあるから、空からの偵察と、もし万が一孤立した冒険者がいた場合の救助をお願いしたいんだ」


なるほど、カノンの飛行スキルなら、人ひとりつかんだ状態でも十分な時間飛行できる。


それにカノンだけなら、戦わないのであれば偵察するくらいは問題なくできるだろう。


「…………分かりました。参加します」


カノンは少し悩んだようだが、参加することにしたようだ。


それを聞いたロンの顔が明るくなった。


「ありがとう。作戦は三日後だから、それまでに準備を整えておいてほしい。依頼の受注条件に関してはこっちで処理するから、三日後の朝に町の門の前に集合だよ」


「はい、頑張ります」


カノンはそういうと、軽く頭を下げてから部屋を出て行った。





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