始まりの場所
洞窟を少し進むと、見覚えのある開けた場所に出た。
「ここは……?」
「……これって」
ここが何なのか首を傾げるカノンと、何かを理解した雰囲気のリーゼ。
『そうか……ここに繋がっていたのか』
俺はというと、感心したような、どこか納得したような気分だ……。
「ハク?ここの事知ってるの?」
『あぁ、知ってるも何も……』
「ハクさんが生まれた場所……じゃない?」
俺の言葉を遮って正解を言うリーゼ。
『……よく分かったな』
「この中にハクさんと同じ魔力が漂ってるからね。それに多分……」
『ここが卵の中なんだろ?』
外での話と合わせて考えれば、そういう解釈に繋がっていく。
「うん。多分この壁は元々卵の殻だったんじゃないかな?でも、何でここでハクさんが生まれたかまでは分からないけど」
それは仕方ない。
「ハクは兎も角……リーゼさんはよく分かるね……」
「竜感知は妨害されてないっぽいからね。しっかり機能してるよ」
違う。
そういう意味で言ったのではないと思うのだが……。
そもそも何で俺は兎も角なんだよ……。
『しかし……感知系のスキルを手に入れた影響か?俺の記憶とはなんか違う気がするんだが…』
構造は変化したようには見えない。
ただ、雰囲気のようなものは少し違うような気もする。
「それは多分、ここの魔力が少し変わったからじゃないかな?ハクさんがいたころはまだ迷宮になってなくて、それが迷宮になっちゃったから魔力が変化したんじゃないのかな?」
俺の言葉にリーゼがそう答える。
なるほどな。
『……しかし……迷宮なんてそんな簡単に出来るもんなのか?』
「そういえば……授業で聞いたよね?迷宮って魔力だまりに出来るものだけど条件が厳しいって」
カノンが学園での従業を思い出しながら呟く。
カノンが見学した授業の中には、迷宮や魔境に関する物もあったのだが、その授業でも迷宮の生まれる条件に付いては詳しく教えていなかった。
というか、魔力だまり以外に条件があることは分かっているものの、その条件がとても厳しい物だろうという推測がされているだけで解明されていないのだ。
「……あ、あれが入り口かな?」
周りを観察していたカノンが、壁の方を指さす。
『ん?』
カノンの声に反応してそちらを見てみると、壁に穴が空いており、そこから下に続く階段があった。
『……人工物……じゃないんだよな?』
「迷宮ってこうらしいよ?どう見ても人工物なのに、勝手に作られるって話だし」
という事は……。
『ここは迷宮で確定って事か……』
「だよね……でも……下の気配も魔力も全然分からないね……どうする?」
『どうするって……ここで乗り込むのは無謀だぞ?』
そんな準備をしていない。
降りていくにしても、もう少し準備をしてからだな。
「私もその方が良いと思うな。というか、流石に私達だけじゃ戦力に偏りがありすぎる気が……」
戦力?
『近接メインのリーゼと……オールラウンダーのカノン、遠距離の俺で上手く分かれてないか?』
「……それ、間違ってると思うよ?カノンは間違いなく近接メインだし、ハクさんは遠距離攻撃をすると私たちまで巻き込まれそうだし」
失礼な……と言いたいが……。
「そういえば……私も接近戦の方が好きかも?」
カノンが段々と脳筋になっていくような……。
っと、カノンはいいとして……俺の評価はどうなんだ?
「ハク?自分はいいって思ってるかもだけど、この前お父さんたちと戦った時私も巻き込まれかけたからね?」
……はい。
確かに俺はブレスみたいな遠距離攻撃を使うときは危険かもしれない……。
これからはもっと手加減を出来るように頑張るしかないか……。




