到着
残ったキラービーは。俺のフレイムアローの狙い撃ちとカノンの魔銃による狙撃で全滅した。
そして、邪魔さえいなくなれば台地への上陸など造作もない。
カノンは悠々と台地に降り立ったのだった。
「……ここが…キラービーの台地?」
「目の前だけ見ると下の森と変わらないね」
いまいち実感がわかないのか首を傾げるカノンと、不思議そうに目の前に広がる森を観察しているリーゼ。
『見た目は全く変わらないが、間違って森の外に出た時点で転落は確実だけどな』
そう言いつつ後ろを見てみる。
一見すると森が開けているようにしか見えないが、森が開けているのではなく地面がなくなっている。
飛び出せば100メートル下まで一直線だ。
「確かにね……それにしても……」
「カノン?どうしたの?」
「弱い気配だけかと思ったんだけど……強い気配も二つあるね」
カノンが気配察知を発動しながら呟く。
「キラービーって事は一つはクイーンビーだと思うんだけど……もう一つは何だろ?」
ギルドでも説明されたな。
Dランク相当のキラービーの上位種。
それ以上の説明は聞いていないが、何となく女王蜂みたいなイメージを持っていたりする。
「?クイーンビーって魔物が二匹居るんじゃないの?」
カノンがそう聞くと、リーゼは首を横に振った。
「クイーンビーは巣の主。だからこんな近くに二匹もいないはずだよ。そもそも新しいクイーンビーが生まれた時点で前からいたクイーンビーは巣を出ていくしね」
その辺りはまんま女王蜂だな。
しかし……そうだとすると……。
『この台地に二つの巣があるって可能性はないのか?』
普通に考えればその可能性もありそうだが……。
「その可能性もあるにはあるけど、低いんじゃないかな?」
「どうして?」
即答したリーゼに疑問の声を上げるカノン。
「その前に確認だけど、カノンとハクさんはこの場所にキラービー以外の動物の気配ってする?」
「……大きいのが二つ以外は……ないかな?」
『確かにな。俺の記憶だとキラービーの他にはスライムくらいしか見てないな』
「多分、二つの巣が共存できる餌はないと思うよ。正確には肉が無いんじゃないかな?」
なるほどな。
確かにスライムは肉にはならんからな……。
『そうだとすると、さっきの集団も久々に現れた獲物を求めてたって事か?』
そうだとすればあの集団の数も納得できるし……。
「じゃあ……片方は何なのかな?」
『気配の強さ的にはもう片方と同じくらい。そしてここの魔物の分布的にゴブリンやオークの上位種って可能性はあり得ない……だとすれば……』
「スライム?」
「そういう事になるかな?そもそもスライムの上位種って面倒なのが多いし」
リーゼが苦虫を噛み潰したような顔で言う。
何か嫌な思い出でもあるのだろうか?
まぁ、今は置いておくことにしよう。
下手に地雷を踏みぬくこともないだろう。
しかし……。
『スライムとなると……どんな奴がいるのか全然分からんな……』
確かに色々と居そうではあるのだけども……。
「気配的にはそんなに強そうじゃないけど……どうする?とりあえず片方から行ってみる?」
カノンがそういうが、別に俺たちはそいつらに用事があるわけじゃ……いや、クイーンビーの方には用事があったか……。
正確にはギルドのおすすめの採取物があるだけなのだが……。
「私は別にそれでもいいけど……ハクさんはいいの?」
『俺も別にいいぞ。遅くなっても問題ないし』
そもそも行って目的が果たせる可能性の方が低いしな。
「じゃあ……こっちから行ってみよ」
そう言って歩き出すカノン。
「うん……でも…ハクさんの目的って何なの?」
カノンの後に続いたリーゼが、首を傾げていた。
「あ、それ私も気になってた」
リーゼの言葉にカノンも反応してしまったか……。
『あ~、そうだな……なんて言ったらいいか……』
転生の事など、カノン以外に教えるつもりのない情報も含まれているし、どうやって当たり障りのない話に持っていくか……。




