スライム上位種
森を抜けた場所に居たのは、一匹のスライムだった。
「……これ?」
『だろうな。普通のスライムと比べても大きさ違いすぎるし……』
目の前のスライムは大きさは高さ1メートル程だ。
それだけで既にスライムの大きさじゃない。
「ハク、鑑定は?」
『……少し待て』
カノンに言われ最近まともに使ってなかった鑑定を使う。
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種族・アシッドスライム
HP・197 MP・401
スキル
特殊系
触手伸縮LV5・粘液LV3・高速再生Lv1・次元収納Lv1・溶解液Lv2・形状変化Lv1・捕食吸収Lv2
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名前だけでやばそうなのは理解できた。
『アシッドスライム……スキルを見た感じだと溶解液でなんでも溶かすスライムって所か?』
「うわー……また面倒なのが……」
俺の鑑定結果を聞いたリーゼが露骨に嫌そうな顔を見せる。
「リーゼさん?」
そんなリーゼに首を傾げるカノン。
「あ、ごめん。アシッドスライムって物理攻撃が効かないんだよね……」
『ん?スキルに物理無効はなかったが……』
見落としはないはずだ。
アイリスみたいに鑑定を誤魔化せるのならともかく……。
「うん。物理無効はないはず。けどあれはもっとひどいよ……。体に剣が当たった瞬間に剣を溶かされて、しかも高速再生で傷は治るって言う反則みたいな生態だから……」
物理無効がかわいく見えてきた……。
いや、あれはあれで凶悪なスキルだけども……。
『確かに厄介そうなのは理解できたけど……普通のスライムでも溶かすくらいはするんじゃないのか?』
「流石に普通のスライムに鉄は処理できないよ。だからスライムは武器さえあれば簡単に処理できるんだから」
なるほど。
つまり俺がここでスライムに苦戦したのは武器がなかったという事も大きいと……。
まぁ、この話はひとまず置いておこう。
『とりあえず……』
呟きつつカノンの背中からスライムの触手を出して巨大なハンマーを形作る。
「ハク?どうするの?」
『適当に攻撃してみる。カノンとリーゼも動けるようにしとけよ』
カノン達にそう言いつつスライムのハンマーをアシッドスライム目がけて振り下ろした。
ドン!!
スライムのハンマーが地面をたたき土煙を上げる。
それと同時に、ハンマーの部分に熱を感じた。
『……ん?』
「ハク?溶けてない?」
違和感を感じたのとほぼ同時、カノンからそんな指摘が入ってきた。
土煙の中をよく見ると、無傷に見えるアシッドスライムと、アシッドスライムに触れていたであろう部分が消失したスライムがあった。
あ、溶かすのは一瞬なのね……。
というかよく見ると無事な部分もどんどん溶けて行ってないか?
「ハク?多分だけどスライム段々溶かされてない?」
『だな……溶けた部分が広がっていく感じか?……ってまずい!?このままだとこっちまで到達するぞ!』
さっさと溶けた触手を切り捨てないとだめだ!
「ふっ!」
俺が急いでサーベルボアの剣を作ろうとした瞬間、リーゼから短く息を吐くような声が聞こえた。
それと同時に軽い痛みが触手に走り、切断された。
「え?」
『マジか……』
リーゼが何をしたのか想像は付く。
居合で俺の触手を斬ってくれたのだろうが……。
いくら慌てていたとはいえ全く見えなかったぞ……。
『カノン、見えたか?』
「……少しだけ…多分刀を仕舞う所だけだと思う…」
カノンでも追えないスピードの抜刀術か……。
「ハクさん、大丈夫だった?」
『あ、あぁ、ありがとう。溶かされさえしなきゃ高速再生で元に戻せるな』
リーゼが切断してくれた触手は段々と元のサイズに再生していく。
しかし……あのスライム全身が溶解液で出来てるんじゃないのか?
溶かす速度が普通のスライムの比じゃないぞ……。
「本当に物理無効より質が悪いね……」
カノンがそう呟くが、俺も全面的に同意だな。
「まぁ魔法には弱いから脅威度Dランク何だけどね」
補足する様にいうリーゼ。
まぁこれで魔法も効かないとか言われるといよいよ対処できなくなるな……。
「じゃあこれならどうかな?」
思いついたように魔銃を構えるカノン。
……確かにこれなら行けそうだが……。
もしかして魔銃ってこういった相手だととんでもない性能をたたき出すんじゃないだろうか?
そんな事を考えている間にもカノンはアシッドスライムに向けて引き金を引く。
そして、魔力の弾丸はアシッドスライムの胴体を貫通した。




