アレーナ村再び
翌日、カノンはアレーナ村までやってきた。
昨日、ロンの話を聞き終わった時点で、今すぐにでも飛び出していこうとしたカノンを、俺とリーゼで必死に止めたのだ。
因みにロンは、カノンの矛先が自分に向かないように沈黙を貫いていた。
うん。
利口だと思うぞ。
因みにカノンを止めるにあたり、リーゼにトラウマが出来たかも知れなかったが気にしないことにしようか。
そして、無理やりカノンを止めて、時間の事や疲労の事で説得してようやく落ち着いたのち、宿に泊まることが出来たのだ。
そんなわけで、日は跨いだわけなのだが……。
「…………」
遠くから村を見つめるカノンは不機嫌な表情を隠そうともしていない。
『おーい…カノン?』
「なに?」
何か……返事にも棘があるような……。
『あ~、もう少し落ち着いたらどうだ?勢いでここまで来たが……ロンの情報だって証拠を持ってきてないだろ?誤魔化されたら終わりなんだぞ?』
「それは大丈夫。そんな頭してないから」
なんとも辛辣なお言葉で……。
「……ハクは…ハクはどう思う?あの二人、話し合いだけで何とかなるって思う?」
『不可能にしか思えんな……前の感じだけだが……』
「あはは…私も同じ、多分、どうにもならないかな?だから……最悪ここから追い出すよ!」
穏やかじゃないが……。
仕方ないのか?
「何処かな?」
『さぁな?』
カノンは村の上空から村の様子を見ていた。
因みにここまでの空を飛んできた。
魔装で走るよりもその方が早かったからだ。
そんなわけで、さっきまで村から少し離れた場所で休憩をして、そのまま空から様子を見に来ている訳なのだが……。
『というか……カノンから見て村の様子はどうなんだ?平和なのか?』
「平和かどうかって言われると……多分平和かな?でも……見かけだけだと思う」
カノンがそう言って高度を落としていく。
「……あれ見て」
カノンがそう言って村の端の方を指さす。
そこを見ると、村を囲む柵の一部が壊れかかっている。
『あれは……魔物の仕業か?』
「多分そうだと思う。けど……あんな柵、すぐに直そうってするはず。なんでか分からないけどそのまま」
『ついさっき出来たって訳じゃないのか?』
「それもないと思う。魔物の気配は無かったし……」
確かに……俺たちはここの近くで休憩をしていたわけだが、魔物の気配は特になかった。
『……直す金がないってわけじゃないよな?』
「それは関係ないと思うよ。だって材料なんて近くにあるもん」
そういえば、この村の柵は木製。
つまり材料は村の周りに生えている木々だ。
修理するだけなら、数本の木……下手すると一本だけ切り出せば事足りる。
材料費はかからない。
人件費も関係ないだろう。
そうすると、まったく別の事情で修理していないことになる。
『どうする?二人を探すか?』
「ううん。その前に村長さん探してみよ……」
そう言ってカノンは目を閉じる。
そして数秒後……。
「いた…反対だし丁度いいか」
そんな事を呟くと同時に、カノンは着地して歩き出した。
カノンは目を閉じて気配に集中すればこの村程度は把握できるようになったようだ。
いくら村人が少なく気配が混じりにくいと言っても、少し前のカノンでは到底できることではなかった。
相変わらずの成長速度だな……。
『よく分かったな……』
「これくらいはね……10年以上暮らしてた場所だから土地勘もあるし……」
土地勘って……。
そんなものが必要なほど複雑じゃないだろ……。




