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カノンとアンナ

女性を馬車が見える場所まで案内した俺は、女性の意識が馬車に向いた隙にカノンの中に戻った。


「……ハク?戻ってきたの?」


馬車の前で待機していたカノンがそう漏らす。


『おう。ここまで何とか案内してきた』


俺の言葉を聞いたカノンがほっと息を吐き、そのまま女性の元まで駆け寄っていく。


「えっと……無事でしたか?」


女性の前まで来たカノンが、痛々しい傷跡を残す体を見て聞く。


「あ、はい。えっと……」


突然のカノンの質問に戸惑った様子を見せつつ返事を返す女性。


「あ、私はカノンです。通りすがりの冒険者です。馬車の皆さんが心配していましたよ」


馬車という単語を聞いた女性が一瞬慌てた表情になるも、続くカノンの言葉で落ち着いた。


「そうですか……という事は皆さんはご無事だったのですね……よかった」


そう言ってほっと胸をなでおろす女性。


そして、はっとした表情になった。


「あ、私の自己紹介がまだでした。私はアンナです。冒険者をしております」


そう言って優雅な礼を見せる女性……アンナ。


何というか、育ちがよさそうな印象を受けるよな


「所で……カノンさんと仰いましたか?一つ質問させて頂きたいのですが、貴女様はテイマーでしょうか?」


顔を上げたアンナの表情は、真剣なものに変わっていた。


カノンは、何故アンナからテイマーという単語が出てきたのか一瞬分からず、首を傾げたが、すぐに思い当たったようで苦笑した。


「いえ、私はテイマーじゃないです。でも……アンナさん、もしかして白い物でも見ましたか?」


カノンと合流したのはいいが、充分に説明をする余裕が俺にはなかった。


だから、カノンは俺がアンナの前に姿を見せたのかどうかが分かっていないので、ある程度ぼかして聞いてみることにしたようだ。


カノンの言葉を聞いたアンナが目を見開き、大きく頷いた。


「はい。白い竜……でした。白竜さんがここまで案内してくれたのです。もしかして、何かご存知でしょうか?私、あの白竜さんにお礼すら言えてませんので」


心の底から残念そうな顔をするアンナ。


なるほどな。


別に気にしなくてもよかったのに。


「えっと……それはハクの事ですね。私は封印者(シーラー)なのでハクが私の中にいるんです。あの時はハクがアンナさんの事を見つけていたので助けに行ったんですよ」


「つまり……白竜さんは今ここに居るという事でしょうか?」


カノンの説明を聞いたアンナが驚いたように聞き返す。


「はい。なので、ハクにもアンナさんの言葉は聞こえていますよ」


そう言ってほほ笑むカノン。


それに対して、アンナは再び姿勢を正した。


「白竜さん。お礼を言わせてください。命を救っていただいて、ありがとうございました」


そう言ってカノンの方、恐らく、カノンの中の俺に向かって深々と礼をするアンナ。


『あー…どうやって返事しようか……』


念話で返すのもなんだし……。


かと言ってスライムやマンイーターでは俺だって分からないだろうし……。


「……はぁ、ハクも変な所で頑固だよね」


俺の声が聞こえたカノンがため息を吐いて詠唱を始めた。


そして、そのまま俺はカノンの前に召喚された。


その召喚された俺を見て驚いたように顔を上げるアンナ。


「アンナさん、改めて紹介しますね。ハク、私の相棒です」


俺の姿を見たアンナが再び頭を下げようとするが、身振りでそれを制止する。


『もうお礼は充分なんだけどな』


「それは本人に言うべきだよ?」


カノンから呆れたような声が帰ってきた。


『まぁそうなんだけどな……っと、馬車の連中がこっち見てるぞ?戻らなくていいのか』


馬車から少し離れた場所で話し込んでしまったからな。


「あ、そうだね。アンナさん。馬車の皆さんも心配されていましたし、一度戻りましょう」


「はい」


カノンの言葉にアンナも頷く。


カノンは俺の召喚を解除すると、アンナと共に馬車に戻っていくのだった。





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