ギルドの制度
「えっと…村長さん?私の事……言いましたっけ?」
カノンも同じような疑問を抱いたようで首を傾げる。
「あ、ごめん……私が話した……」
村長の横で申し訳なさそうにリーゼが謝る。
話を聞くと、俺が召喚されて戦う瞬間を見られていたらしい。
その為、その時に近くにいたリーゼが村人が怖がらないように説明したという事だ。
というか……。
『リーゼ……お前何時からいたんだ?』
「あはは……実はカノンが屋根伝いにここに来た時くらいかな?で……戦いに乱入するのも悪いかなって思ってみてたんだけど……」
「儂等もカノンちゃんが心配で見に来たというわけじゃよ」
「その後カノンがハクさんを召喚したもんだからちょっとした騒ぎになってね。私が大雑把に説明したんだよね……」
あぁ……見られていないと思ったから脅しのつもりで俺も出て行ったが、村人からすればいきなり得体の知れない竜が出てきたんだから怖いか……。
悪いことをしたかもしれんな。
『そういう事だったか……悪いことしたかな?』
「あれは仕方ないと思うけど……」
カノンはそういうが……。
「あ、それとリーゼさん……すみません……私……」
カノンが思い出したようにリーゼに謝る。
「あ、それも聞いてたけど大丈夫だと思うよ?カノンがずっと村に居たいのなら止めないけど、無理に居続ける必要はないみたいだよ?」
ん?
どういうことだ?
「えっと……でもそうすると魔物とかはどうすれば……」
「あ~、そっか…カノンは……って言うかここの人たちは知らないか……」
カノンの反応を見たリーゼが納得したように呟く。
そして、詳しく説明を始めてくれた。
「まず、ギルドのない村ってたくさんあるけどここみたいに専属の用心棒が居ること自体が稀だって言うのは分かる?」
リーゼに言われ一応と言った感じで頷く。
「そういった村って言うのは、魔物に襲われる可能性もあるけどすぐにはギルドに依頼は出来ない。そのためにギルドが推奨している制度があるんだよ」
『制度?』
「低ランク……大体Eランク程度かDランクになったばかりの冒険者が村に常駐する制度だよ。報酬の額によって常駐してくれる冒険者のランクは変わるけど、その冒険者で対処しきれない場合は別にギルドに依頼を出せる。冒険者にとっても少なくても安定した収入が得られて人気があるんだよ……って、その様子だと村長さんも知らなかったんだ……」
リーゼの話を聞いて必死にメモを取っている村長を見て一旦説明を区切るリーゼ。
村長がそれでいいのだろうか?
「えっと……話を続けるけど、その制度を利用するのにもお金が必要だけど、その金額は村ごとに変わってくる。例えば、危険な魔物の縄張りが近いと金額も上がるし、派遣される冒険者のランクも高くなる。逆に安全な村だと低ランクの冒険者が来る代わりに安くなるって感じかな?それ以外にもいろいろと条件があるみたいではっきりとした金額はギルドの職員さんと話し合う必要があるみたいだけど……」
『なるほどな……』
「カノンちゃん次第じゃが……カノンちゃん。一つ提案があるんじゃが……もし村に残ってくれるならこの制度で残らんか?」
少しだけ思案した後、村長がカノンに聞く。
つまり、カノンが村に残る場合はギルドを通してカノンに報酬を払うという事か……。
それを聞いたカノンとリーゼは顔を見合わせ、苦笑する。
「えっと……多分ですけどカノンが常駐する場合は依頼料も跳ね上がるんじゃないかと……」
「あ、そういえばCランクだもんね……」
カノンが呟くのと同時に村人の間にどよめきが広がる。
こんな村でCランクとなると、殆どエリートのようなイメージらしい。
『そうか……変な前例を作りたくはないわな……そうすると、カノンが村人として住むんじゃないとまずいってことだな』
「うん……そうなるね」
別にギルドを通さなければ問題はないだろうが、それをするとなぁなぁになってしまいそうだし……。
両親の代わりという手もないことはないが、それは村人が賛成しないだろうしな。
「……カノンちゃんや……わしは本音を言えばカノンちゃんにはこの村の子供として戻ってきて欲しいと思うとるが……カノンちゃんの自由にしてくれて構わんよ……どちらにせよギルドには話をすることにしよう」
暫しの思案の末、村長がそんな事を口にした、
村の子供としてか……。
「……ありがとうございます。でも……行ってみたい場所もあるので……ずっとは村に居ませんけど……」
カノンがそう返すが、うれしそうなことは隠せていないな。
泣き笑いしてるし……。
「あ、それとギルドマスターが……」
空気を読まないリーゼに話を中断された……。
いや……。
わざとか?
「多分こうなるって思ってたんだと思うけど、職員さんとその護衛の冒険者、ついでにここに常駐する冒険者の候補の人もこっちに向かってるみたいだよ。とりあえずそれまでは私たちがいないとまずいだろうけど……」
話が速い……というか……。
「私……そんなに分かりやすいかな?」
分かりやすいんだろうな……。




