英雄
……あれ?
何が起こったのか分からない。
そんな表現が一番正しいのかもしれない。
目の前にリビングメイルの剣が迫っていたのが最後の記憶だ。
しかし、俺に当たる瞬間に目の前の風景が一変してしまった。
見渡す限り白一色の世界……。
あれ?
もしかして……死後の世界?
「あはは、まだ死んでませんよ」
困惑しているところに、いきなり声を掛けられた。
というか、さらっと心読まれた?
「そりゃ分かりますよ。ここは私の世界なんですから」
私の世界?
その単語に首を傾げていると、いきなり目の前に人が現れた。
ピンク色の髪の長身の女性だ。
部分鎧を着ているが、なんだが見覚えのある鎧の気がする。
「初めまして。私はアリエル。遥か昔に勇者と呼ばれた者……って言えばいいでしょうか?」
「いいでしょうかって、それは俺には判断できんな……ん?」
目の前?
いや、正確に言うのなら目線が同じだ。
俺は小さな竜になったのだから、飛んだりしない限り相手を見上げるはずなのに……。
そもそも、さっき普通に話せてなかったか?
「あ、それは自分の体を見た方が早いですよ?」
目の前の女性にそう言われ、自分の体をよく確認してみる。
少し鱗が細かくなったか?
いや、俺が大きくなったのか?
「ここでの姿は魂の姿そのものです。肉体の状態による影響は受けません」
「いや、そう言われても……」
今の俺の姿と全くつながらないのだけど……。
「……それって、ハクが小さいのは私に封印されてるからって事?」
あぁ、そういう事か。
俺の姿は本来は既に大きくなっているはずなのだが、封印の影響で小さいまましか出てこれない……。
あれ?
「カノン?」
「ハク!なんだか立派になったね!」
いつの間にか隣に立っていたカノンを見下ろす。
うん。
いつもは見上げるのに今日は見下ろしている。
不思議な気分だよな。
……って、それよりも!
「何でカノンまで?」
「あ、それは簡単です。お二人は封印によって魔力的に繋がっていますので、片方を呼べばもう片方も来てしまう……そういうわけです」
あぁ、なるほど。
で……。
「結局、アリエルさん…だったか?何で俺たちは呼ばれたんだ?」
俺がそう聞くとアリエルの雰囲気が変わった気がした。
なんだかピリッとしたような?
「そうですね。まず、前提をお話しします。貴方たちが今戦っているリビングメイル。そのもとになった鎧は、聖鎧ラティスマギナ。かつて私が使っていた聖武具です」
「聖武具?」
効きなれない単語にカノンが首を傾げる。
「あぁ、今はそうやって言いませんか?そうですね……聖剣…は分かりますよね?」
アリエルの質問に俺とカノンは揃って頷く。
「その聖剣も聖武具の一種です。聖剣と同格の鎧と言えばいいでしょうか?」
聖剣と同格……。
「そして、貴方に投擲された剣、あれが聖剣タンペートです。ただし、もう聖剣としての力は殆ど残っていませんが……」
あぁ、俺、聖剣を投擲されたのね……。
勝てる気がしねぇ……。
「ここまでが前提です。そして、お二人をここに呼んだ理由ですが……」
アリエルのその言葉に俺とカノンが耳を傾ける。
「あれを眠らせて欲しいのです」




