散策
現在の時間は夕方で、ロイドを始めとするギルド組は村長の家で早めの宴会を開いているはずだ。
カノン達はと言えば、村の近くの森の中を散策していたりする。
結局、カノンにもこの村の周りにある薬草などは全く分からず、それなら現地調査をしようとの案が誰かから出てしまったので三人で森の中に来たのだ。
「……あ、これって薬草だよね?」
森の中の草に紛れている薬草をあっさり見つけたカノン。
『あぁ、間違いないが……これと言って特徴的なものは見当たらないよな……』
今までにカノンが見つけたものはレセアール周辺でも普通に生育している薬草だ。
こんな物ばかりでいいのだろうか?
「私の方もこんなのばっかりだね」
リーゼがそういいながらカノンに薬草を差し出す。
確かにカノンが採取している物と変わりない。
『マリア、そっちはどうだ?』
この分だとマリアの方も同じだろうとは思うが……。
「そうですね……今のところはレセアールと変わりありませんね……。ですが少し環境が違うだけで生えてる薬草が変わることもあるのでくまなく探してみないと……」
まぁそうだよな……。
『普通に考えたら村の横の水場なんかは町にはない環境だしああいった場所にだけ育つ薬草とかもありそうなものだけどな……』
そう簡単な話じゃないのは理解しているが……。
「それより…カノンはこの辺りって来たことあるの?」
リーゼにそう聞かれ、カノンが答えにくそうに苦笑する。
「あはは……実は全く……。村の外も村が見えなくなるところまでは行ったことが無いかな?」
まぁ普通はそうだよな……。
こんないつ襲われるかも分からない場所で子供を一人にする親は……。
……居たな…。
だからカノンと出会ったんだし……。
まぁ、それは一旦置いておくとして……。
『カノンじゃなくてもこんなところまで来る奴なんて村にいるのか?』
「……少しは居る……と思うよ?そんなに離れてないし」
「離れてなくてもこんな魔物の出そうな森の中に入る一般人はいないと思うよ?」
リーゼが呆れたようにカノンに言う。
それは確かにそうだな。
とはいえ……。
『一応気配察知は発動させているが……この周りにいる魔物は精々ゴブリン程度だな』
遠くの方に小さな群らしき反応はあるが、マリアでも十分に対処できる範囲だ。
「そういえば……ファングウルフは?」
『今のところ引っかかってないな。範囲外なのか、そもそもいないかのどちらかだ』
前に居たのだから全くいない可能性は低いとは思うが……。
そもそも気配察知の範囲内だけの情報とはいえ魔物の種類も数も少ない。
下手をするとレセアール周辺よりも安全な場所なのではないだろか?
『……確かにこれならマリア一人で問題なく対処できるレベルだよな……』
「うん。お父さんたちは完全に過剰戦力だよね……」
カノンが大きなため息を吐きながら呟いた。
まぁ、自分たちは楽が出来て尚且つ金も集められる。
二人にとっては悪くなかったんだろうな。
翌日、カノン達は村の入り口でマリアと村長たちに挨拶をしていた。
「では村長さん、また来ますね」
「いつでも帰ってきなさい。カノンちゃんはこの村の娘なんじゃからな」
「はい」
村長の言葉にカノンが嬉しそうにほほ笑む。
そんなカノンをリーゼとマリアが微笑ましそうに見ている。
「カノンさん、村の事は任せてください」
「はい、マリアさん、お願いします……でも」
「分かってます。無理はしませんよ。それに生き残ることは得意ですから」
『確かにな…けど無茶はすんなよ』
「カノン、ハクさんも……説得力が……」
リーゼからそんなセリフが聞こえてきた。
「……私はそんな、無茶は……してる?」
「前にも怒られてましたよね?」
そういえば……。
「な、なにはともあれカノンちゃん、気をつけてな…リーゼさん、カノンちゃんの事、よろしくお願いします」
そう言ってリーゼに頭を下げる村長。
この光景を見ているとこの村はやっぱりカノンが帰ってこられる場所なんだって再認識出来るな。
……そういえば……。
俺の生まれ故郷……どうなってんのかな?




