魔剣ハクティア
side カノン
気が付くと、真っ白な世界に居た。
確か、ハクの目の前に剣が迫ってたのは覚えてるんだけど、何でこんな場所に?
……あれ?
気が付くと、目の前にはきれいな女の人がいて、私の横にはハクがいる。
……ハク?
なんだかおかしいような……?
見た目は同じなんだけど、ハクってこんなに大きかった?
目線が同じ高さなんだけど……。
って言うか、目の前の女の人は誰で何で私はこんなところにいるの?
女の人、アリエルさんが色々と説明してくれた。
そもそも、呼ばれたのはハクで私は引っ張られてしまっただけだという事。
ハクの姿は、あれが本来の姿らしい。
そして、アリエルさんはあのリビングメイルの元になった鎧、聖鎧ラティスマギナで聖武具?とか呼ばれているらしい。
で、あのリビングメイルはハクの能力でスキルを奪わないと復活し続けてしまうので、ハクに如何にかしてもらうためにここに呼ばれたみたいだ。
でも、私がここに来たのも好都合だったらしい。
それは、リビングメイルが持っていた剣、聖剣タンペート……、正確には元聖剣らしいけど、それを如何にかするには私の魔法剣が必要だった見たい。
困惑する私に、アリエルさんはその方法を教えてくれた。
ハクが弾き飛ばした剣は、そのまま地面に転がった。
私はアリエルさんの言葉を思い出しながら、地面に転がっている剣の元まで走り、魔法剣を頭上に構える。
狙いは地面に転がっている剣。
私がするのは、聖剣の能力の継承のようなものらしい。
つまり、あの元聖剣の能力を私の魔法剣が奪うという事だ。
アリエルさんが教えてくれたけど、聖剣というのは元々魔法剣だったそうだ。
しかも、私の剣と同じく進化する魔法剣。
進化する魔法剣の一部は魔剣に進化して、その魔剣の一部は聖剣に進化したらしい。
つまり、私の魔法剣は聖剣に成り得る存在で、聖剣の力を受け入れることが出来るようだ。
ただし、本来聖剣や魔剣に宿った能力を他の剣に移すことはできない。
けれど、私のこの剣は違う。
ハクの魔力に馴染んだこの魔法剣は、ハクのキメラの能力、他者の能力を取り込む能力を持ったみたい。
この魔法剣の進化の条件は十分に満たしていたみたいだ。
でも、ならなんで今まで進化しなかったのか?
その答えもアリエルさんが教えてくれた。
「その魔法剣に名前を付けてください」
「名前……ですか?」
「そうです。魔剣にとって銘は楔です。剣と力を繋げる楔、だから銘のない魔剣は存在しません。銘とは、それほどまでに魔剣にとって大切なものなのです」
名前……。
考えたこともなかった。
でも、名前って考えた時、自然に思い浮かんでもきた。
うん。
この名前にしよう。
元に戻ったら、すぐに名前を付けてあげよう。
私はそう決意した。
剣を振りかぶったまま、私は頭に浮かんでいる名前を口にする。
魔法剣が答えてくれることを祈りながら。
「力を貸して!ハクティア!」
私は名前を叫んで剣を振り下ろす。
そして、魔法剣、ハクティアが聖剣に触れた。
キィン……
そんな高い音が聞こえた。
すると聖剣は小さな光の粒になってハクティアに飲み込まれていった。
「ふぅ…」
上手くできた。
そのことに一安心しながら改めてハクティアを見る。
魔法剣の時とは見た目が変わっている。
元々飾り気のない普通の剣みたいな見た目だったけど、刃は少しだけ白っぽくなって柄には緑色のラインが走っている。
それに、柄の形も変わった。
けど不思議と握りにくくはなってない。
寧ろ持ちやすくなってる?
もしかして、ハクティアが私に合わせてくれたのかな?
そうだとしたら少しうれしいかもしれない。
私は少しだけ、口元が緩んだ。




