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素直じゃない精霊

墓地のアンデッドはリビングメイルで最後だったので、そのままギルドに戻って報告して依頼完了となった。


因みに討伐の証拠は魔石だ。


そして、その日はそのまま宿に戻って実際の連携の確認を行った上でのすり合わせをした。


完全に失念していたが、最初の目的は三人の連携の確認だったんだよな。


あんまり意味を為さなかった気がするが……。


結論から言って、アンナ……というかシルフィードに関しては自由にやってもらった方が楽だ。


俺も同じことが言えるが、一撃の破壊力が大きすぎて誰かに合わせると持ち味が生かせなくなる。


そうなってしまうくらいなら、主軸に据えて周りが合わせる方が連携しやすい。


最も、一応は攻撃で味方を巻き込まないようにはしてくれていたし、頼み込めば連携も出来るかも知れんが……。


少なくとも、それ自体にアンナの意思が介入できないのは問題だろう。


宿の部屋でそういった事を話すと、カノンとリーゼは同意見なのか頷いている。


そして、アンナは申し訳なさそうにうなだれる。


「申し訳ありません……」


「あ、えっと、アンナさんのせいじゃなくって……」


『どちらかというと、全員の経験値不足だよな……カノンは言わずもがな、冒険者になってからリーゼやアイリスと以外と連携する機会がない。ゼロじゃないけど数が足りない。リーゼの場合は普段からカノンに合わせているんだ。それが二人に増えればやりにくいだろう』


「ハクも出てるときは好き勝手やってるよね?」


カノンから冷たい声が飛んできた。


『いや……つい…な?』


自覚があるだけに弁解は出来ないな。


「で、どうするの?」


逸れかけた話をリーゼが戻してくれる。


『そうだな。とりあえず、お互いの能力は大体分かっただろうし、ここからすり合わせるしかないだろう』


「そうだね。というか、私たちがシルフィードさんに合わせるためにを話し合うしかないかな?」


『おうおう!そこまであたしに気を使う必要はないぜ?』


……おや?


この感じの話し方はシルフィード?


アンナが召喚したのか?


そう思ってアンナの方を見てみるが、アンナも驚いた顔をして周りを見回しているのでちがうっぽい。


『その声はシルフィードか?』


『そうだよ。せっかくだしあたしも出てきてやったんだ」


声が俺の念話のような、頭に直接響くようなものから普通の声に変っていく。


それと同時に、俺たちの目の前に緑色の髪を腰まで伸ばしたお淑やかそうな見た目の女性が姿を現した……ん?


「あ、あのシルフさん、お久しぶりです……」


アンナが緊張したように言う。


「おう、アンナ、お前と話すのは契約したとき以来か?……この姿で会うのは初めてだな?あたしはシルフィード。改めてよろしくな」


『あぁ……よろしく……』


何というか……。


見た目と中身がミスマッチというか……。


「…なんか失礼な事考えてねぇか?」


『気のせいだろ?』


くそ…、鋭い……。


『……で、アンナの反応からすると自分から出てくるのは初めて見たいだが……どうした?』


「……別に大した理由はねぇよ。お前と……お前」


そう言って俺とカノンを指さすシルフィード。


「お前らに礼を言いに来ただけだ。アリエルの事は知らない仲じゃなかったからな……で、だ……もしお前らがアンナと組んでくれるってのなら、訓練の時でも自由にあたしを呼べ。連携くらいはしてやるよ……それと…ありがとな」


そういったのと同時、シルフィードの姿は消えた。


「……えっと…」


カノンが困惑したようにアンナの方を見る。


「あ……すみません。私にも何が何だか……」


アンナはカノン以上に困惑しているようだ。


そんなやり取りを聞きつつ、ふと頭に浮かんだことを考えていた。


カノンが継承した聖剣の力は風。


そしてシルフィードも風の大精霊だ。


もしかすると、聖剣とシルフィードには何らかの繋がりがあったのかもしれない。


……だからあの場所で、俺をリビングメイルに嗾けたのか?


俺なら如何にか出来ると分かったうえで……。


もしそうだとしても、何も言うことはできないな。


戦うと決めたのは俺自身だし、スキルの話も本当ではあったしな。


それに……昔の友を救うため、だったとしたら、文句を言うのは野暮だろう……。


甘いのかも知れないが、性分かな?


俺はそっとため息を吐いたのだった。

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