得意不得意
胴体を打ち抜かれたアシッドスライムは、そのまま溶けて消えていった。
そして、スライムなら普通はスライムコアを残すはずなのだがそれがない。
文字通り跡形もなく消え去ってしまった。
《次元収納Lv1を取得しました。収納Lv8を次元収納Lv1に統合、次元収納Lv2を取得しました》
お?
久しぶりに聞いたユニークスキルについてるナビゲート機能の声だな。
というか、確か次元収納って容量も増えて時間経過もなくなる奴だったよな?
「……もしかしてとんでもないスキル手に入れたんじゃ……」
カノンから呆れたような声が聞こえてくる。
『次元収納だな。アシッドスライムの持ってたスキルだけどな』
「それって珍しいって学長先生が言ってたやつだよね?」
『あぁ、しかも元々の収納スキルと統合されたせいか知らんがいきなりレベル2だぞ?』
多分、統合されるとスキルの経験値の足し算になるのではないだろうか?
っと、そんな事より……。
『それにしても……あのスライムがあっさり溶けたが……』
「それは多分スライムコアを撃ちぬいたからじゃない?見た感じコアのこってないし」
リーゼがそういいながらスライムが溶けた場所に視線を移す。
確かにコアは残ってなかったが……。
『そもそもあんなあっさりコアを潰せるものなのか?』
面攻撃で押しつぶすとかならともかく、あんな一点集中攻撃で……。
「狙うだけなら意外と簡単だよ。ただし、半透明の本体の中から同じ色のコアを見つけることが出来ればだけど……」
話を聞いていると難しそうに感じてしまうな。
しかし……。
『という事はある程度の攻撃範囲があれば胴体を狙うだけでいいのか?』
「そういう事だね。フレイムアローとかじゃ難しいだろうけどファイヤーボールを何発か当てれば如何にかなるんじゃないかな?アシッドスライム自体、強いというよりはなんでも溶かすから倒しにくくてDランクになってるわけだしね」
そういう意味ではマンイーターと同じようなものだろうか?
まぁ、こっちは知らずに攻撃を仕掛ければ命に関わるような能力を持っているわけだし、脅威度という意味では確かにDランク相当になるのだろうな。
『ふむ……という事は一発でコアを撃ちぬいたカノンは……』
「凄いとしか言いようがないんだけど……最近カノンが何しても驚かなくなってきてる自分がいるよ……」
俺とリーゼの会話をとても不機嫌そうな表情で聞いているカノン。
「非常識はハクに言われたくないしリーゼさんもさっきのは可笑しいからね?」
まぁ俺の事はいつもの事として……リーゼのさっきの事って言うと……。
「……あ、抜刀術の事?」
『そういやあれも大概だったよな……魔装のおかげで高速戦闘にも慣れてるカノンでも目で追えないって……Dランクの実力じゃないだろ』
「あはは…その代わり近接戦闘しかできない……って言うか私は魔法は苦手だしね」
苦手って……。
確か三つくらい属性持ってたよな?
しかも光属性は確かレベル2じゃなかったか?
カノンも同じことを思ったのか首を傾げている。
「あ、使えるのは使えるよ?ただ戦闘中に使うのが下手ってだけで」
そういう事か……。
『まぁ俺達みたいに分担するか詠唱短縮スキルでもない限り一人で魔法は使えないだろうしな』
「いざとなれば使えないことはないんだけど基本的に刀ってゴーストみたいな魔法しか効かない相手でも戦えて魔法を使う必要性があんまりないんだよ。疑似的な魔法剣みたいなものだしね。だから私は前衛特化でやってきたの」
なるほど。
確かに必要に迫られなければその方が一一点特化で鍛えることが出来るわけか。
よく考えてみてもリーゼが魔法で戦う所は見たことないし……。
『逆に言えば、魔法を捨てて抜刀術だけを鍛えた結果があの腕前ってことだな』
「そう言われると少し恥ずかしいけどね」
そういいながら苦笑するリーゼの、意外な能力が見れた戦闘だったな。




