霊装
シルフィードは訓練でも呼んでくれと言ってくれたが、三人の息を合わせる訓練をする前に俺とカノンはしないといけないことがある。
新しく手に入れた力の確認だ。
というわけで、ギルドに顔を出して許可書の確認だけした俺たちは、町の外の森の中までやってきたのだ。
この森は、町から見て迷宮と反対側にあり、迷宮に潜らない冒険者が薬草採取をしたりしている場所らしい。
ギルドにて、少し手荒な訓練をしても大丈夫な場所を聞いた所この場所を教えられたのだ。
初心者冒険者がいる場所を進めてくるのもどうかと思ったが、どうやらこの森、奥に行くと薬草などがなくなり、魔物もスライムなどしかいないため誰も入らないらしい。
その為、ある程度の実力を持つ冒険者がたまに魔法の実験などに使っている以外は誰も入ってこないようだ。
誰も来ないというのは正直好都合だ。
今回の能力は、軽々しく見せれるものではないからな。
今までのは前代未聞のキメラドラゴンの封印者という事で片が付いたが、こればかりはそうはいかないだろう。
っと、そんな事はさておいて……。
『別にお前らまで来なくても……』
俺とカノンから少し離れた場所では、リーゼとアンナが見守っている。
「いや~、なんか面白そうだし?」
そう言って可愛く首を傾げるリーゼ。
いや、別にカノンの魔剣や俺の霊装までは見せてもいいと思っている。
けど、どうしても見せたくない。
欲を言えばカノンにすら見せたくないスキルがある……。
人化スキルだ。
あの空間で意識がなくなる瞬間、しっかりと聞こえてきた。
そして、元に戻ってから自分のステータスを確認してスキルがあるのも確認できた。
これ、今までのキメラスキルの変身とは全く違うものの気がするのだ。
実際、今回はアリエルの魂が俺の中で休眠状態になっているわけだが、それがトリガーとなって発現したスキルなのは間違いないだろう。
問題なのは、このスキルを使って人になったとして、果たしてどのような姿になるのかが不明なことだ。
出来れば、カノンもいない場所まで移動して検証してみようと思っていたが、それはしばらくのお預けになりそうだな。
っというわけで、人化以外のスキルの検証と行こうか。
『じゃあまずはカノンの魔剣からか?』
「うん。じゃあ……」
カノンが魔剣を取り出す。
魔法剣の時と比べて、刀身が白っぽく変化して柄にラインも入っている。
形は大きく変わっていないはずだが、印象は大分変わったな。
そして、カノンはそのまま構える。
「じゃあいくね……!はぁっ!!」
ヒュン!
ミシ
カノンが掛け声とともに魔剣を一閃。
すると、その斬撃の直線状にあった木に盾一直線の切り傷が入った。
……マジか?
「え?何今の?」
後ろの方でリーゼ達もポカンとしている。
『風の刃だな。しかも密度も速度も桁違い……範囲も広いな……』
流石聖剣の能力だな……。
「魔剣ハクティアだよ。まだまだ使いこなせる気がしないけどね」
カノンが苦笑しながら言う。
『能力は俺と同じで斬った魔剣や聖武具の能力を吸収する事。だからリビングメイルの持っていた聖剣の能力を持ってるんだ』
「……あれって聖剣だったんだ……」
今更に知ることになった事実にリーゼがため息を吐く。
「ハクティアの能力も完全には使えてないんだよね……多分、色々なことが出来そうなんだけど……」
カノンが残念そうに魔剣を仕舞う。
恐らく、訓練を積めば能力も完全に使いこなせるようになるだろう。
「じゃあハク、お願いね」
『よし。任せろ』
次の検証は、俺の霊装だ。
カノンが俺を召喚すると、俺はカノンに向かって霊装を発動させる。
『霊装!』
すると、俺の体が鎧に変化してカノンの全身に装備された。
「……あれ?こんな鎧だった?」
自分の姿を見たカノンが首を傾げる。
『一応これが基本だろうな。吸収したのはリビングメイルというよりは聖鎧の方だろうし』
今、カノンは女性的なデザインの鎧、ドレスアーマーに身を包んでいる。
リビングメイルの姿を想像していたカノンは首を傾げているが、これがラティスマギナの基本形態だ。
ラティスマギナは数種類の能力を持っていたが、その一つが形状変化だ。
リビングメイル状態だった甲冑は勿論、普通の服にだって皮鎧になってなれる。
万能の鎧だ。
で、どうやら本来の姿はこれのようだ。
アリエルも、形状変化は説明してくれたがこの基本形態までは説明してくれなかったし……。
「ハクが勝手に選んだりしてない?」
『そんな面倒な事をするか!』
カノンからとんでもない疑惑が飛んできたので全力で否定する。
アリエルも、知っていたのなら教えてくれればよかったのに……。




