襲われた馬車
side カノン
「ハク!向こうはお願いね!」
飛び去って行くハクの背中に向かって叫んだ。
ハクの様子に自分でも気配察知を使ってみたら、なんかおかしなことになっていたから。
ハクが何をしたいのかも分かったから、召喚をした。
ハクは多分、弱ってる人とそれを囲んで移動している人って情報しか読み取れてなかったと思うんだけど、それでも万が一ってだけで向かっていった。
それは、私達だけでも万に一つも負けはないって確信してるからだよね?
そうなら、ハクの期待には応えないとね。
魔法剣を右手だけで持ち直し、収納から魔銃も取り出す。
「カノン?ハクさんは何処に?」
リーゼさんから質問が飛んできた。
あ、そっか。
リーゼさんだとあんな場所の気配までは分からないよね。
「ハクは少し離れた場所の救援。私たちはこっちを先にやらないと」
簡潔に説明したつもりだけど。
リーゼさんの頭の上にはてなマークが見える気がする……。
けど、リーゼさんはすぐに刀を握りなおした。
「ハクさんに任されたのなら、こっちもちゃんとしないとね」
「はい。そうだ……ね!」
ボン、ボン!
「「「ギャーーー!!」」」
私は、馬車を襲うのを忘れたようにこっちに敵意を向けるゴブリンの頭を魔銃で吹き飛ばした。
周りのゴブリンが騒いでいるけど、仕方ないよね?
訳も分からない間に隣の仲間の頭が消えたんだから。
後は……。
気配察知で確認してみると、私達からみて馬車の反対側にもゴブリンが居る。
こっちは数が減ったけど、あんまり悠長にしてても反対側のは逃げちゃうかな?
……よし。
「リーゼさん!こっち側はお願い!私は反対に!」
「了解!任せて!」
リーゼさんが刀を手にゴブリンに突っ込むのと同時、私は魔装の魔力を足に集中させて、跳躍した。
魔装の魔力を集めると身体能力がとても高くなる。
私は馬車を楽々飛び越えて、そのまま馬車の裏手に居たゴブリンに魔銃を向けた。
ゴブリンたちはリーゼさんの居る方、つまり私がさっきまでいた方向を警戒しているだけで私には気が付いていない。
私は魔銃の引き金を引いて何匹かのゴブリンを倒したまま、混乱するゴブリンの中に降り立った。
「ギャ?ギャー!」
いきなり仲間が倒されたのは私の仕業だって気が付いたみたいで、こっちに向かって威嚇してくるけど私にはまったく効き目がない。
だって、ゴブリンよりももっと強い威嚇をするのが私の中にいるんだから。
例え今いなくても、ハクの威圧になれてるから脅威には感じない。
「ふぅ…」
ゴブリンだったものの前で、魔法剣と魔銃を収納に仕舞いながら一息つく。
正直、降りてからはすぐだった。
威嚇するゴブリンたちに向かって魔法剣を振るだけ。
逃げようとしたゴブリンは魔銃と魔法剣の斬撃であっさりだった。
馬車の反対側でも音がしなくなったので、リーゼさんも終わったみたい。
「そっちも終わったんだね」
リーゼさんが馬車を迂回してこっちに来た。
刀に着いた返り血を布で拭いながらだけど……。
「はい、後は……」
私は全く返り血を浴びていないリーゼさんから視線を外して馬車の方を向く。
何で近距離で斬ってるのに返り血を全く浴びないんだろう?
私でも近接戦闘じゃ多少の返り血は浴びちゃうのに……。
私の場合は返り血……正確には服にや体にかかる前の飛び散った血がかかる瞬間に収納に入れちゃえるから汚れないけど、リーゼさんはそうじゃないよね?
っと、そんな事より……。
馬車の中の気配は元気だと思うから、多分無事だよね?
でも出てくる気配がないのは、外の様子が分からないからかな?
なら、呼びかけてみるのが一番速いかな?
「えっと……馬車の周りのゴブリンは倒しました。もう安全ですよ」
声を掛けると馬車の中から小さな物音がした。
そして少し経って、馬車の扉が開いて一人のおじいさんが顔を出した。
「……ぼ、冒険者の方……ですかな?」
恐る恐ると言った声で聴いてくるおじいさん。
「はい。この辺りの魔物は倒したのでもう大丈夫ですよ」
その言葉を聞いたおじいさんは一瞬安堵の表情を見せてくれたけど、すぐに表情が険しくなる。
それと同時に、おじいさんがお年寄りには思えない速さで私の腰辺りに抱き着いてきた。
「え?」
「お、お願いします!どうか!どうか冒険者の方を助けてください!」
困惑している私達に、おじいさんはそんな言葉を投げかけてきた。
……よく見ると、馬車の中にはまだ何人もいる。
その全員が、不安な表情をしていた。
「えっと……それって……ハクさんの方?」
私の後ろからリーゼさんが恐る恐ると言った感じで声を掛けてきた。
うん。
リーゼさんが思ってることで正解だと思うよ。
ハクが行ったし大丈夫だとは思うけど、何でそんな状況になったのかとか確認しておいた方が良いよね?
そう思った私は、おじいさんと、中にいる人たちに話を聞いてみることにした。




