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見捨てられた冒険者

カノンとマリアは森の出口を目指して歩いていた。


元々カノンが居たのは森に入って10分ほど歩いたところなので、入り口の近くだ。


なのでさっさと逃げた二人は町に戻ってギルドに行ったと仮定して、俺たちもギルドを目指すことにしたのだ。


その途中で、マリアがいきさつを教えてくれた。


マリアとさっき逃げた二人は幼馴染と言うやつらしい。


近くの村で同時期に生まれ、人口が少ないのもあり小さい頃は兄弟のように遊んだ中だという。


しかし、今から1年前、マリアが16歳になるタイミングで、当時のリーダー格、今このパーティのリーダーをしている男、アレンが突然冒険者になると言い出したそうだ。


なんでも、アレンは隠れて剣の修行をしていたそうで、幼馴染の二人、マリアとレイアを誘ったらしい。


マリアをはじめ、村の大人たちは猛反対したらしいが、なぜかレイアもアレン側についたらしい。そして、マリアを強引に引き連れて町に出て、冒険者となったようだ。

しかし、冒険者のFランクであれ試験はある。三人はなんとかクリアしたようだが、アレンは辛うじて剣術が使え、レイアは火属性の魔法が使えたらしい。


マリアはそれまで、冒険者になるという選択肢を選ぶつもりがなかったのもあり、魔法も使えず、かといって近接戦闘もできない。なので二人のサポートという形でパーティに加わっていたようだ。


そして一年かけて、アレンはDランク、マリアとレイアはEランクとなって、今日がランクアップした初仕事の予定だったらしい。


「以前から二人が話してたんです。私を連れてきたのは失敗だったって……、でも、今更村に戻ったって追い出されるのが関の山ですし、何とか練習して水属性の魔法だけは使えるようになったんです。でも、今日、ゴブリンの群から逃げている途中で……」



カノンの居た上空からは聞き取れなかったのだが、何かにつまずいて倒れてしまったマリアに二人は、


「後はよろしく」


といって逃げて行ったらしい。多分マリアが餌になって時間を稼いでくれればいいとでも思ったのだろう。


「でも……そんなにうまくいくのかな?」


『多分無理だろうな。ゴブリンの数が数だから、半分くらいは二人を追いかけたと思うぞ』


「やっぱりそうだよね」


「どうされましたか?」


マリアが首を傾げながらカノンに聞いてきた。


「ハクが……多分マリアさんが食べられても半分くらいのゴブリンは二人を追いかけたんじゃないかって」


それを聞いたマリアは、自分が食べられていく姿を想像したのか少し身震いして、ため息を吐いた。


「私も人の事は言えませんが、あの二人は採取依頼だけでDランクになりました。なのでゴブリンの対処法も知らないのです」


「私、一昨日登録したばかりだから知らないんですけど、Dランクって採取依頼だけでなれるものなんですか?」


確かにそこは気になった。たしかランクを上げるには、依頼を一定数こなすか、ギルドで実績を作ってから、ランク相当の戦闘能力があるのか試験があったはずである。


たしかゴブリンの脅威度はFランク、10匹ほどの群でEランクになると聞いた。


今回は30匹いたが、Dランク一人とEランク二人が居たのなら、何とか撃退くらいはできたのではないだろうか?


まあ、Eランクで30匹の群を片手間で処理したカノンは置いておくことにする。


「お恥ずかしながら……私はパーティとしての実績でEランクになっているだけでして、試験も三人一緒に受けたんです」


そんなことができるのかと思ったが、どうやら可能らしい。ただしその場合、パーティを抜けてしまえばランクは入る前の状態に戻るのだとか。


試験では、アレンが試験官の冒険者の気を引いている隙にレイアが魔法を叩き込んだらしい。


そしていままで精々5匹程度のゴブリンとしか戦ったことのない彼女たちが、大きな群れの調査依頼なんか受けたもんだから、あっさりと見つかり追いかけられる羽目になったらしい。


「えっと、マリアさんの実力ってどれくらいなんですか?」


「私ですか?私は……多分一匹のゴブリンに負けると思います」


うなだれながらマリアが言うが、それはもはやEランクの実力とかの話ではない気がしてきた。


一応鑑定してみよう。


----------

種族・人間 名称・マリア

職業・棒術師・Eランク冒険者 年齢・17歳

HP・263 MP・106

スキル・棒術Lv2・身体強化Lv1・魔力操作Lv1・家事Lv3・気配察知Lv5

----------


確かに強いと言えるステータスではないが、ゴブリン相手なら充分に戦える。


しかしクラスが棒術師となっていると言うことは、その杖は殴るために使っているのだろうか?


『棒術スキルを持ってるな。多分接近戦の方が向いてるんじゃないのか?』


「棒術?」


『あぁ、多分あの杖で直接戦闘でもしてたんじゃないのか?』


マリアが持っている杖は、身の丈ほどもある。そして安物の為か、先端の装飾もほとんどない。これなら確かに棒術の条件を満たしているのかもしれない。


「マリアさんって、いままで前衛で戦ったことってあるんですか?」


「え?そうですね。今日みたいに囮としてなら何度か……」


なんか、話を聞いているだけで目頭が熱くなってきた。


目はないけどさ……










そんな話をしながら森を出て、そのまま町の入り口に向かう。マリアのパーティの二人がここを通ったのなら、恐らく門番が覚えているはずだ。


というよりも、そろそろギルドに到着して助けを呼んでいるはずである。普通であれば……


入り口に着くと、なぜかロイドと門番が話し込んでいた。


カノンたちが近づくと、ロイドはカノンを見つけて手を振りながら近づいてきた。


「よう、カノンちゃん。今日は森にでも行ってたのかい?」


相変わらずの強面の笑顔をカノンに向けるロイドであった。


「はい。その途中でゴブリンの群と遭遇したんですが、この方が襲われていまして……」


そこで視線をマリアに振ったカノンは、何故かロイドを見て目をむいているマリアを見て首を傾げた。


「……あの、カノンさん。ロイドさんとお知り合いなんですか?」


「はい。色々助けていただきまして……」


「お前は確か……【竜の牙】とかいう新米パーティの……」


ロイドもマリアの事は一応知っていたようだ。


しかしパーティの名前初めて聞いたけど、なんだか名前負けしている気がしてしょうがない。


「はい。実は……」


マリアはこれまでの経緯と、カノンに助けられたこと、そして普通なら残りの二人がこの門を通って助けを呼びに行っているのではないかということをロイドと門番に伝えた。


しかし門番は首を横に振った。


「悪いが……その二人組は見ていないな。というより、町に入ろうとしている冒険者がほとんど来ないからな」


門番によると、ゴブリンの群の影響で南の森に冒険者が近づかなくなり、出ていく冒険者は少しいたものの、入ってくる冒険者はほとんどいなかったらしい。


「しかし南の森となると……少しまずいかもしれんぞ」


ロイドは難しい顔をしながら呟いた。


「ゴブリンの群以外にですか?」


カノンが首を傾げながら聞く。


「あぁ、あそこは一歩道を外れちまうと中々抜け出せねぇ、天然の迷路になってんだ」


南の森は、道の近くなら大した問題はないのだが、道が見えなくなるまで奥に入ってしまうと木々の配置が絶妙で、自分の位置や向いている方向を簡単に見失ってしまうのだそうだ。


「普通、あそこに入るなら方向感覚のスキルを持ってるか、空を飛べる奴でもない限り出てこれない。だからギルドでは、依頼を受けたのならばその説明をするはずだ」


ロイドと門番の言葉を聞いて、カノンはマリアの方を見た。


「マリアさん……」


「多分、貴方の思っている通りだと思います。調子に乗ったのか、ゴブリンから逃げるためかは分かりませんが、森の中に入ってしまい……」


マリアはそこまで言うとため息を吐いた。


「あの、森の中って空からでも見えるんでしょうか?」


カノンの言葉に三人が首を傾げる。


「空から、か……木が邪魔だが、動いているものくらいは判別できるらしい」


「なら私が探してきます」


カノンはそういうと竜装を発動して翼を広げた。


それをみたロイドと門番が驚愕の表情をした。


「か、カノンちゃん……もうそんなことまで出来るようになったのか」


ロイドはカノンの背中から生えた翼を見ながら言った。


門番の方は言葉もないようだ。


「はい、やってみたらできちゃいました。なのでこれで行ってきますね」


「待ってください」


飛び立とうとしたカノンをマリアが止める。


「無理を承知でお願いがあります。私も連れて行ってください」


マリアはそういうと深々と頭を下げた。


「待て待て、お前は空も飛べないし、第一ゴブリンの群と戦えんだろうが!カノンちゃんの負担が増えるだけだ!」


ロイドがマリアをたしなめるが、マリアはカノンに向かって頭を下げたままだ。


「ハク、どうしよう?」


『触手で掴んで飛べば行けないこともないが……』


飛ぶだけなら大した問題ではない。


一旦空まで上がってから滑空すれば、多少重くなっても行けるだろう。


問題となるのは戦闘の方だ。


単純に護衛対象が増えるだけのような気がする。


しかしここまで覚悟のこもった眼で頼まれると、断りづらいのも事実だ。


『しょうがない。カノンがいいのなら連れて行こう』


「うん。ごめんね」


カノンは小声でそういうと、マリアを見た。


「マリアさん。私にぶら下がってもらいますが大丈夫ですよね?」


カノンがそういうと、マリアが頭を上げてぽかんとした顔でカノンを見た。


「はい。行きますよ」


カノンがそういうのと同時に俺は触手をマリアに巻き付けた。


「お、おい!大丈夫なのか!?」


ロイドが驚いてカノンを止めようとしているが、カノンはにっこりと微笑んだ。


「ロイドさん。少し探してきます。ギルドへの報告をお願いしてもいいでしょうか?」


「それはいいが……はぁ、分かった。ただし、危険だと感じたら戻ってこい!最優先は自分の命だ」


ロイドはあきらめたのか、カノンにそういうと少し距離を取ってくれた。


それを確認したカノンは翼をはばたかせて、空に飛びあがった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 飛んで探そうとしているのに、連れてって? さすがにそれはないだろう。
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