捜索
カノンはマリアと共に、森の上空を飛んでいた。
目的は遭難したかもしれない二人の捜索なので、さっきゴブリンと戦った場所を中心にして、円を描くように飛んでいる。
「ハク、あとどれくらい飛べそう?」
カノンの質問に、俺は自分とカノンに鑑定を使ってみた。
----------
種族・キメラドラゴン 名称・ハク
HP・921/921 MP・789/1354
状態・封印
スキル
鑑定Lv4・同化Lv3・捕食吸収・触手伸縮Lv7・自己再生Lv10・高速再生Lv3・収納Lv3・粘液Lv5・飛行Lv8・麻痺針Lv8・毒針Lv7・方向感覚Lv6・風属性Lv7・火属性Lv1・針生成Lv3・気配察知Lv5・毒耐性Lv3・身体強化Lv3・形状変化Lv1・威嚇Lv1・高速思考Lv1・念話・剣術Lv3・魔力操作Lv1・詠唱短縮Lv1・解体Lv1・魔装(使用不可)
固有スキル
キメラLv2・スキルテイカー・スキルシェアLv1
ユニークスキル
世界の記憶アカシックレコード(詳細不明・ナビゲート機能のみ解放)
----------
種族・人間 名称・カノン
職業・封印者シーラー・Eランク冒険者 年齢・13
HP・189 MP・5(789/1354)
スキル
魔力操作Lv10・魔力制御Lv1・剣術Lv3・身体強化Lv3・料理Lv4・〔鑑定Lv3・風属性Lv7・火属性Lv1・気配察知Lv5・威嚇Lv1・毒耐性Lv3・方向感覚Lv6・収納Lv3〕
固有スキル
竜装Lv2・???(詳細不明)
----------
魔力的には半分より少し多めだが、元々ゴブリンとの戦闘で消耗していたので今回の飛行で消費したのは2割ほどのはずだ。
もし戦闘分の余力を残しておくのなら、あと15分ほどが限界かもしれない。
『あと15分ってとこだろうな。それ以上となると、戦うための魔力が足りなくなってくる危険がある』
「15分か……見つかるといいんだけど」
正直言ってこの広大な森を15分で探しきるなど不可能なので、あとは二人の運しだいになりそうだ。
そんな感じで探すこと10分、カノンもマリアも別々の方向を探していた時、森の入り口近くで突然火柱が上がった。
「カノンさん!」
「分かってます!行きますよ!」
カノンはすぐに方向転換すると、火柱が上がった方向に向かって飛んでいく。
俺は気配察知を発動して、状況の分析を始めた。
まだ距離があるので詳しいことは分からないのだが、人らしき気配を二人分感じる。多分探している二人で間違いないだろう。
しかし一つ問題がある。
ゴブリンと思われる気配が異常に多いのだ。
『カノン、二人分の人の気配と、それを囲むように百匹以上のゴブリンの気配だ。気を付けろ』
「百って……その人たち生きてるの?」
カノンの口から出た数に、マリアが目を見開いて驚いているが無理もないだろう。
『今のところはな』
しかし森の入り口でよかったかもしれん。
下手に奥の方で囲まれていたりすれば、間違いなく死んでいただろう。
「見えてきました!二人に間違いありません!」
マリアの声で、気配のする方を見てみると、さっきマリアを置いて逃げた二人がゴブリンに囲まれているのが見えてきた。
ゴブリンの中には弓矢や杖を持っている者もいて、ちょっとした山賊よりも強そうだ。
「飛び込む?」
『いや、とりあえずゴブリン共の動きを鈍らせよう。カノンは剣を準備して、合図をしたら急降下して切り込んでくれ。マリアには二人の誘導を頼んでくれ』
「分かった。マリアさん!今から急降下して助けに行くので二人の事はお願いします!」
「え?しかし、カノンさんは……」
マリアがなにか言おうとしている間にも、俺は粘液爆弾の準備をして地面に向かって発射した。
ポポポポポポポポッ!
お馴染みの少し間抜けな音とともに、無数の粘液爆弾がゴブリンの群に降り注ぐ。
『今だ!』
俺の合図でカノンは急降下をしてゴブリンの群に突っ込んだ。それと同時に剣で手当たり次第にゴブリンを切り裂いていく。
その後ろでは、マリアが二人に駆け寄っていた。
「大丈夫!?」
「マリアか、お前が囮になれなかったせいでこんな……」
男の方……確かアレンとか言っていたか…そいつが悪態をつく。
とても助けに来てもらった人間の態度とは思えない。
「ほんとよ!なんであんな小娘連れて来てんのよ!使えないわね!」
レイアとかいう女も最悪の態度だ。
もうこのまま置いて帰ってもいいかな?
『そんな訳にも行かないよな』
俺は触手を森の外の方向に向けた。
『トルネードカッター!』
俺が魔法名を唱えると、触手の先端から横向きの竜巻が発生して、森の中を突き進んでいく。
その竜巻に触れた木々はすべて切り裂かれ、森の外までの道ができた。
トルネードカッターは風属性Lv4で使えるようになる魔法のようだ。
効果は見ての通り、風の刃を含んだ竜巻を任意の方向に向けて放つものである。
その光景にアレンとレイアの二人は唖然としてのち、何も言わずに一目散に走り去っていった。
カノンはその間にも、ゴブリン共を薙ぎ払ってくれている。
「マリアさん!あなたも早く!」
カノンはマリアに逃げるように促すが、マリアは少し迷っているようだった。
「ギャー!」
「ぐぅ!」
「カノンさん!」
『カノン!』
そうこうしているうちに、他のゴブリンも集まってきていたのかもしれない。
カノンはゴブリンの剣に、腕を切り裂かれてしまった。
「だい、じょうぶ!」
カノンは切られた腕で無理やりゴブリンを切り飛ばす。
俺はすぐに高速再生でカノンの腕を治しにかかった。
『カノン!数が多すぎる!一旦引こう!』
「ダメ!今逃げたらこいつら町に行っちゃうから!」
カノンは痛みで顔をゆがめながらも剣を振る手を緩めようとはしない。
高速再生は、確かに自己再生よりも早く傷を治すことができるが、それでも多少の時間がかかる。
やっぱり戦闘中の再生はそれなりに厳しそうだ。
『仕方ない!カノン!マリア抱えて大ジャンプだ!』
俺がそういうと、カノンはわずかに頷いてマリアの元まで駆け寄った。
そして身体強化で上がった脚力でジャンプした。
10メートルくらいは飛び上がったので、これなら行けそうだ。
『ファイヤーウォール!トルネードカッター!』
俺は火と風の二つの魔法を同時時用した。
以前カノンが試験の時にやったことと同じだが、今回は火の壁を作るファイヤーウォールを、トルネードカッターで吹き飛ばしながら広範囲を焼き払ってみた。
「ギャ!?」
「ギイー!」
「ギェー!!」
色々な悲鳴を上げながら、ゴブリンの群は消し飛んでいく。
どうやらファイヤーウォールをトルネードカッターが切り刻みながら巻き込んでいき、触れたものを焼き切る刃の嵐となってしまったらしい。
カノンは慌てて竜装を発動させて空中にとどまることで回避している。
「何?あれ?」
カノンの呆れたような声が聞こえてくる。
『いや……まさかここまで強力になるとは思ってなかった……』
まあ、取り敢えずこれでほとんどのゴブリンは始末できそうだ。




